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オレはラッパー…歌歌う歌歌い  作者: 双鶴


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2/5

メタルの夜、ラップの朝

夜は地下でギターが唸る

叫ぶ俺に誰も気づかぬ

朝になればDJブース

「盛り上がってこうぜ!」ってスムース


---


風間響の夜は、誰にも知られていない。

地下室の扉を閉めると、彼はもう“ラッパー”ではない。

ギターの歪み、ドラムの爆撃、マイクに乗る咆哮。

それは、昼間の笑顔とは正反対の“本音”だった。


響は、音楽を使って自分を分裂させていた。

昼はラップ。明るく、軽快に、観客を盛り上げる。

夜はメタル。怒りと孤独を吐き出す、誰にも見せない叫び。

その二重生活は、彼にとって“生きるための手段”だった。


《叫歌》という名でネットにアップした音源は、思いがけず反響を呼んだ。

再生数はじわじわと伸び、コメント欄には「この声、刺さる」「誰だか知らんけど天才」といった言葉が並ぶ。

響は震えた。

誰かが、自分の“叫び”に共鳴している。

でも、それを“自分の声”だとは言えない。

言った瞬間、昼の自分が壊れてしまう気がした。


翌朝。

スタジアムのDJブースに立つ響は、いつも通りの笑顔を貼りつける。

「Yo!今日も最高の一日にしようぜ!」

観客は歓声を上げ、子どもたちは手を振る。

響はその中心で、完璧な“陽キャ”を演じる。

でも、心の中では《叫歌》のコメントを何度も読み返していた。


その日、スタジアムの控室で、同僚DJのリョウが話しかけてきた。

「なあ響、《叫歌》って知ってる?最近バズってるメタル音源。あれ、マジでヤバい」

響は、喉の奥が詰まる感覚を覚えた。

「…知らない。メタルはあんまり聴かないから」

そう言って笑ったが、心臓はバクバクと鳴っていた。


リョウは続けた。

「俺、あの声、どっかで聴いたことある気がするんだよな…」

響は、笑顔を保ったまま、視線を逸らした。

その瞬間、スタジアムのスピーカーから《叫歌》の一節が流れた。

観客の誰かがスマホで流していたのだ。


「ぶっ壊せ、燃やせ、黙るな」

その叫びが、昼の世界に侵入してきた。

響は、DJブースのマイクを握りしめた。

「さあ、次の曲いくぜ!盛り上がってこう!」

声が少しだけ震えていた。


その夜、響は地下室で新しい音源を録音した。

タイトルは《叫歌・弐》。

前よりも、少しだけラップのリズムを混ぜてみた。

叫びと語りが交差する、新しいスタイル。

それは、響自身が“自分の声”を探す旅の始まりだった。


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