第二章 了
彼らは、他の国にいる異世界人と積極的に接触し自陣に引き込もうとした。
「悪いことに異世界人は物事を一つの基準で考える傾向がある。すなわち、敵か味方か」
王家に生まれ、帝王学や外交術を学んだヴァイオラは今日の友が明日は敵になること、また その逆も往々にしてあり得ることをよく知っている。
「長い人生、不愉快な相手と仲良くしなければならないこともあるだろうが、彼らは自分に有利な取り計らいをしてくれる人間かそうでないかで善悪を決めてしまう」
なまじ重用してしまったために、更迭することも王の威信に傷がつきかねなかった。また諫言する重臣が異世界人に粛清されることさえあり、暗に王へのプレッシャーをかけたのだった。
このままでは紛争は拡大し、世界大戦に発展してしまう。最初に抗争を始めた2国の王は密かに話しあった。
「言ってみれば、一人一人が悪竜に相当する存在です」
ドラゴンを飼いならし使役することなどできはしないのだ、と悟った。
「皮肉にも古来より敵対していた2国は、国家を破滅に導く英雄の処分という1点において団結し、関係を修復することとなった」
英雄2名の電撃的な暗殺、これにより流れが変わった。
追随する国が増えて、異世界人はほとんどアガスティアから消えた。
「彼らは、自身の考えが最も正しいと考え疑わない。そこに油断がある。正しいことをしているのだから、正しい結果になる、と。すなわち正しい結果とは、彼らの思い描いた通りに状況が進むことを疑わない。戦えば必ず勝つと思っているし、自分が寝首を掻かれることを想像しない。だから、最後には討ち取られるのだ」
「その過程で多くの犠牲も払いました」
「だから、秘められた力に目覚める前に見つけ次第殺してしまえ、というのもわからぬ話ではない」
話は元にもどる。
「だからと言って、よりにもよって幼子とは」
「最初の異世界人も、幼子であればアガスティアにとって無害な人材として教育出来たかも知れませぬ」
「そうだ、そこだ。我が国で最高の教育を施し、他国に迷惑をかけぬと通達を出すことは可能ではないのか?」
「聞き入れられますまい。将来の軍事的脅威とみなされます。従順な異世界人というものがいれば心強いですからな。わが国に野心ありと諸国は疑心暗鬼になります」
「ああ、なにか妙案はないものか。爺、 国外追放ではすまぬか?」
「おそらくわが国への非難は弱まると思いますが、幼児が国を追放されて生きていけるでしょうか」
そのためにはある程度生活の面倒も見てやらなければならないか、国外に追放した後にそのようなことをしていては人目を引く。
他国からも刺客が送られてくるかもしれない。
ヴァイオラが知力を振り絞り、悩んでいるところに知らせが入った。
「姫、大変でございます!」




