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オレはラッパー…歌歌う歌歌い  作者: 双鶴


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1/5

俺はラッパー、でも叫びたがり

Yo、マイク握って笑顔でSay!

でも心の奥じゃ叫びてぇ

「愛してる」より「ぶっ壊せ」

そんな衝動、誰も知らねぇ


---


風間響かざま・ひびき、24歳。

昼はスタジアムDJとして、観客を盛り上げるラップを刻む。

「盛り上がっていこうぜ!」と笑顔で叫ぶ彼の姿は、誰もが好感を持つ“陽キャ”そのもの。

観客の歓声、ビートに乗る声、手を振る子どもたち。

響はその中心で、明るく、軽快に、完璧な“盛り上げ役”を演じていた。


でも、誰も知らない。

彼の心の奥には、叫びたい衝動が眠っていることを。

その衝動は、誰にも見せられない。

誰にも理解されない。

だからこそ、彼は“ラッパー”という仮面をかぶって生きている。


夜。

響は仕事を終えると、誰にも言わずに地下室へ向かう。

古びた防音扉を開けると、そこにはギターアンプ、ミキサー、マイクスタンド、そして壁一面に貼られた歌詞の断片。

「壊せ」「燃やせ」「黙るな」「叫べ」

それは、彼の“もう一つの声”だった。


ギターの轟音が響く。

ドラムの打撃音が心臓を叩く。

そして、響の咆哮がマイクに乗る。

ラップではない。

それは、怒りと痛みと孤独を吐き出す“叫び”だった。


音楽学校時代、響はメタルバンドを組んでいた。

仲間と作った曲は、叫びと詩が混ざった魂の塊だった。

だが、ある日、講師に言われた言葉が彼の心を折った。

「君の声は優しい。メタルには向いてない」

その一言で、彼はマイクを置いた。

仲間は解散し、響は“叫ぶこと”を封印した。


ラップなら“陽気”に振る舞える。

誰も傷つけない。

誰にも嫌われない。

響はそう思い込んで、スタジアムDJの道を選んだ。

でも、心は叫びたがっていた。

誰にも言えない痛みを、誰にも届かない声で。


ある夜、響は地下室で録音した音源を匿名でネットにアップする。

タイトルは《叫歌きょうか》。

誰にも知られず、誰にも見られず。

ただ、叫びを外に出したかった。

それは、誰かに届くことを願ったわけじゃない。

ただ、自分の中の“爆発”を外に逃がしたかっただけ。


そして翌朝。

スタジアムの観客席から、誰かが叫んだ。


「昨日の《叫歌》、ヤバかった!誰が歌ってんの?」


響の心臓が跳ねた。

誰かが、あの叫びを聴いていた。

誰かが、あの怒りに共鳴していた。

でも、俺はラッパー。

笑顔でSay!

叫びは、まだ隠しておく。


その日、響はいつもより少しだけ声が震えていた。

でも誰も気づかない。

彼の中で、何かが静かに目を覚ましたことを。


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