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彼女が何をしようとしているかは、誰が見ても一目で理解するだろう。
不思議と流れる、重苦しい、無機質な雰囲気。
張りつめた空気の中、僕は嘲笑するように鼻を鳴らした。
「それとも・・・とめて欲しいのか?」
突き抜ける寒風から逃れるように、両手をポケットにつっこむ。
彼女の目を見ていれば、"その"可能性が無いことは明らかだった。
別に、挑発しようと思ったわけでは無い。
それに対してメリットや意義を見出したわけでも無いし、勿論、他人に干渉する趣味なども毛頭に持ち合わせてはいない。
ただ単に・・・
僕の唯一気に入っている場所に、"不快"なものがいたこと。
それと、"下らない"
そう思っただけだ。
「本当は飛べないとか思ってるわけ・・・?」
足下から視線を外し、ゆっくりと僕の方を振り向く。
真っ向から見た彼女の顔は、端正で、はっきりと"美人"のカテゴリーに入るようなものだった。
流れる黒髪に細い輪郭、すらりと伸びる高い鼻に、ぷっくりとした瑞々しい唇。
そして・・・
真っ直ぐに僕を見抜いてくる、大きな瞳。
深く、そして、そこには何もなかった。
幾度となく遭遇してきた、漆黒の、"絶望"という鈍い光。
そう、何度見ても・・・
僕はそれが、大嫌いだ。
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