未来都市
荒涼としたサバンナが広がるアフリカ、しかしここは人類の終着点となる大陸。
始まりの大陸にして終わりの大陸。それがどのような結末を迎えようとも、人類は必至で生きている。
そこに暮らす一人の青年がどのようにあがき、どのようにして生きていくか?それを知るための物語である。
ここは中央アフリカ西部にある都市・・
高層ビルが立ち並び多くの人が行き交う街。
そんな街の路上でどこかに電話をかけている青年がいた。
「ハロー?聞こえますか?ええ、その商品の入荷は今月末までにお願いします」
「ええ、ええ、代金はいつも通り月末に現物でお渡しします。」
「はい了解しました、では今後ともよろしくお願いします。」
一通りの会話が済むと彼は電話を切り、一段落ついたのか、空を見上げて呆然としていた。
(やれやれ、やっと終わったな。商品が入らなかったらどうなっていたことやら
なんせここは世界で最も人口の多い国だ、アレを必要とする人は大勢いる。
しっかし、いつまでもあいつらの言いなりになるのも癪だな?
あいつらの偉そうな態度には反吐が出る。)
ここは中央アフリカ西部、世界で最も人口の多い地域。その数、実に1億人を超える。
かつて栄華を極めたヨーロッパや北アメリカ大陸、アジア地域では人口減が著しく、それらの地域全て足しても1000万人もいない。それが今のこの世界なのだ。
時は西暦2744年、世界の総人口はおよそ4億人。人類は徐々にその数を減らしつつある。
人類の代わりにAIロボットが台頭し、彼らが労働の大半を占めるようになった結果、人口は減少することとなった。
このアフリカ大陸はそのAIロボットの発展が遅れたため、結果的に世界で最も人口の多い地域となったのは何とも皮肉である。
電話をかけていた青年、彼が電話をしていた先は人口が遥かに減ったかつての先進国と言われた地域である。
かつてと言ったが、これらの国々は未だ先進国であり、依然世界を牛耳っている存在でもある。
労働の大半はAIロボットで賄っており、むしろ現在の方がアフリカ地域と比較して国力さは増している。
AIロボットは疲れを知らない、睡眠をとらない。食事も必要としない。そして人より何倍も正確に働くことができる。その結果、創造性を必要とする仕事を除いて彼らが労働力の大半となったのだ。
結果、それらの地域とアフリカ地域での格差はさらに広がり、人類の多くは一部の人たちに支配されているともいえる。
そして電話をしていた彼が取り扱っている商品とは、まさにそのAIロボットであり、それを購入したい人がこのアフリカでも増えているのが現状なのだ。
AIロボットはとても高額だ。人が一生をかけて働いてやっと買えるかどうかの商品である。しかしそれを購入した人は労働の大半をロボットに任せ自分は働かずとも収入を得ることができるようになる。
そのため高額商品であるにも拘わらず、とても人気が高い商品なのだ。その結果が人口減に繋がるとしても結局人は欲望には勝てないのである。
そしてそのAIロボットを作る技術はまさに先進国にしか存在しない。そのため相手にどれだけ屈辱な態度を取られようとも、この青年はこの仕事を続けているのだ。
青年は一人葛藤と苦悩の中、この世界をどのようにしたいと思っているのか?それを知る術はまだない。