原典資料Ⅳ
『エルグランヴァ』七大陸地理資料
七つの土地・海域・空域・異界領域・魔力分布・危険地帯・古代遺跡分布
■ 序文
七大陸ではなく、七つの土地と呼ばれる理由
エルグランヴァの世界地図に刻まれる巨大な陸塊は、現代の学術書では便宜上「七大陸」と総称される。しかし、古代魔族文明の記録や、魔大戦以前の地脈図、七王封印に関わる石板群では、それらは単なる大陸としてではなく、七つの土地として記録されている。
この「土地」という表現は、地理的な陸地だけを意味しない。
土地とは、そこに流れる地脈、そこに眠る古代都市、そこに残された王理、そこに根付いた種族、そこに生まれた国家、そこに沈んだ死者、そこを渡る海風、そこに立つ神殿、そこに封じられた禁術までを含む、巨大な歴史的領域である。
魔大戦以前、エルグランヴァの大地は現在ほど明確に分断されていなかった。大陸そのものは存在していたが、地脈、海脈、空脈、転移門、空中都市航路、地下回廊がそれらを結び、七つの土地は互いに重なり合う巨大な文明圏として機能していた。
魔大戦と《七原理分界》によって、その接続は断たれた。
その結果、七つの土地はそれぞれ異なる色を帯びるようになった。
ただし、その色は単純な属性の色ではない。
赤は炎の色ではなく、変革を帯びた地脈が鉄と熱と夕陽に反射する色である。
青は水の色ではなく、保存された記憶が湖面と海霧に浮かぶ色である。
緑は森の色ではなく、生命圧と獣性地脈が大気に混ざって立ち上る色である。
白は光の色ではなく、神殿が地脈を千年かけて秩序化した白亜と聖性の色である。
黒は闇の色ではなく、魔大戦の灰、黒律素、古代炉、王核残滓、肥沃な黒土が重なった色である。
銀は金属の色であると同時に、鉱地脈が夜の大地に反射する色である。
灰は砂漠の色ではなく、虚の残滓によって存在の輪郭が薄れた土地の色である。
七つの土地は、七原理の残滓をそれぞれ強く抱えている。しかし、どの土地も一つの原理だけで説明できるほど単純ではない。赤の土地にも氷原はあり、青の土地にも乾燥した塩湖地帯はあり、緑の土地にも巨大な石造都市と農耕帝国はあり、銀の土地にも海洋商業圏はあり、白の土地にも神殿が隠した魔族遺跡は眠っている。
エルグランヴァの地理とは、色分けされた単純な世界地図ではない。
それは、七原理分界によって傷を負った世界が、千年の時間をかけてそれぞれ別の文明を育てた記録である。
■ Ⅰ 七つの土地の総覧
◼︎第一の土地
《白の土地アルディオン》
白冠の土地/聖陽圏/神殿諸王国圏
白の土地アルディオンは、現在の人類世界における政治的・宗教的中心である。女神ルシフェルを信奉する神殿勢力、複数の人類王国、聖騎士団、神殿学術院、巡礼都市、農業王国、港湾商会都市が存在し、魔大戦後の国際秩序の多くはこの土地から広がった。
アルディオンの「白」は、光属性そのものの白ではない。もともとは石灰岩台地、白亜の山脈、鏡律王系統の白石宮殿、地脈王系統の行政都市に使われていた白い建築石に由来する。魔大戦後、神殿勢力がこの土地の地脈へ聖性魔力を流し込み続けたため、白い石材と聖性地脈の印象が重なり、白の土地と呼ばれるようになった。
人類の多くは、この土地を「女神に祝福された人類の大地」と信じている。しかし地下に残る古代遺跡を調査すれば、白の土地がもともと純粋な人類文明の中心ではなく、魔大戦以前には鏡律王系統、地脈王系統、水葬系統の施設が混在する多種族都市圏であったことが分かる。
白は清浄の色であると同時に、塗り替えの色でもある。
◼︎第二の土地
《黒の土地ネクロヴァルディア》
黒土領域/魔大陸/死した王たちの大地/忘れられた土地
黒の土地ネクロヴァルディアは、魔族文明の墓であり、現在の魔族たちの生存圏であり、王核因子と七王封印に最も近い土地である。魔大戦以前には古代魔族文明の中枢圏の一つであり、軍管区、王核研究施設、地脈炉、魔導工房、空中都市発着塔、生体術式研究所、墓標都市、眷属拠点が存在した。
ネクロヴァルディアの「黒」は、闇属性の黒ではない。魔大戦で焼け落ちた都市の灰、古代炉から流出した黒律素、王核研究施設から漏れた高密度界素粒子、そして長い時間をかけて変質した肥沃な黒土の色である。場所によっては夜間に地脈が黒紫色に脈動し、雨上がりの大地が黒曜石のように光る。
人類側では滅びの土地として恐れられるが、実際には種族の多様性が極めて高い。炎魔族、獣魔族、蟲魔族、アラクネ、吸血種、巨人族、霊体系種族、死霊魔族、鬼人、混血種、魔獣化した原生生物が各地に暮らしている。
ただし、統一国家は存在しない。軍閥、貴族領、種族自治地、夜領、巣界、墓標圏、旧軍管区、封印区域が複雑に分かれている。ここでは地図上の国境よりも、誰がその土地を守る力を持っているかが重要になる。
黒の土地は滅びた場所ではない。
滅びたものが、まだ完全には死んでいない場所である。
◼︎第三の土地
《銀の土地ヴァルグレア》
銀脈地帯/機鋼圏/鉄炉諸国/地底都市群
銀の土地ヴァルグレアは、鉱脈、地下都市、魔導炉、機鋼工房、山岳国家、海洋工業都市が発達した巨大な土地である。地脈王系統の残滓が強いが、単純な土や鉱山の土地ではなく、金属、機械、地下水路、飛空艇、装甲艦、義肢技術、魔導兵装、資源権益が複雑に絡む産業大陸圏である。
ヴァルグレアの「銀」は、単なる鉱物の銀ではない。夜間、中央山脈の地下から立ち上る鉱地脈の魔力が、地表の岩肌や鉱石粒子に反射し、大地全体が銀青色に見える現象に由来する。古代には地脈王系統の制御塔が多数存在し、鉱脈と都市が一体化した巨大な地下文明が築かれていた。
現代では、ドワーフ氏族、地底種族、人類工業国家、鉱山都市同盟、魔導機械商会、亡命魔族技師団、海洋造船都市が互いに競合している。ヴァルグレアでは王権よりも、鉱脈権、炉権、工房組合、地脈使用契約が強い力を持つ。
銀の土地は、地面の下にもう一つの世界を持っている。
地表の都市は入口であり、本当の権力は地下の炉と鉱脈にある。
◼︎第四の土地
《青の土地ミルディア》
青潮連環/千湖の土地/記憶水域/海環諸国
青の土地ミルディアは、巨大内海、湖群、河川都市、湿地、海上国家、塩湖高原、深海神殿、浮島集落が広がる水陸複合圏である。水葬王系統の残滓が濃く、保存、治癒、記憶、水路交通、冷却術式、海洋交易、死者の記録に関わる文化が発達している。
ミルディアの「青」は、海の青ではなく、記憶を含んだ魔力水が夜明けや月光に反応して発する青い光に由来する。湖面に過去の都市や死者の影が映る地域もあり、人々はそれを「水が忘れなかったもの」と呼ぶ。
しかし、ミルディアは湿潤な水の楽園ではない。西部には乾燥した白塩高原があり、北部には雪を抱く山岳修道圏があり、南部には多島海と海賊海域があり、東部には湿地と水妖自治領がある。水に恵まれた土地であるほど、過去の契約や記憶に縛られやすく、乾いた土地であるほど水脈の所有権を巡って激しい政治争いが起きる。
青の土地では、忘れないことは美徳である。
しかし、忘れられないことは呪いでもある。
◼︎第五の土地
《緑の土地ガルディアス》
緑牙圏/大密林と草原の土地/獣冠地帯
緑の土地ガルディアスは、大密林、草原、湿地、石造都市、闘技国家、獣人連合、農耕帝国、魔獣保護区、翼獣断崖が広がる生命圧の土地である。獣冠王系統の残滓が濃く、生命の成長、適応、闘争、群れ、狩猟、進化圧が各地の文化に影響を与えている。
ガルディアスの「緑」は、森林の色だけではない。地脈に混じる獣性魔力と生命成長圧が、湿った空気や草原の朝霧に溶け、緑色の魔力霧として立ち上ることに由来する。古代には魔獣管理施設、戦士訓練場、進化圧研究区域が置かれ、一部は現在も生態系と融合したまま残っている。
この土地は野蛮な未開地ではない。巨大な石造闘技都市、灌漑農業帝国、獣人王国、海岸交易都市が存在し、部族法と都市法が複雑に重なっている。強さは単なる暴力ではなく、生き残る力、群れを守る力、獲物を追う力、土地を読む力、子を育てる力まで含む。
緑の土地は、命が最も豊かで、最も容赦なく試される場所である。
◼︎第六の土地
《赤の土地イグニスヴェイン》
赤脈地帯/焔鉱諸国/灼原と氷稜の土地
赤の土地イグニスヴェインは、焔冠王系統の残滓が強い土地である。しかし、それは全土が炎に覆われているという意味ではない。南部には火山砂漠と硫黄海があり、中央には赤土平原と炉都群があり、北部には赤い鉱脈の下に氷河が広がる赤氷地帯があり、東部には冷涼な漁業国家があり、西部には高原遊牧民が暮らしている。
イグニスヴェインの「赤」は、火の赤ではなく、赤色地脈鉱、酸化鉄を含む大地、熱性魔力を含んだ夕霧、古代焔炉の残滓が大地に反射する色である。焔冠王系統の影響により、この土地では古い都市や制度が長く停滞しにくい。軍制改革、鍛冶技術、都市更新、革命、宗教分裂、王朝交代が頻繁に起きる。
この土地では、古いものを残すことよりも、古いものを焼き替えて次へ進めることが尊ばれる。
ただし、その変化は常に善ではない。
赤の土地は、停滞を嫌うあまり、時に必要な記憶まで燃やしてしまう。
◼︎第七の土地
《灰の土地ザラディア》
灰砂境域/失名砂海/断絶の土地/星見高原
灰の土地ザラディアは、虚王系統の残滓が強い土地である。広大な砂漠、灰色の岩石高原、乾燥森林、塩湖、オアシス都市、地下水脈国家、星見台地、封印塔群、岩窟修道院、砂上交易路が広がる。
ザラディアの「灰」は、砂の色ではない。虚の残滓によって界素粒子の反射が薄まり、空と大地の境界が無彩色にぼやける現象に由来する。古代都市が存在欠落を起こした跡地では、石材が灰色に変質し、記録上の年代や所有者が消えることがある。
この土地では、名前が重要である。旅人は名札を複数持ち、商人は契約を石、紙、声の三媒体に記録し、家族は朝と夜に互いの名を呼び合う。なぜなら、虚の強い地域では、道だけでなく目的や名前や同行者の存在さえ忘れることがあるからである。
灰の土地は、何もない土地ではない。
過剰なものを断ち切った後に残る、余白の土地である。
■ Ⅱ 各土地の詳細構造
◼︎1. 白の土地アルディオン
【地理的特徴】
アルディオンは広大な中央平原を中心に、北の白嶺山脈、西の白石高原、東の大河川地帯、南の温暖沿岸圏を持つ。七つの土地の中でも比較的気候が安定し、食糧生産、騎士領経営、都市行政に向いている。
中央平原には人類王国の王都が多く、聖塔を中心に放射状の街道が伸びる。街道は単なる交通路ではなく、神殿による聖性魔力の導線でもあり、巡礼者が歩くことで地脈に祈りを流す構造になっている。
西部白石高原は乾燥気味で、地上には修道院や聖騎士要塞が並ぶが、地下には古代魔族文明の鏡律宮殿、地脈行政施設、旧転移門の基部が眠っている。ここは神殿が最も厳しく封鎖している地域の一つである。
【気候帯】
中央平原は温帯で、穀物、馬、葡萄、薬草が育つ。東部河川地帯は湿潤で、穀倉地帯として機能する。南部沿岸は温暖で、港湾商業、学術都市、芸術都市が栄える。北部は寒冷で、針葉樹林、雪山、聖騎士団の訓練要塞がある。西部は乾いた高原で、昼夜の寒暖差が大きい。
【海域名称】
南方には《白帆海》が広がる。巡礼船、商船、聖騎士団輸送艦が頻繁に航行する、比較的安全な海域である。
西方には《封白海峡》があり、ネクロヴァルディア方面への航路とされるが、神殿の監視が厳しい。
北方には《聖氷海》があり、古代に沈んだ白石都市が氷下に眠るという伝承がある。
【空域名称】
アルディオン上空の主要航路は《白環空路》と呼ばれる。神殿の聖塔が空脈を安定化しており、他大陸に比べて飛空艇の航行が安全である。
西部高原上空には《鏡霧空域》があり、航法具と記憶が狂うため進入禁止とされる。
【異界領域】
代表的な異界領域は《白鏡地下宮》である。西部高原地下に存在し、入った者は自分が信じる歴史、または神殿が教える歴史を幻として見る。神殿は女神の試練と呼ぶが、実際には鏡律王系統の認識保存施設である可能性が高い。
【魔力濃度分布】
中央と東部は中濃度で安定している。聖性魔力と光属性が強く、魔族にとっては呼吸しづらい。西部地下は高濃度の古代魔力が封印されており、結界が弱まると認識異常が起きる。北部は氷と光の魔力が混じり、硬質な結界術に向く。
【危険地帯・未踏領域】
《西白封鎖領》は神殿が管理する最大級の禁区である。
《聖氷下層都市》は北方氷海の下に眠る古代都市である。
《白石裂谷》では地脈と聖性結界が衝突し、魔法が不安定化する。
《旧人類自治領記録庫》は、魔大戦以前に人類が古代魔族文明内部でどのような地位にあったかを示す禁忌資料が眠るとされる。
【古代遺跡分布】
アルディオンの遺跡は、地上より地下に多い。神殿は古代魔族由来の施設を「邪悪な地下構造」として封印しているが、一部の聖塔は旧地脈制御塔の上に建てられている。つまりアルディオンの聖なる秩序は、古代魔族文明の基盤を再利用して成立している。
◼︎2. 黒の土地ネクロヴァルディア
【地理的特徴】
ネクロヴァルディアは、七つの土地の中で最も古代魔族文明の痕跡が濃い。北部には黒冠山脈、中央には黒土平原と崩壊都市群、東部には蟲魔族の巣界と魔獣森林、西部には墓標平原と霊界接触地帯、南西部には古代都市跡イル=ヴァランテを含む遺跡密集地帯、南部には黒市港湾圏が存在する。
大陸全体が一つの巨大な遺跡の上に成立しており、現代の集落の地下に古代下水路、軍事倉庫、転移門基部、生体研究施設が眠っていることも珍しくない。
【気候帯】
北部は寒冷山岳だが、地下に古代炉の残熱があるため局地的な温泉地帯や蒸気谷がある。中央黒土平原は比較的温暖で農業に向くが、魔力変異が多い。東部は湿潤な森林で、蟲性魔力と毒性魔力が強い。西部は乾いた墓標平原と霊霧地帯で、昼夜の温度差が大きい。南部は温暖な沿岸だが、海霧に黒律素が混じることがある。
【海域名称】
北西には《黒骨海》が広がる。魔大戦で沈んだ艦隊、魔導砲台、海上要塞の残骸が多い。
西方には《墓潮海》があり、死者の声を聞いたという船乗りの証言が多い。
南方には《亡王湾》があり、密貿易、傭兵、奴隷商、亡命者が集まる港が点在する。
東方には《蟲霧海》があり、温暖な海霧に鱗粉や毒性胞子が混ざる。
【空域名称】
大陸上空は《黒嵐空域》と呼ばれる。魔大戦で墜落した空中都市の浮遊核や破損した空脈装置が、空中に不安定な魔力嵐を作っている。
中央上空には《墜都空路》があり、古代空中都市の残骸が漂う危険航路である。
【異界領域】
代表的な異界領域は《王骸層》である。大陸地下深部に広がるとされ、王核研究施設、封印失敗区、霊界残響、虚系遮断跡が重なっている。王核因子保持者が近づくと、閉鎖されていた扉や兵装が認証反応を示すことがある。
他にも《黒糸迷宮》《眠らない墓標丘》《炎核崩落炉》《死者の牧場》が存在する。
【魔力濃度分布】
ネクロヴァルディアは全体的に高濃度である。中央平原は熱性、闇性、獣性魔力が混じる。東部森林は蟲性、毒性、生命成長魔力が濃い。西部墓標圏は霊性魔力が強く、夜間に死者の残響が現界へ漏れ出る。南西古代都市群は王地脈が多く、王核因子との反応が強い。
【危険地帯・未踏領域】
《王骸層》はほぼ未踏である。
《千巣黒林》は蟲魔族ですら全容を把握していない。
《名を返さない墓標原》では、死者の名を聞いた者が自分の名を忘れることがある。
《黒炉山脈深層》には、停止したはずの古代魔導炉が今も微弱に脈動している。
《第六軍管区旧闘争炉》はイシュレド系統の思想と深く関わる危険施設である。
【古代遺跡分布】
ネクロヴァルディアの遺跡密度は七つの土地で最大である。特に南西部、中央軍管区跡、北部炉山脈、西部墓標圏に集中する。遺跡の多くは破壊されているが、完全停止しているわけではない。魔族の血、王核因子、眷属級魔力、特定家門の血統術式に反応して再起動する施設が多い。
◼︎3. 銀の土地ヴァルグレア
【地理的特徴】
ヴァルグレアは巨大な銀脊山脈によって東西南北の文化圏が分かれる。中央山脈は地上から見ると山だが、内部には地下都市、鉱山、炉心列車、地脈制御塔、地底湖、古代工房が重なっている。
東部は湿潤な森林工房圏で、木材、薬草、魔導工芸、精密部品の生産が盛んである。西部は鉄砂荒野で、雷鉱と爆破技術が発達する。南部は火山炉圏で、重工業、兵装生産、魔導義肢工場が多い。北部は氷結鉱床帯で、冷却炉、保存装置、氷晶兵装の研究が行われる。沿岸部には海洋工業都市があり、装甲艦や飛空艇の造船所が並ぶ。
【気候帯】
中央山脈は標高差が大きく、氷雪、鉱山森林、地下温暖区が混在する。東部は温帯湿潤、西部は乾燥荒野、南部は火山性高温地帯、北部は寒冷鉱床地帯である。沿岸は比較的温暖で、海霧に金属粒子が混じる地域もある。
【海域名称】
東方には《銀鱗海》がある。海底鉱床が豊富で、海洋採掘都市が発達している。
南方には《黒炉湾》があり、火山島と造船所が並ぶ。
西方には《鉄砂海》が広がり、金属粉を含む海流が船体を削るため、特殊な船底加工が必要である。
【空域名称】
ヴァルグレア上空は《雷鉱空域》と呼ばれる。鉱地脈から立ち上る磁力魔力によって雷雲が発生しやすい。
中央山脈上空の航路は《銀脊高空路》である。飛空艇が通るが、磁力乱流と山岳気流が激しく、航法士の技量が問われる。
【異界領域】
《逆鉱坑》は、重力方向が乱れる異界坑道である。上へ掘るほど地下深くへ進み、下へ降りるほど地表へ近づくことがある。
《炉心迷宮》では、古代地脈炉が侵入者を燃料、管理者、故障要因として識別しようとする。
《銀骨地下湖》では、鉱物化した古代生物の骨が湖底に沈み、夜間に銀色の光を放つ。
【魔力濃度分布】
中央山脈地下は地属性、硬性魔力、鉱物魔力が高い。西部は雷属性と金属魔力が強い。南部は熱性と硬性魔力が混じる。北部は氷、土、硬性魔力が安定している。沿岸部では水属性と金属魔力が交差し、特殊な海洋工業術式が発達する。
【危険地帯・未踏領域】
《銀脊深層坑》は地下国家ですら全容を知らない。
《黒炉旧都》は古代工業都市の廃墟で、今も自律機械が動く。
《雷鉱爆裂野》では、地面に含まれる雷鉱が嵐のたびに爆発する。
《地脈王制御塔跡》は各国が狙う最重要遺跡である。
【古代遺跡分布】
遺跡は地下に多い。鉱山を掘っている途中で古代都市の天井を破ることがある。ヴァルグレアの遺跡は財宝よりも機能が危険である。再起動すれば都市を動かせるが、誤れば山脈ごと崩れる。
◼︎4. 青の土地ミルディア
【地理的特徴】
ミルディアは中央に巨大内海《青心海》を抱き、その周囲に湖国、水上都市、河川国家、湿地自治領、塩湖高原、山岳修道圏、多島海が連なる。大陸というより、水と陸が複雑に絡み合った海環世界である。
中央内海周辺は豊かで、漁業、稲作、薬草栽培、治癒術、船運が発達する。東部は湿地と河川デルタが広がり、水妖種や半水棲種族の自治領が多い。西部は乾燥した白塩高原で、地下水脈を巡る政治対立が激しい。北部は山岳修道圏で、氷河湖と保存術式が発達する。南部は多島海で、商会都市、海賊、深海神殿が混在する。
【気候帯】
中央は温暖湿潤、東部は高湿度の湿地、南部は亜熱帯性の多島海、北部は寒冷山岳、西部は乾燥塩湖地帯である。ミルディアでは、水が多い地域ほど政治的に閉鎖的で、水が少ない地域ほど交易と交渉が発達する傾向がある。
【海域名称】
中央には《青心海》がある。水葬王系統の記憶性魔力が最も濃い内海である。
南方には《千島潮》が広がり、海上都市、海賊、商会、半水棲種族が混在する。
東方には《眠鯨海》があり、古代の巨大海棲生物と深海神殿が眠る。
西部の塩湖群は《白涙湖群》と呼ばれる。
【空域名称】
ミルディア上空は《青霧空域》である。水蒸気と記憶性魔力が混じり、飛空艇の視界や航法魔法を乱す。
中央内海上空には《鏡雨航路》があり、雨の中に過去の景色が映ることがある。
南部多島海には《潮翼空路》があり、海鳥型魔獣と飛空艇が交錯する。
【異界領域】
《記憶湖底層》は、湖底に沈んだ都市や死者の記憶が保存された異界領域である。侵入者は水中で呼吸できることがあるが、自分の記憶と湖の記憶の境界が曖昧になる。
《眠りの水殿》には、千年前に保存された者たちが眠るという伝承がある。
《青心海中央渦》は、海面上は穏やかでも、下層で時間感覚が歪む。
【魔力濃度分布】
中央内海周辺は水属性、流性魔力、記憶性魔力が高い。北部山岳湖は水と氷が強い。西部塩高原は魔力濃度は低いが、保存結晶が採れる。南部深海は水、冥、闇の魔力が混じり危険である。
【危険地帯・未踏領域】
《記憶湖底層》《眠りの水殿》《深海神殿群》《白涙塩湖》《青心海中央渦》が代表的である。
記憶汚染が最大の危険であり、肉体は戻っても人格が古い記憶に侵食されることがある。
【古代遺跡分布】
湖底、海底、河川地下、山岳保存施設に遺跡が多い。ミルディアの遺跡は壊れているから危険なのではなく、保存されすぎているから危険である。千年前の命令が今も正しく実行されていることが、現在の人間には災害になる。
◼︎5. 緑の土地ガルディアス
【地理的特徴】
ガルディアスは生命圧の土地である。北部草原、中央大密林、西部石造都市圏、東部翼獣断崖、南部湿地農業圏、沿岸交易都市によって構成される。
獣冠王系統の残滓が濃いため、生物の適応速度が速い地域がある。中央密林では植物が捕食器官を持ち、魔獣が短期間で環境に適応し、獣人族の中には土地の魔力に反応して身体能力が変化する氏族もいる。
しかし、ガルディアスは未開の森ではない。西部には巨大な石造闘技都市があり、南部には灌漑農業帝国があり、北部には騎獣遊牧連合があり、沿岸には商業都市が並ぶ。自然と都市が対立しているのではなく、都市もまた生命圧の中で生き残るための巣として発達している。
【気候帯】
北部は温帯草原と亜寒帯草原。中央は高温多湿の大密林。西部は乾燥サバンナと石灰岩高原。東部は断崖と山岳気候。南部は湿地と河口農業地帯である。
【海域名称】
西方には《緑牙海》がある。獣人交易港と魔獣素材市場が多い。
南方には《湿竜湾》があり、湿地と海が混ざる魔獣繁殖地である。
東方には《翼落海峡》があり、断崖から落ちた翼獣の骨が海底に積もる。
【空域名称】
ガルディアス上空は《獣風空域》と呼ばれる。鳥型魔獣、翼竜、ハーピー系種族が多い。
中央密林上空は《緑霧天蓋》で、濃い樹冠と魔力霧により空路が不安定である。
東部断崖上空は《裂翼高空域》で、強烈な上昇気流と翼獣の縄張りがある。
【異界領域】
《進化圧密林》は、古代獣冠王系統の実験場が自然と融合した領域である。生物が短期間で変異し、侵入者の身体にも適応圧がかかる。
《牙鳴きの谷》では、谷全体が獣性魔力を反響させ、恐怖心や闘争本能を増幅する。
《千獣骨原》では、古代魔獣の骨が地脈と結びつき、夜になると骨だけの獣影が歩く。
【魔力濃度分布】
中央密林は獣性、生命成長、毒性、蟲性魔力が高い。北部草原は獣性魔力が広く薄く分布する。西部闘技都市は人為的に獣性魔力を集めた施設が多い。南部湿地は水、土、生命魔力が混在する。
【危険地帯・未踏領域】
《進化圧密林》《牙鳴きの谷》《翼獣断崖》《湿竜湾》《千獣骨原》が危険地帯である。
中央密林奥地はほぼ未踏で、そこでは古代施設と生態系の境目が消えている。
【古代遺跡分布】
密林地下、闘技都市の基盤、獣道山脈の洞窟、魔獣繁殖地の中心に遺跡がある。ガルディアスの遺跡は石造建築として残るだけでなく、植物や魔獣の身体構造の中に取り込まれている場合がある。
◼︎6. 赤の土地イグニスヴェイン
【地理的特徴】
イグニスヴェインは、変革を帯びた地脈が強い土地である。南部火山帯、中央赤土平原、北部赤氷稜、東部冷涼沿岸、西部高原草地によって構成される。
焔冠王系統の残滓が強く、熱性地脈、鍛冶、都市更新、軍事改革、革命思想が発達しやすい。ただし、全土が炎に覆われているわけではない。北部には氷河があり、東部には冷たい海風が吹く漁業国家があり、西部には高原遊牧民が暮らす。
この土地の特徴は、環境そのものが変化を要求することである。火山噴火、地熱変動、鉱脈移動、氷河融解と再凍結、赤砂嵐によって、都市は長期間同じ形を保ちにくい。そのため建築文化も、永続性より更新性を重視する。
【気候帯】
南部は高温乾燥の火山砂漠。中央は温暖な赤土平原。北部は寒冷な赤氷地帯。東部は冷涼沿岸。西部は高原草地である。
【海域名称】
東方には《赤帆海》がある。赤鉱、武器、炉材を積んだ船が多い。
南方には《灼硫海》が広がり、火山島と硫黄海霧が多い。
北東には《氷煙海峡》があり、赤氷稜から流れる冷気と地熱蒸気が混ざる。
【空域名称】
大陸上空は《赤脈上昇圏》である。地熱による上昇気流が強く、飛空艇は高度を取りやすいが、乱流も多い。
南部火山帯上空は《火灰空域》で、火山灰と熱性魔力が航行を妨げる。
北部は《蒸氷空路》で、氷霧と蒸気が混じる特殊航路である。
【異界領域】
《焔替えの炉都跡》は、都市全体を更新する古代焔炉が暴走した領域である。建物、街路、住民の記憶が周期的に書き換わる。
《赤氷心臓》は、氷河下に眠る古代変革炉であり、近づく者の魔力器官を強制的に変質させることがある。
【魔力濃度分布】
南部は熱性魔力が高い。中央炉都圏は熱性、硬性、雷性が混じる。北部は熱性と氷属性が共存する特殊地帯である。西部高原は比較的低濃度だが、赤鉱脈沿いでは局地的に高まる。
【危険地帯・未踏領域】
《焔替えの炉都跡》《赤氷心臓》《灼硫列島》《灰喰い砂漠》《旧変革炉群》が代表的である。
赤の土地では、遺跡そのものが形を変えるため、地図が短期間で役に立たなくなることがある。
【古代遺跡分布】
南部火山帯、中央炉都地下、北部氷河下に多い。イグニスヴェインの遺跡は破壊されたのではなく、自己更新を繰り返した結果、時代判定が難しい。古いものが新しく見え、新しいものが燃え尽きた遺物のように見える。
◼︎7. 灰の土地ザラディア
【地理的特徴】
ザラディアは、虚王系統の残滓が濃い土地である。中央の灰砂漠、北部星見高原、東部オアシス都市群、西部風食峡谷、南部沿岸交易圏、地下水脈都市、封印塔群によって構成される。
外部者は砂漠の土地と見なしがちだが、実際には高度な交易、星術、封印学、記録文化、地下水脈農業が存在する。ザラディアの都市は、外から見れば小さなオアシスに過ぎないが、地下に水路、倉庫、神殿、住居、記録庫を広げていることが多い。
【気候帯】
中央は高温乾燥の灰砂漠。北部は乾燥高原。東部はオアシス農業圏。西部は塩湖と風食峡谷。南部は温暖沿岸である。
【海域名称】
南方には《灰帆海》がある。香辛料、封印石、星鉄、乾燥薬草が運ばれる。
西方には《失名海峡》があり、航海記録が欠落することで恐れられる。
東方には《星落湾》があり、夜に星の反射が海面へ異常に強く映る。
【空域名称】
ザラディア上空は《灰環空域》である。砂塵と虚性魔力によって飛空艇の航法術式が乱れやすい。
北部星見台地上空は《星詠空路》で、星術師の案内なしでは迷いやすい。
西部封印地上空は《無名空域》で、空図から消えることがある。
【異界領域】
《失名砂海》では、入った者が最初に地名を忘れ、次に目的を忘れ、最後に自分の名を忘れる。
《灰の封印塔群》では、塔と塔の間に存在しない距離が挟まり、数歩で数日分進む者もいれば、百日歩いて入口に戻る者もいる。
《無名峡谷》では、叫んだ声から名前だけが抜け落ちる。
【魔力濃度分布】
中央砂漠は表面的な魔力濃度は低いが、虚性魔力が薄く広がるため術式が不安定になる。東部オアシスは水、土、虚が混じる。西部峡谷は虚性魔力が極めて強い。北部星見台地は星界層との接触が強い。
【危険地帯・未踏領域】
《失名砂海》《灰の封印塔群》《無名峡谷》《星落ちの穴》《白骨交易路》が危険地帯である。
ザラディアの未踏領域は、物理的に到達できないのではなく、到達しても記録できないため未踏のまま残る。
【古代遺跡分布】
砂漠地下、封印塔周辺、星見台地、塩湖跡に多い。ザラディアの遺跡は、発見より記録が難しい。遺跡を見つけた者が帰還しても、地図上の位置、入口の形、同行者の人数、そこで得たものを思い出せないことがある。
■ Ⅲ 七つの土地を結ぶ海域
エルグランヴァの海は、単なる大陸間の水域ではない。魔大戦後に乱れた海脈が流れ、七原理分界の境界として機能している。
最大外洋は《七裂洋》と呼ばれる。これは七つの土地を隔てる広大な海であり、海脈、魔潮、嵐、深海遺跡、魔獣、霊界接触海域が複雑に交差する。
主要海域は以下である。
白の土地南方の《白帆海》は、巡礼と交易の海である。
黒の土地周辺の《黒骨海》《墓潮海》《亡王湾》は、沈没艦隊、死者の残響、密貿易の海である。
銀の土地周辺の《銀鱗海》《黒炉湾》《鉄砂海》は、海底鉱床と工業海運の海である。
青の土地の《青心海》《千島潮》《眠鯨海》は、記憶と海上都市の海である。
緑の土地の《緑牙海》《湿竜湾》《翼落海峡》は、魔獣と交易の海である。
赤の土地の《赤帆海》《灼硫海》《氷煙海峡》は、鉱物、火山、氷霧の海である。
灰の土地の《灰帆海》《失名海峡》《星落湾》は、交易、記録欠落、星術の海である。
海路は世界を結ぶが、同時に七原理の境界を越える行為でもある。そのため、大陸間航海には航海術だけでなく、魔力濃度差、海脈変動、神殿検問、海賊、古代海底遺跡への対策が必要となる。
■ Ⅳ 七つの土地を覆う空域
空域は、地上の国境とは別の政治と危険を持つ。
低空の《常空圏》は飛行魔獣、竜騎兵、飛空艇、小型空船が利用する。
高高度の《高魔空圏》には魔力嵐、浮遊島、古代空中都市残骸、星界乱流が存在する。
さらに上位の《星環圏》は、神聖術、星術、古代観測施設、女神勢力と関係する。
各土地の主要空域は以下である。
白の土地は《白環空路》。
黒の土地は《黒嵐空域》。
銀の土地は《雷鉱空域》。
青の土地は《青霧空域》。
緑の土地は《獣風空域》。
赤の土地は《赤脈上昇圏》。
灰の土地は《灰環空域》。
空は自由に見えるが、実際には海以上に危険である。空中都市残骸は突然航路に現れ、魔力嵐は術式を焼き、飛行魔獣は縄張りを守り、星界乱流は飛空艇の時刻計を狂わせる。
■ Ⅴ 異界領域の総合整理
異界領域とは、現界にありながら、魔脈層、霊界層、星界層、界律層のいずれかと異常接続している領域である。
白の土地には《白鏡地下宮》がある。
黒の土地には《王骸層》がある。
銀の土地には《逆鉱坑》がある。
青の土地には《記憶湖底層》がある。
緑の土地には《進化圧密林》がある。
赤の土地には《焔替えの炉都跡》がある。
灰の土地には《失名砂海》がある。
これらは単なる冒険地ではなく、七原理分界の傷口である。王核因子保持者が足を踏み入れれば、遺跡や封印が反応し、本人の因子が刺激される可能性がある。
■ Ⅵ 魔力濃度分布の総合構造
エルグランヴァの魔力濃度は、土地ごとに異なる。
黒の土地ネクロヴァルディアは全体的に高濃度で、王地脈が多く、魔族には適するが人類には危険である。
白の土地アルディオンは中濃度で安定しており、聖性魔力によって秩序化されている。
銀の土地ヴァルグレアは地下と鉱脈に魔力が集中し、地表より地下が危険である。
青の土地ミルディアは水域に魔力が蓄積し、湖底や深海ほど濃度が高い。
緑の土地ガルディアスは生態系に魔力が組み込まれており、魔力濃度が生物の活動と共に変動する。
赤の土地イグニスヴェインは火山、炉都、赤氷地帯に高濃度域が偏在する。
灰の土地ザラディアは表面的には低濃度だが、虚性魔力が広く薄く流れているため、術式が不安定になりやすい。
魔力濃度が高い土地ほど豊かになるわけではない。高すぎる魔力は変異、暴走、魔獣化、記憶汚染、存在欠落を生む。安定した魔力は都市運営に向くが、軍事的爆発力には欠ける。低濃度の土地でも、記録、交易、工業、星術によって高度な文明を築くことはできる。
■ Ⅶ 古代遺跡分布の総合構造
七つの土地すべてに古代遺跡は存在するが、その性質は異なる。
白の土地では、遺跡は神殿の地下に隠され、聖性結界で覆われる。
黒の土地では、遺跡は露出しているが、壊れたまま生きている。
銀の土地では、遺跡は地下鉱山や炉心に組み込まれており、機能そのものが危険である。
青の土地では、遺跡は湖底や海底に保存され、古い命令を今も実行する。
緑の土地では、遺跡は生態系に呑まれ、建築と生命の境目が消えている。
赤の土地では、遺跡は自己更新を繰り返し、年代や構造が変化する。
灰の土地では、遺跡は存在しても記録できず、見つけても地図に残らない。
このため、古代遺跡探索は大陸ごとにまったく異なる技能を要求する。白では政治的許可が必要になり、黒では魔族血統や戦闘力が問われ、銀では工学知識が必要であり、青では記憶汚染への耐性が必要であり、緑では生存能力が必要であり、赤では変化への適応力が必要であり、灰では自分の名を保つ術が必要になる。
■ 総括
七つの土地は、世界が出した七つの答えである
七つの土地は、七原理を単純に分けたものではない。
白の土地アルディオンは、秩序と歴史の塗り替えを抱える。
黒の土地ネクロヴァルディアは、滅びと復興の胎動を抱える。
銀の土地ヴァルグレアは、構造と資源支配の現実を抱える。
青の土地ミルディアは、保存と喪失への恐怖を抱える。
緑の土地ガルディアスは、生命の適応と闘争を抱える。
赤の土地イグニスヴェインは、変革と焼却の衝動を抱える。
灰の土地ザラディアは、断絶と余白を抱える。
それぞれの土地には複数の国家、文化圏、種族、信仰、技術体系が存在する。どの土地にも豊かな都市があり、どの土地にも貧困があり、どの土地にも美しい風景があり、どの土地にも人が踏み込むべきではない場所がある。
七つの土地は、魔大戦によって裂かれた世界の傷跡である。
同時に、その傷跡の上で千年かけて育った文明の器でもある。
グレン・イーフリートが焔冠王因子を宿す者としてこの世界を歩く時、彼は七つの土地のどれか一つを正解として選ぶのではない。
白が隠した歴史を見なければならない。
黒が失わなかった誇りを見なければならない。
銀が示す現実の重さを見なければならない。
青が抱える忘れられない愛を見なければならない。
緑が突きつける生存の掟を見なければならない。
赤が求める変化の代償を見なければならない。
灰が守る断絶の意味を見なければならない。
その果てに問われるのは、七つに裂かれた世界を再び一つへ戻すべきかどうかではない。
七つに裂かれたまま千年を生き延びた世界へ、どのような新しい接続を許すのかである。
王核因子を持つ者が危険視される理由は、そこにある。
王核因子保持者は、地図を書き換えるのではない。
土地そのものが抱えてきた答えへ、もう一度命令を送る可能性を持つ。
だから世界は、グレンをただの地方炎爵家の嫡男として見ない。
七つの土地は、彼を待っている。
燃やす者としてではなく、何を燃やし、何を残すのかを選ぶ者として。




