異世界転生なんて、夢物語。あくまでゲームや漫画の中の世界であり、現実世界では有り得ない…
そう思ってた。思ってたのに!
…あれ?俺、確か本編全部クリアしたから終わりっ!てリスナーに言って色々感想とか喋った後、締めの挨拶して配信終了ボタン押した…はずだよな?
なんで、この景色が見えてるんだ…?
どこをどう見ても、あのゲームの最初に出てくるヒロインとの出会いの街だろ!?
…にしても、ここまで景色が鮮明で、なおかつ環境音や人々の声、吹いてくる風、それとその風に乗って漂ってくる海の匂いが妙にリアルだな…
「こんにちは!キミ、倒れてたけど大丈夫?」
…は!?え!?
今聴こえた声って…いや、絶対に聞き間違いだろ。あの子はゲームの中のキャラだ、現実にいるわけない。
…ん?待て。なんでこんなはっきり全部聴こえたんだ…
ゲームだと、最初の挨拶しかボイスがついてないはずだよな…?
確かこのゲーム、フルボイスじゃなかったはずだし…だけどこの出会いのシーンは絶対にあった。言い切る。今さっき聴こえてきたセリフはゲームの最初の出会いの場面で必ず出てきたセリフで、配信で何度も見てる。
しかも1部だけボイスありのシーンだったのもあってかなりしっかり頭に入ってる…
ただ、あそこまで完全なボイスはついてなかった気がするんだよな…
…これってもしや異世界転s…いや、それは無いか。現実的に考えて100パー有り得ねぇ…あれはあくまでゲームの中で起きた話であり、設定のはず…
「おーい!私の声聴こえてる?」
「…うーん、反応はしてるしちゃんと聴こえてるみたいだけど、全然私のいる方に向いてくれないな…まぁいいか、とりあえず連れて帰ろっと…」
紲紫 音織、20歳。職業、ゲーム実況者兼自宅警備員。
さっきまで実況していたゲームの世界へ、記憶と体はそのままで飛ばされてしまいました…