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#5

 とにかく、ウルフィーはアルティミトの突きをかわして相手に斬げきを打ち込むことを考えていた。


 しかし、かわせるだろうか? 相手は歴戦の勇士。どんなタイプの敵にも対峙してきたはずだ。と、すれば自分のような軽量スピード型ファイターへの対処にも経験があると考えていい。


 後続の剣士たちのためには、負けても構わぬから自分の技量を確かめてみるのが良いのかもしれない。


 しかし、全員が抜かれてしまったら、万が一にもノエル・ヴァルキリー=ヴァイオラ姫をアルティミトと対峙させてはならぬ、近衛騎士隊長の厳命だ。


 刺し違える覚悟なら、突きが来るとわかっているなら、突きで応じるのが一番確実だ。


 倫理的な迷いもある。


 相手は木刀、運が悪ければ木刀による突きでも命を落とすことはある。だが、こちらは真剣だ。たとえ向こうから申し出た条件とは言え、不公平ではないだろうか。


 しかし、ヴァイオラ姫の安全を最優先に考えるのが近衛の務めである。


(死んでもらうぞ、剣聖)


 ウルフィーは上段の構えを解き、ユーワンと同じく突きの構えに移った。同じ位置からならば、片手で振うサーベルの方が木刀よりリーチが長い。ウルフィーに有利と言える。


 相打ち覚悟のその姿を見て、近衛隊長は感動のあまり、涙を流しそうになった。


「おまえが、そこまで騎士の矜持を持っていたとは、感服したぞ」


 そのときだった。


 ウルフィーの剣が宙を舞った。そして、地面に突き立つ。


「え?」なにが起きたのか、ノエル・ヴァルキリーが瞬きする間のことだった。


 ユーワン・アルティミトの頭はウルフィーの腰より低く下がり、その剣先は無刀となったウルフィーの手元に届いていた。ユーワンの前身の姿勢は弓を下に向けたように弧の字を描いていた。


 遅れてウルフィーの悲鳴が上がる。


「うっつ、ぐ、っつあ!」


 ウルフィーの顔は苦痛にゆがむ。音もなく、ユーワンは元の構えにもどる。


「それまで」


 審判役の騎士が手を上げると、ユーワンはすり足で後方へ下がると、ウルフィーに向かって一礼した。


 一人目が抜かれた。


「ウルフィー!」


 ノエル・ヴァルキリーが駆け寄ろうとするのを隊長が止めた。


 前かがみで腕を抑えていたウルフィーが上半身を起こし、ユーワンと向き合う。


「右手を打たれたか。おそらく骨折していましょう」


 隊長の言うとおり、右手の甲を打たれて指も力なく曲がっている。これが真剣ならば指を切り落とされていただろう。


 ウルフィーもユーワンに深々と一礼して退出した。


「申し訳ありません、姫様。完敗です」


「早く、手当を」


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