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ツァトラウストラは「あきらめが肝心」と語りき(語呂が悪い)

「はっ!」

目が覚めると真っ白だった。

自分がまだ寝ていて、夢の中にいるのかと思った。起き上がり、周りを見渡す。

夢じゃなかった。ただの白い部屋だった。

「なんだここ?」

真っ白だ。なにもない。ドアも窓もない。というか継ぎ目が見当たらないので、どこまでが床でどこまでが壁かはっきりしない。当然というべきか家具もない。天井を見上げても照明の類は見当たらない。なのに部屋が明るいのは、壁と言わず床と言わず全体がうっすらと発光しているからだった。眺めていると目がとっかかりを失って、頭がくらくらした。

ただ自分の影だけが黒い。

「……なんだここ?」

自分を落ち着かせるために、ぼくはもう一度同じ言葉を繰り返した。記憶をたどる。コンビニの帰り道。美少女。落下死体。

白い部屋と美少女の落下死体。どちらも現実感の無さではドッコイだ。

もう一度整理しようとした時だった。

「目が覚めたかい?」

背後から声が聞こえたのでぼくは振り返った。

エイリアンがいた。

「ひっ!!」

ギチギチとした黒光りする甲虫の様な体。突き出た頭にぬめぬめとした粘膜が体表を覆い、

ぎらついている。昆虫と甲殻類の中間のような節足が6本胴からにょっきりと生えていて、

わきわきと蠢いていた。突き出た頭にはのこぎりのような凶悪な歯が並んでいる。

「……」

「……」

無言。そして無言。

ぼくは緊張で、そしてエイリアンは得物を見定めるかのように。.重苦しい沈黙が30秒ほど続き、ぼくが唾を呑み下した時だった。エイリアンが口を開いた。

「俺様お前丸かじり。」

「喋るのかよ!!そして声カワイイな!!」

涼やかで柔らかい春風のような声だった。エイリアンで無かったらずっと聞いていたいくらいだ。というか聞き覚えがある。死体の美少女と同じ声だった。

エイリアンが口を開く。いちいち足をチキチキ動かすのが心臓に悪い。

「おほめにあずかり光栄だ。後ろを見たまえ。」

振り返る。

グレイがいた。

銀色の全身スーツのようなすべすべの皮膚。頭身のバランスの極端に悪い着ぐるみ体型に細い手足。巨大な頭に負けない大きさのアーモンド形の目は、それが造り物でない証拠にぱしぱしと瞬いていた。

「っつ!!」

思わず逃げ出しそうになって踵を返す。きちきち。エイリアンが足を擦り合わせている。振り返る。グレイが目をパチパチとさせる。

前門のエイリアン。後門のグレイ。

「前門のエイリアン。後門のグレイといったところだね。」

「的確だな!!いやになるほど!!」

「うむ。冗談はここまでにしよう。」

真横から声が聞こえたのでそちらを見た。

全裸の美少女がいた。

ある意味一番驚いた。金色の髪に抜けるように白い肌。すらりと健康的に伸びた手足は部屋の白い光を浴びて神々しさを感じるほどだ。間違いない。死体の美少女だった。

詰まりながらもぼくは尋ねた。

「なんで……」

「『生きているのか」かな?死んでいないからだよ。何度も言ったじゃないか。『死んでない』と。」

死体に生きているといわれて信用するやつはいない。なんだか逆に落ち着いてしまった。

エイリアンとグレイと全裸の美少女に囲まれて奇妙な落ち着き。

「その鋼の精神には敬意を表するよ。」

「だったら何とかしてくれよ!!」

空元気だよ!!ちらちらと視界に入るのだ。エイリアンとグレイが。さっきから微動だにしないのが逆に不気味だった。

「では引っ込めよう。」

少女がそう言った瞬間に、エイリアンとグレイが音もなく消えた。

「なっ」

「ただの立体映像だからね。そんなに驚くことじゃないだろう?」

手に触れられそうな質感のあれが立体映像?息遣いさえ感じるような立体映像など地球ではまだ存在しないはずだ。はっと気が付きぼくは本来真っ先に言うべき疑問を口にする。

「ここどこ?」

「白い部屋だが。」

「そうではなく。」

「我々のピピョロニャポロ内部の白い部屋だが」

「ピピョロニャポロって何さ。」

突然会話に擬音を挟まれても困る。

「メストミリガレ星の言葉で宇宙船だが?」

「そうか宇宙船。って宇宙船?」

周りを見渡す。確かに言われてみればキューブリック映画のセットのような雰囲気だ。

奇妙な無機質さ。

「ということは君は?」

「ああ。大かた予想は付いているだろう。上手く伏線も張らせてもらったし。」

・・・・・・エイリアンとグレイは伏線だったのか。ミステリーならコナンドイルがアッパーカットをかましそうな伏線だった。美少女はにんまりとしながら言った。

「察しのとおり。宇宙人だ。」

 金髪碧目。抜けるような白い肌。白い光を浴びて神々しささえ漂わせるような美少女で宇宙人。そして話が本当ならぼくを地球のヒーローにするために来た女。

「設定盛りすぎじゃね?あと前を隠してください。」

「嬉しくないかね?まあ聞いてくれたまえ。」

彼女は砕けた感じでぼくの肩をたたいたのだった。もちろん全裸で


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