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思いついた設定を2、3話まで書くもの  作者: 人外主人公大好き
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死なないだけの突撃兵 1


破壊され、未だ燃え続ける建物群の中で、それは見つかった。


「おっ、珍しい……女だぞ」


「本当ですね……勿体無い。顔はいいのに、前線に送られるなんて」


女の身体は、すでに原型を保っていなかった。

胴には無数の穴が穿たれ、片腕は付け根から失われている。


「………先に行ってくれ」


「ハァ……律儀ですね。その女、帝国の人間ですよ?

 わざわざ祈らなくても……」


「わかってるさ……だが、こいつも望んでこうなったわけじゃないだろう」


「……先に行っときますね。他にはいないでしょうが」


「……」


男は手を合わせた。

そして、ふと考える。


もしも自分の娘が、同じ目に遭ったとしたら。

こいつにも、家族がいたかもしれない。


そんな考えを振り払うように、男は踵を返した。

仲間に追いつくために。

この死体を、これ以上見ないために。


「あんた、いいやつだな」


「……は?」


振り返った時には、すでに遅かった。

先程まで死体だったはずの女が、ナイフを握り、

それを自らの首へ突き立てていた。


「がっ……」


叫ぼうとした。

知らせようとした。

だが――


「……」


すべては遅かった。

走馬灯が溢れる。


祖国に残してきた家族のこと。

妻のこと。

ようやく喋り始めた、娘のこと。


それらを思い浮かべながら、

男の生涯は、静かに幕を閉じた。


――


「……」


女は男を見る。

いや、先程まで生きていた存在を、ただ視界に収める。


そして――


「……」


迷いなく屈み、男の装備を奪い取る。

銃を手に取り、まだ遠くに見えている男の仲間へと銃口を向けた。


「……ふぅ」


小さく息を吐く。

距離はある。射程外と言っていい。

だが、関係ない。


長年の経験が告げていた。

そして何よりも――自分自身を信じていた。


引き金に、力をかける。


――


「何で……あんな人が、前線に来たんだろう」


律儀で、愛想が良く、

何よりも家族を愛している。


そんな男が、なぜ前線に来ていたのか。


「……」


思う。

前線に来るのは、ああいう人ではなく、

自らのような存在だけでいいのではないか、と。


……強盗殺人の死刑囚。

何も違わない。


たとえ家族を守るためだったとしても、

人を殺したという事実に、嘘はないのだから。


だからこそ、

政府の――悪魔の囁きに、乗った。


そんな事を考えていた、その時だった。


バン!


銃声が響いた。

反射的に後ろを振り返る。


そこには、地に倒れた男と、

その男の銃をこちらへ向けている、片手の女がいた。


「……なっ」


声を出した時には、すでに遅かった。

弾丸が、自分の頭を撃ち抜く。


……倒れる。

考える暇もない。

何かを思い出すことすらないまま――


――


「っ……ハァ」


止めていた息を吐き出す。

慟哭する心臓を、なんとか落ち着かせる。


……何百人と相手にしてきたというのに、未だに慣れない。

慣れるはずがない。


「……」


女は、自らの肉体を見つめる。

穴が開き、片腕が失われ、

――生物としては、死んでいてもおかしくない状態の体を。


だが、その体に異変が起こった。


気味の悪い音を立て、肉がゆっくりと再生し始める。

穴は塞がり、欠損していた片腕も戻る。


数秒後には、

五体満足、擦り傷ひとつない女がそこに立っていた。


女は再生した箇所を、点検するかのように確認する。

そして、先ほど倒れた男の仲間のもとへ歩み寄り、顔を確かめた。


「……ハァ」


ため息をつく。


「……違ったか」


その声は、絶望にも、

あるいは当然だという諦観にも聞こえた。


「……英雄が、この程度で死ぬわけがないもんな」


英雄――

言葉の通り、偉業を成し遂げた存在。

その場にいるだけで士気が上がり、

その力は“一騎当千”と言われるほどのものだった。


女は、倒れた男の鞄を漁る。

何か情報がないか、確認するためだ。


「……あった」


紙が一枚。

今の時代にしては古臭いが、

戦争であれば処分も簡単で、合理的な方法だろう。


「……英雄は、しっかりといるらしい」


紙には、

援軍として英雄が派遣される、とだけ書かれていた。


「……探そう」


女は直ちに、この場を離れる準備を整える。

すでに、敵はこの二人の死亡に気付いているだろう。


――なぜなら、この二人の装備、

正確には銃が関係している。


この世界の生き物には、必ず固有の魔力の波がある。

その波を登録し、

その人物の魔力を弾丸に変換して扱えるのが、この銃だ。


さらにこの銃には、

位置情報を伝える機能と、

魔力が補給された後、一分間補給されなければ

ロックがかかる機能も備わっている。


かつての帝国が製作した兵器が、

今や帝国の喉元に食らいつこうとしている――

皮肉な話だ。


「……いつ終わるんだろうか」


女は考える。この先のことを。

帝国は確かに強い。

だが、それは一対一の戦争ならばの話だ。


……やりすぎたのだ。

既に周辺国家はすべて敵国となり、四面楚歌の状態。


未だに帝国が存続しているのは、

ひとえにその技術力による強力な兵器の存在のおかげである。


この街も、かつては栄えていた。

帝国の入り口として、多くの人々が生活を営んでいた。

数百万人が暮らしていた。


……いまや、廃墟に成り果てている。

かつての面影すらも、跡形もない。


「……」


女は歩く。

廃墟を。


目的の存在を探すために。

……自らの存在意義を、成すために。

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