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WHITE BREATH  作者: JIN
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FILE1-1

人にどう思われようと、知ったことではない。


残酷?冷徹?薄情?


そんなボキャブラリーの貧困な言いようには既に慣れきっていたし、それを真っ向から否定しようと思ったことも無い。


能力や才知を羨望し、しきりに嫉妬する凡人などには、路傍の石程にも注意を支払うことは無かった。


ましてや、他人に興味を引かれるという事など、微塵にさえ無かった。


僕の存在価値は絶対的なものであり、揺らぐことなどは決して無い。


他人がそれを決めたり、又、それを脅かすことなど、尚更無い。


あるわけが無い。

できるはずが無い。


そう信じて疑わなかった。


他人など・・・下等な有機生命体としてしか見てはいなかった。


だから・・・・・・



「とめないの・・・?」


「ああ」



こんな状況に立たされたところで、動揺一つするはずも無かった。



「・・・君が何をしようと、僕の知ったことではないからな」



肌を刺す風邪が、景色を揺らめかせる。


感情のこもらない自身の声が、風に乗ってその空間に響くのを、僕はまるで第三者としてのように、離れた位置で、驚くほど客観的に聞いていた。



屋上のフェンスを乗り越えた先。


僅かに残る、幅数十センチのアスファルト。


そこには、おぼつかない様子で、それでもしっかりと立ちすくむ、一人の女性がいた。


長い黒髪をはためかせ、視線は足下に落としたまま、僕と短い会話を交わす。


斜め横から見た、その女性の横顔。


その時、風に逆らわずに靡く髪の間から、一点を見つめ続ける瞳が見えた。


喧噪に満ちた地上を見つめる、深くよどんだ瞳の奥。



そこに映るもの。


僕はそれを知っていた。



それは・・・"絶望"と呼ばれている。




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