矛盾のリリック、心のビート
優しさと怒りが交差する
音の中で自分を探す
「俺は誰だ?」と問いかける
歌歌う歌歌い、叫びながらラップする
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《叫歌・弐》がネットで話題になってから数日。
再生数は急激に伸び、音楽系の掲示板やSNSでは「ジャンルを超えた衝撃作」として取り上げられ始めていた。
ラップのリズムに乗る咆哮。
メタルのギターに絡む語り。
それは、誰にも真似できない“矛盾の音楽”だった。
響は、地下室でその反響を見ながら、複雑な感情に揺れていた。
嬉しい。
でも怖い。
自分の“叫び”が、昼の自分を侵食し始めている。
ラッパーとしての仮面が、少しずつ剥がれていく。
ある夜、響は新しい音源を録る。
タイトルは《叫歌・参》。
今回は、ラップのリリックを意識的に混ぜた。
「Yo、俺は叫ぶ、でも優しさもある」
「怒りの中に、光を探す」
その言葉は、響自身の“矛盾”をそのまま音にしたものだった。
翌日、スタジアムの控室で、同僚DJのリョウが再び話しかけてきた。
「なあ響、最近の《叫歌》、ラップ混ざってきてるよな。あれ、もしかして…」
響は、笑ってごまかそうとしたが、リョウの目は真剣だった。
「俺、気づいてるよ。あれ、お前の声だろ?」
響は、言葉を失った。
リョウは続けた。
「俺は、あの音楽、好きだよ。ラップでもメタルでもない、“響の音”だと思う」
その言葉に、響の胸が熱くなった。
誰かが、自分の“矛盾”を受け入れてくれた。
それだけで、少しだけ救われた気がした。
その夜、響は地下室でマイクを握りながら、初めて“自分の名前”を叫んだ。
「風間響だ。俺はラッパー、でも叫びたがりだ!」
その声は、録音され、ネットにアップされた。
タイトルは《叫歌・響》。
それは、彼自身の“告白”だった。




