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思いついた設定を2、3話まで書くもの  作者: 人外主人公大好き
3/4

ロボットは普通に生きたい 3



――魔力残量:測定不能

――魔石スロット:空

――魂消費率:上昇中


(……静かだな)


 夜の街は、昨日と同じように灯っている。

 車の音。

 人の話し声。

 自販機の光。


 なのに、俺の中では、すべてが終わりに向かって進んでいる。


 魔石は尽きた。

 完全に。


 探した。

 街の外れも、廃工場も、森も。

 魔物は、いなかった。


 いや、正確には――

 俺が探している間に、すべて狩られていた。


(……そりゃそうだ)


 この街には、魔法少女がいる。

 魔物を放置する理由がない。


 一歩、歩く。

 胸の奥が、じわりと熱を持つ。


 魔石はない。

 今、動いているのは――魂だけだ。


――魂消費率:警戒域


(これ以上、長くは持たない)


 身体の感覚が、妙に生々しい。

 人工皮膚の下の金属骨格。

 その奥で、魂が擦り切れていく感覚。


 前世で死んだときは、こんな感覚はなかった。

 気づいたら終わっていた。


 だが今は違う。


 終わりまでの距離が、はっきりとわかる。


「……皮肉だな」


 声に出す。

 誰も聞いていない。


 生きるために狩ってきた。

 生きるために逃げてきた。


 その結果、生きる理由だけが残った。


 ――そのとき。


 魔力反応。

 近い。

 強い。


(……来たか)


 振り返る必要はなかった。

 わかっていた。


 足音。

 軽い。

 けれど、迷いがない。


「やっぱり……あなた」


 聞き覚えのある声。


 魔法少女だ。


 変身している。

 光を纏い、現実から一歩浮いた存在。


 俺は、ゆっくり振り返った。


「追ってきたのか」


「……偶然」


 嘘だ。

 でも、責める気はなかった。


 魔力の流れが、俺を包む。

 彼女は、すぐに異変に気づいた。


「……魔石、ない?」


 鋭い。


「もう、尽きた」


 隠す意味はなかった。


 魔法少女は、言葉を失った。

 視線が、俺の胸元に吸い寄せられる。


「……じゃあ、今動いてるのって……」


「魂だ」


 即答だった。


「この身体は、そういう作りだ」


 沈黙。


 彼女の魔力が、わずかに揺れる。

 怒りではない。

 悲しみだ。


「そんな……」


「悪の組織の技術だ。

 魔法少女に近づくための、都合のいい兵器」


 言葉にした瞬間、胸の奥が強く軋んだ。


――魂消費率:上昇


(……もう、隠せないな)


「だから、もうすぐ止まる」


「止まるって……!」


「停止か、消失か。

 どっちかは知らない」


 魔法少女が、一歩踏み出す。


「治す。魔力を流す。

 私が支える」


 その言葉に、はっきりと首を振った。


「無理だ」


「なんで!」


「共鳴する。

 あんたの魂と、俺の魂が」


 彼女は、言葉を失う。


「それに……」


 俺は、自分の胸に手を当てた。


「それじゃ、同じだ」


 守るために魂を燃やす彼女。

 延命のために魂を使われる俺。


 誰かに決められた使い道。


「俺は……選びたい」


 初めて、そう思った。


 魔法少女の瞳が、揺れる。


「何を?」


 答えは、決まっていた。


「使い切るか、

 何もせずに終わるか」


 周囲の魔力が、ざわめいた。


 街の影から、歪みが滲み出す。

 未処理の魔力。

 魔物の核だけが集まってできた異形。


 魔法少女が舌打ちする。


「……しまった」


「俺が引き寄せた」


 魂を剥き出しで使っているせいだ。


「下がれ」


「無理! あなた――」


「俺がやる」


 魔法少女が、俺を見る。


「死ぬよ」


「知ってる」


 でも。


 逃げ続けるより、

 使われ続けるより――


 自分で決めた方が、マシだ。


 俺は、魔法回路の制限を解除した。


――魂直接駆動

――魔法使用許可


 世界が、白くなる。


 痛み。

 熱。

 記憶が、剥がれていく感覚。


 それでも、身体は軽かった。


 初めてだ。

 この身体が、完全に俺の意思で動いている。


 魔法を放つ。


 派手じゃない。

 効率だけを追求した、一撃。


 異形は、光の中で崩壊した。


 同時に、膝が崩れる。


――魂消費率:限界突破


(……ああ)


 これで、いい。


 倒れ込む俺を、魔法少女が受け止める。


「……なんで、そこまで……」


 視界が、暗くなる。


「選びたかった」


 それだけを伝えた。


 誰かのためでも、

 命令でもなく。


 俺自身の選択として。


 最後に見えたのは、

 彼女の、泣きそうな顔だった。



 朝。


 街は、何事もなかったように動いている。


 瓦礫もない。

 魔物の気配もない。


 魔法少女は、屋上に立って空を見ていた。


 胸元には、小さな魔石がある。

 砕けて、もう使えない。


 だが、その奥に――

 確かに、何かが残っている気がした。


「……ありがとう」


 誰にともなく、そう呟く。


 そして彼女は、再び街へと降りていった。


 守るために。


 ――選んだ魂を、胸に抱いて。


―――――

おわり

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