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オレはラッパー…歌歌う歌歌い  作者: 双鶴


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5/5

歌歌う歌歌い

歌歌う歌歌い、俺の声

優しさも怒りも全部のせ

音の中で生きていく

俺はラッパー、叫びながら歌う


---


あの夜から数週間。

響は地下室に戻らなかった。

代わりに、スタジオに通い詰めていた。

プロのエンジニアとともに、《叫歌》シリーズを正式な音源として再構築していた。

ラップとメタル。

語りと咆哮。

優しさと怒り。

すべてを混ぜた“響の音楽”が、ついに形になろうとしていた。


タイトルは《歌歌う歌歌い》。

それは、響が自分自身を肯定する言葉だった。

ラッパーでも、メタラーでもない。

ただ、歌を歌う歌歌い。

叫びながら、誰かの心に触れようとする者。


リリース当日。

SNSは騒然となった。

「ついに正体を明かした」「あの声はやっぱり響だった」

賛否はあった。

「裏切られた」と言う者もいた。

でも、それ以上に多くの人が、彼の“矛盾”に共鳴した。


そして、ライブの日が来た。

場所は、あのスタジアム。

かつて“仕事”として笑顔を貼りつけていた場所。

今度は、“自分の音”で立つ。


ステージに立つ響は、マイクを握りしめる。

観客は静かに彼を見つめていた。

イントロが流れる。

ギターの歪み、ドラムの鼓動、そしてラップのビート。

そのすべてが、ひとつに溶け合っていく。


「Yo、俺はラッパー、でもそれだけじゃねぇ」

「叫びたい夜も、優しい朝も、全部俺だ」

「歌歌う歌歌い、ここにいる」

「ジャンルじゃねぇ、これは俺の命だ」


観客が一斉に拳を突き上げる。

涙を流す者、叫ぶ者、ただ黙って聴き入る者。

そのすべてが、響の音楽を受け止めていた。


ライブの最後、響はマイクを置かずに語った。

「俺は、ずっと自分を分けてた。昼と夜、ラップとメタル、笑顔と叫び」

「でも、もう分けない。全部、俺だ」

「音楽って、そういうもんだろ?」

「誰かの心に届くなら、それが正解だろ?」


拍手が鳴り止まなかった。

その音は、かつての“沈黙”を塗り替えるように、響の胸に響いた。


---


数ヶ月後。

響は音楽学校の講堂で、後輩たちに向けて語っていた。

「君の声は優しい。だからこそ、叫べることがある」

「音楽は、誰かの期待に応えるものじゃない。君自身を生きるためのものだ」

講堂の片隅で、かつての自分のように俯いていた少年が、そっと顔を上げた。


響は笑った。

もう仮面はいらない。

彼は、歌歌う歌歌い。

叫びながら、歌い続ける者だ。


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