#3
なかなか威勢のいい若武者だった。七剣士に選ばれたかと言って、なにか身分が上がるわけはない。そういう意味では名誉職にすぎない。
このたびの決闘に召集されたことも本来であれば任務外の任務だ。にも係わらずウルフィーの士気は高い。
「頼もしく思うぞ」
ノエル=ヴァルキリーの正体を明かされて驚くタイミングで七剣士入りしたのは、辛うじて彼のみだった。他の者はヴァイオラの幼少時から彼女の剣術修行を見守ってきた。
七剣士の存在意義とは何か?
七剣などあだ名に過ぎぬという人もいる。ヴァイオラ自身、この領内に自分を超える技を持つ者はいくらでもいるのではないかと思っている。たまたま、王室に近い場所で働く人間が選ばれたにすぎぬ。
いってみれば存在自体が余興。人々の憧れの視線を受けて肩で風を切って歩く。現代日本に比べれば娯楽の少ない素朴な国ではそれだけのことで街が華やぐ。
現代世界だと、アフリカはコンゴにサプールと呼ばれる人たちがいる。スラム街で、高級ブランドのスーツを身にまとい、ファッションモデルのように優雅なスタイルで街を練り歩く。彼らは富裕層でもなんでもない。貧しくとも紳士たらんと収入に見合わない服装で着飾る。ただの見栄っ張りではなく、内面もエレガントであるべしと、見栄を切り合うことによって街に活気を与える存在だ。
住人たちも彼らが闊歩すれば一目見ようと通りに繰り出す。たった一人でもサプールが一人いれば、そこがパレードになるのだという。
時も場所も違うが七剣士は象徴的に騎士の士気を高める存在だった。非常に華がある一方、他の国の騎士団からすれば、「張り子のトラ」と思われていることも確かだ。
「いかに相手が剣聖と言えど、七人抜きをされたならば権威は地に落ちまする」
執事ラウルや近衛隊長ロートルのように深刻に考える者もいる。
「どうだろうか? 騎士団総がかりで百人抜きでもされれば確かに威信は地に落ちる。しかし一騎打ちでは、何人が続こうと剣聖に勝つのは困難だ。彼の体力や集中力が切れるのを待つしかない。だが、剣の道を極めし者は常在戦場と、ふだんの生活から戦場にいるのと変わらぬ心持でいるそうだ。逆に言えば……」
「戦場に在っても、平常心を失うことはなく、どれだけ仕合いが続こうと適宜休息を摂る限り、負け知らずということですな」
腕に覚えがある者ほど、こういった状況への理解がある。一般大衆や他国民などはヴァビロン国を侮るかもしれない。
「だが、それでもかまいはしない。世の中、上には上がいるのだ。教訓になろう」




