第6話:襲撃と逃走
午後の光が傾き、町外れの石畳に長い影が落ちる。
セラフィナは馬車に揺られながら、胸の奥の鎖が少しずつ締まる感覚を覚えていた。
――ガンッ!!
車輪が何かに乗り上げ、馬が悲鳴を上げる。
馬車が大きく揺れ、セラフィナの身体が跳ねた。
「……っ!?」
外から怒号。
「止まれ!」
剣が抜かれる音。
窓越しに見えたのは、顔を覆った男たち。
剣、棍棒、荒い息。
ただの盗賊ではない。狙いは最初から“馬車”に定まっている。
低く響く笑い声。
「貴族の姫様、どこへ行くつもりだ?」
胸の奥で恐怖と困惑が入り混じる。
馬車は揺れ、身体は跳ねる。
外では刃がぶつかる音、怒号、金属の衝突音が混ざり、護衛たちが必死に盗賊の進路を止めているのが聞こえる。
セラフィナは座席にしがみつき、ただ震えることしかできなかった。
「セラフィナ様!」
賊との戦闘の合間に護衛が窓を叩き、声を張る。
「今すぐお逃げください、姫!」
「え……で、でも――」
「大丈夫です、行ってください!」
外では刃と棍棒がぶつかる音、怒号、金属の衝突音が混ざる。
セラフィナの指先が震え、胸が張り裂けそうになる。
――逃げなければ。
でも、足が動かない。
恐怖で足が震える
息が苦しい、慣れない動きで喉が熱くなる。
混乱と恐怖で頭が真っ白になった。
「今だ!」
護衛の声に背中を押され、セラフィナは半ば突き飛ばされるように馬車を飛び降りた。
石畳に膝を擦り、痛みが走る。
息が詰まり、胸が潰れそうだ。
背後で盗賊の怒号と金属音が絶え間なく響く。
護衛たちは命を賭け、盗賊の進路を塞ぐ。
「振り返らないで…!どうか生き延びてください!」
セラフィナは必死に走り続けた。だが、慣れない動きで息が乱れて胸苦しい。
恐怖に突き動かされながらひたすら走る。そのうち泥で足を滑らせ、膝を擦りながら転んだ。
痛みに顔をしかめつつ、身体は草むらの影に倒れ込むように隠れる。
息を荒くしながら肩で呼吸を整える。
――全身がまだ緊張で震えていて、心臓は跳ね続けていた。
「うっ……!」
恐怖で短く声を漏らす。
混乱と逃走の必死さが入り混じる。
その時、低く静かな声が枝の間から聞こえた。
「……こっち、早く」
視線を向けると、草陰の向こうに小さな少年の姿が見えた。
恐怖で身体が硬直する。
――自分を助けようとしている、と直感した。
「追われてるんでしょ、早く」
少年の声は静かだが迷いがない。
震える手を握りしめ、セラフィナは少年の後について闇の中へ身を任せた。
来た道もどこかわからないまま走り続けた先、
視界に、古びた礼拝堂の扉がぼんやり浮かぶ。
中からかすかに灯りが漏れ、安息を予感させる。
セラフィナは深く息を吸い込み、少年の後に続き、礼拝堂の中に足を踏み入れた。




