ステージでの告白
仕事だから、笑ってSay
叫びたいけど、黙ってPlay
音の中で自分を隠す
でも観客の声が、俺を刺す
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スタジアムの空気は、熱気と期待に満ちていた。
響はメインDJとして、ステージ中央に立つ。
スポットライトが彼を照らし、観客の歓声が波のように押し寄せる。
マイクを握る手は、いつも通りの安定感。
「Yo!みんな調子はどうだ!」
響は笑顔で叫ぶ。
それは“仕事”としての完璧なパフォーマンスだった。
控室では、スタッフがセットリストを確認していた。
「今日は定番でいきましょう。“Shine Up”で締めて」
響は頷く。
心の中では、《叫歌・響》の音源が何度も鳴っていた。
でも、今日は違う。
これは“仕事”だ。
叫びは、持ち込まない。
ステージの上。
響は観客を煽り、リズムに乗せてラップを刻む。
「Yo!右手を上げて!左手も!」
観客は応える。
歓声が響く。
でも、響の心は静かだった。
叫びたい。
でも、叫べない。
曲が終わるたびに、観客の熱が増していく。
誰かが叫んだ。
「《叫歌》の人、ここにいるんじゃねぇのか?」
響の背筋が凍る。
別の声が続く。
「“響”って名前、あの声に似てる!」
観客の一部が、彼の“裏の顔”に気づき始めていた。
響はマイクを握り直す。
「次の曲いくぜ!盛り上がってこう!」
声が少しだけ震えていた。
でも、笑顔は崩さない。
これは“仕事”だ。
叫びは、まだ出せない。
そのとき、観客席から一斉に声が上がった。
「叫べ!響!」
「お前の声、聴きたいんだよ!」
「ラップでもメタルでもいい、響の音をくれ!」
その声援は、響の胸を突き刺した。
彼はマイクを見つめる。
そして、ほんの一瞬だけ、息を吸い込んだ。
でも、叫ばなかった。
代わりに、こう言った。
「ありがとう。次の曲、いくぜ」
その言葉に、観客が静かに頷いた。
響は、最後まで“仕事”を全うした。
でも、その夜、彼は地下室に戻らなかった。
代わりに、スタジアムの録音データを聴き返していた。
観客の声援が、どこまで届いたかを確かめるために。




