#4
「む?」
ユーワン・アルティミトが刀を手に取った。
向き合ったウルフィーが怪訝な顔をした。
「木刀ですかな?」
もちろん、ウルフィーは真剣を手にしていた。それに対するユーワンの手にしたものはどう見ても木製の刀であった。
「どういう意味かな?」
ヴァイオラはロートルに耳打ちして尋ねる。
「さあ、わかりかねます」
ベテランの剣士にも彼の真意を測りかねた。
先ほど彼が正座していた場所には、持参していた刀が鞘に収まったまま置かれていた。
「もしや、わたしを侮っていますか?」
そなたなど、木刀で十分だと愚弄されているのかとウルフィーは疑った。
剣聖は首を横に振る。
「貴殿、俊敏さを頼みにしていると推察しました。鉄剣より木刀が有利かと判断したところです」
無謀に見えても、合理的な判断であるようだ。
「よろしいのですね? 本当に木刀で」
ウルフィーも相手が木の剣だからといって手加減をするつもりはない。
「ほう、立ち合う前に見抜いたか」
ヴァイオラは感心した。確かにウルフィーは俊敏さを身上としている。
「なぜわかったのかな」
ユーワンはウルフィーの体格を見た後、その足取りを見ていた。腕回りはきわめて平均的
な男子のもの。そして若くして七剣士に選ばれた経歴を考えれば、剛腕の騎士ではあるまい
。とすれば、身のこなしで敵を翻弄するタイプだろう。
剣術指南役の壮年の剣士の一人が、両者の間に立った。
「では、わたくしが腕を挙げ、下げましたら仕合い開始といたします」
互いに数歩下がり、ウルフィーは剣を抜いた。剣聖は小さく頭を下げた。
ウルフィーは剣聖の出方がわからず慎重に脇を締め、顔に刃が触れようかという近い位置の上段に剣を構えた。アルティミトは、中段の構え。双方ともに片刃の刀型の武器。
ウルフィーの剣は、地肉の幅が狭く粘り気のある造りだ。フェンシングのようにしなりはしないが、とても軽くどんな姿勢からでも比較的自由に振るうことができる。
アルティミトは腰の前に構えた刀の先が、ウルフィーののど元に向いていた。
「防御の構えだな」
ウルフィーの俊敏さを見抜いて、守りの姿勢に入ることは理解しやすかった。
ウルフィーも対峙したことのない構えだ。ウルフィーは考える。
(向こうから出ては来ないようだ。ならば間合いを詰めて、こちらのタイミングで斬りつける。正面からつっこめば喉を突かれる。それをかわして肩に打ち込むか)
本当にかわせるだろうか、不安もあった。もう一つの方法を考える。




