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文章修行家さんに40の短文描写お題

作者: Z子

 

朝尽様の文章修行家さんに40の短文描写お題(http://cistus.blog4.fc2.com/)よりお借りしました。内容は上記引用元サイトの「お題の使い方」を参考に①1題65文字以内の場面描写、②モノローグ抽象性理論の排除、③ストーリー性を入れる、の3点に絞って挑戦したものです。

 

 01. 告白

 幼馴染みの唇が動く。中庭に繁った緑色の屋根から落ちる木漏れ日が白い顔に落ちて。―――そして彼はその赤らんだ頬の意味を知る。


 02. 嘘

 少女は微笑んだ。少年は目を見開く。少年の伸ばした腕は届かずに、屋上からはなたれた少女は重力と共に現実になる。


 03. 卒業

 掌を離す。三つ編みされた黒い髪に小さく白い顔、黒いセーラー服。誂えたような二つ揃いの少女たちは、右手に桜を、右手に菊を。


 04. 旅

 車窓から見える風景を眺める男は頬杖をつく。油まみれの髪、くたびれた格好、髭。やがてカーブと共に男の体は崩れ落ちた。


 05. 学ぶ

 犬はチャイムと共に涎を垂らす。決して与えられない餌の差し入れ口を小さな黒い目が見つめている。


 06. 電車

 変わらない時間、六時五十九分。変わらない風景、河川敷。変わらない顔触れ、サラリーマン。君を見つけたその日から私は。


 07. ペット

 指先にじゃれる可愛いペット。気紛れにくすぐられて上機嫌で、気紛れに無視されて拗ねる。まるで私とあなただった。


 08. 癖

 少年はノートに向かい合う。一回、二回、ペンが回って、ノックを二回。少女はいつも通り、言い訳に本を開いたまま、横目で眺める。


 09. おとな

 爪の色を塗る。地味な色の服を着る。ストッキングを履く。朝早く出かける姉はいつしか少女の姉ではなくなっていた。


 10. 食事

 ナイフとフォークを構えるあなたと、箸でつつくわたしと、スプーンを振り回す君と過ごすひととき。


 11. 本

 子供の広げた世界を横から覗き見る。笑って泣いて怒って笑う。老人は微笑んでペンを執る。


 12. 夢

 怖かったと布団にもぐりこんだあの時の写真を眺めて、立派になったねと呟く病床の祖母。叶うまで、待っていてよと笑う父の目の涙。


 13. 女と女

 わんわんと泣く少女の肩を抱いてもらい泣きする少女の傍らで、男を挟んで微笑みあうキャリアウーマン達。を眺めて、キスする私たち。


 14. 手紙

 しまってあった箱。少女はそれを振ってみる。眺めていた少年は笑って嘯く。君の机の中のものの返信です。少女は箱を取り落した。


 15. 信仰

 その丸焦げの死体の内側で小さな死体は眠っていた。崩れ落ちる父親と泣き叫ぶ少年と赤を纏う家と。炎は空へ黒い煙を送り続けた。


 16. 遊び

 公園で追いかけあう子供達を眺めて、男たちは目を合わせ頷く。上着を脱いで、肩を回して。そして公園に響くのはかつての子どもたちの声。


 17. 初体験

 アドレスは消えた。保存をかけていたメールも消えた。少女は微笑んでボタンを押した。『ごめんな』。メールを消した。


 18. 仕事

 教会の片隅に立つ少年とステンドグラスの前の白い服を着た男女。不思議そうな幼子に唇の前へ指を立てた少年の背中には、翼が揺らめく。


 19. 化粧

 並べられた小瓶を眺める子ども達。年老いた女は小さく笑ってその唇に紅を塗る。いつかの女と女の、変わらない一幕。


 20. 怒り

 笑顔の彼女を見て、青年は考える。視線は右へ左へ。24℃の室内で頬を伝う滴。彼女は笑顔のままで腕を組み、口を開いた。


 21. 神秘

 女は赤子の顔を眺める。低い鼻。太い眉。くせ毛にへの字の唇。似ている部分を上げて女は笑う。女とは似ていないつぶらな目が瞬いた。


 22. 噂

 好きな人はいないのかと友人に覗き込まれた。背が高くて口の悪い女。教室の端でくしゃみをする彼女を見て口を噤んだ。


 23. 彼と彼女

 お似合いだねと友人は言った。くしゃりとした顔を眺めて、頷いた。お似合いだね、そういった私の声は酷く震えていた。


 24. 悲しみ

 うわあんと泣く友人の声が誰もいない教室に響く。彼らは半笑いでその肩を叩いた。大丈夫だよ。泣くなって。女なんて他にもいるから。


 25. 生

 子供は橋の下で箱に詰められていた。汚かった。臭かったし、手足が枝のようだった。姉はそう言って僕の頭を撫でる。だから貰っちゃった。


 26. 死

 彼岸花の咲くあぜ道をゆく。黒ずくめの列の最後尾、親に手を引かれる子どもはふと振り返る。住む人のいなくなった家は夕闇に佇んでいた。


 27. 芝居

 ネオンの光を浴びて道をゆく。客を見定める黒服の男たち。連れ立つ美しい女たち。楽しげな笑い声。今日も一夜限りの恋愛劇を繰り返す。


 28. 体

 手をつなぐ。少年は嘯いた。おんなは柔らかくていい匂いがする。少女は嘯いた。おとこは熱くてそう簡単には壊れない。唇を重ねる。


 29. 感謝

 写真の中の初老の男は厳めしい顔をしていた。夏の日差しが和室に濃い影を落とす。額を畳に付けたまま、青年は暫く動かなかった。


 30. イベント

 女は鏡の中の自分を睨みつける。長い髪を巻いて高いドレスを纏って、人に施された化粧をした顔。白に包まれた自分を睨み、女は笑った。


 31. やわらかさ

 粉だらけの手で奮戦する子どもは怒鳴る。ねえ、まだ? テレビを眺めるふりで母親は答える。耳たぶくらいになるまでです。頑張って。


 32. 痛み

 全身傷だらけの男の腕の中で子どもが泣く。寸前で止まった車から飛び出してきた運転手の泡を食った顔に男は呻いた。マジでいてぇ。


 33. 好き

 少女のメモ。『サッカー、チェス、推理小説、山登り、ウナギ、マックポテト、コーヒーはブラック』。少年の追記。『君』


 34. 今昔いまむかし

 大きな木を眺めて顔を見合わせる。六人は、老けた顔に互いに笑いあう。そして取り出されたのは古ぼけた手書きの地図とスコップ。


 35. 渇き

 傷だらけの少年は、差し出された女の手を眺める。仏頂面の女は少年の手を奪うように取ると早足に歩き始めた。少年は手に力を込めた。


 36. 浪漫

 教師は没収物を眺めた。ゲーム機、音楽プレイヤー、漫画雑誌、携帯電話。そしてグラビア。十年前、取り上げたものを思い出して少し笑った。


 37. 季節

 この国には君の国のように四季はないと男は呟いた。広大な砂の海を眺めて女は笑った。私、夏が好きなの知らなかったの。


 38. 別れ

 手を振って、二人は違う道を進む。橙に染まった家路をたどりながら帰る影に、ぽたぽたと雫が滲む。アスファルトの染みはすぐ消えた。


 39. 欲

 暗い部屋に聞こえる粘着音が混じった水音と、匂い。湿っぽい暑さとベットの軋みと蠢く影。必死に腰を振って唇を求める。


 40. 贈り物

 彼らは言う。ぐっと大きくなった目がうろうろと彷徨い、引き結んだ口元が綻び、くしゃっと皺の寄った顔が、綻ぶ瞬間のため存在していると。


 00. お名前とサイト名をどうぞ。また、よろしければなにか一言。

 小説投稿サイト「小説家になろう」にてHN・Z子で投稿しています。

 制約・目標共に非常に難しい内容でした。力不足を否めない結果となりましたが勉強になりました。

 

 

 挑戦結果、達成状況:①達成、②未達成、③未達成となりました。

 このお題使用にあたって朝尽様に深く感謝申し上げます。

 また、お題引用に何らかの問題がございましたら是非ご指摘お願いいたします。

 

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