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Gehenna-ゲヘナ-  作者: Filmrêve(フィルムレーヴ)
雨垂レ師ヲウガツ
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11話

俺は本部に加入した。

ここはローズという人が言っていた通りの場所で、様々な情報を元に人を捜査したり、動かしたり、時には殺したりもしていた。


ここでは大きく分けて実戦と事務と呼ばれる場所があり、俺はローズという人からの監視から外れると、言われていた実戦への所属をこっそり断り、比較的安全そうな事務に就くことにした。


しかし、事務という場所も思ったより厳しくて、パソコン操作は勿論、世界中に蔓延る情報を正確に処理するため、高度な言語知識や正確な地理知識など、様々な知識が必要とされた。


初めは戸惑ったが、ふとあることに気がついた。

その知識のほとんどが先生の教えてくれたものばかりで、既に俺の頭に存在しているということだ。

そのため、俺は周りに比べたら、比較的幸先のいいスタートを切ることができた。


先生はきっと俺を本部に入れるために、色々なことを教え込んだのだろう。

でも、どうして本部に入れたかったんだ?

『皆殺しにしてくれ』って...一体誰のことなんだ?


先生が言っていた訳の分からない話。

ここに来てからその意味を少しばかり理解することはできたが、まだ不明瞭なことが多く、今でもこうして俺の頭を悩ませていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そうして俺は今日も慣れない手つきでパソコンのキーボードを指で弾く。

後遺症の残る左手のお陰で、俺は事務の中でもトップを争うほど仕事が遅かった。


この手じゃ遅かれ早かれ実戦から外されていたことだろう。


そんなこと思いながら俺は左手を眺めて、ため息をこぼした。

すると突然、事務室に一人の男が入ってきて、キョロキョロと部屋を見回し始めた。

忙しい事務員達は一斉に俺の方へと視線を向ける。

その視線からは新人で仕事の遅い俺は戦力外だと、“能無し”らしい仕事をしろと言われているようだった。


俺はそれらの視線に引きつった笑顔で答えると、直ぐに立ち上がって男の元へ向かった。


「...あの、何かお探しでしょうか?」

「あぁ、あのさ、調べて欲しい人がいるんだけど」

「...あ、えーと、任務についてでしょうか?」

「あーいや、そうじゃなくて」


男はそう言って少し口篭る。

俺はそれを察して男に耳を傾けた。


「“ドク”って人のことなんだけど...」

「...え?」

「いや、事務にいるって聞いたから来たんだけど...」

「えーと、俺がそのドクです...」

「は?いや、お前じゃないだろ?ふざけんなよ」

「えー...そんなこと言われても...」

「はぁー、やっぱ人違いじゃねぇか...」


大きなため息と共に男はお礼も言わずに立ち去ってしまった。

そんな失礼な態度にも俺は引きつった笑顔しか返すことができず、自分の情けなさに思わず涙が出てしまいそうだった。


そして、ふと男の言っていたことが引っかかり、自分のパソコンへと戻り、検索をかける。


【本部 リスト “ドク”】


ローズという男が言うには、先生はこの本部に“ドク”という名前で所属していたらしい。

それならばこの検索で出てくるはずだ。


すると、その検索によって一人の男が該当した。

俺はそれに添付された写真を見て、酷く驚いた。


髪も結っていなければ風車も刺さっていない。

サングラスどころか装飾品の類は一切見受けられず、真面目という印象を強く受ける。

死んだ魚のような瞳で無愛想な表情を浮かべる男がいた。


まるで先生とは思えないその男はコードネームの表記に“ドク”と書かれていて、顔立ちもどこか先生に似た雰囲気が感じられた。


これが...先生...?いや、人変わりすぎだろ...!


俺は呆気にとられながらも、そこに記載された情報に目を通した。


『コードネーム:ドク 本名:朱 鼬瓏(男)

国籍:中国 加入日:××××年○月○日(16歳)...』


ジュ...ユウロン...先生の...本名...。

こんなことまで分かるんだ...凄いなここ。


そうして俺は本部の情報力に感心しながら、下へ下へと読み進めていった。


“ドク”はここ本部に実戦として所属していたようで、様々な功績を積んだ優秀な人物だった。

暗殺部隊で彼の右に出る者はいないと言われるほどの腕利きで、毒を使った巧妙な技で沢山のブラックリストを片付けていたらしい。


性格としては無口で無愛想。

人とはあまり関わりを持たないようで、いつも一人で毒の研究をしていたそうだ。

その優秀な技術を扱える者を増やしたいと願う上司もいたそうだが、教え子は決して作らなかったという。


...俺の知ってる先生じゃない。

これは本当に先生なのだろうか?

だとしたら矛盾してるじゃないか...。

どうして先生は先生になったんだ?

どうして俺に教えたんだ?


そんな疑問を抱きながら画面を流していくと、先生の情報の中に、ある一人の名前が出てくるようになった。


...あれ?この頃から誰かと組んでる...。

ユウナギ?誰だこれ?

先生と同じ実戦の...女性!?

実戦って女性もいるの?


そこに書かれた情報によると、ある時期から先生はユウナギという女性とタッグを組み始め、彼女と共に功績を上げだした。


ユウナギという女性は鍼を使った戦闘方法で、厳しい実戦の中、男達に引けを取らない強さを持っていたらしく、暗殺部隊として“ドク”に肩を並べていたようだ。


...昔先生が言っていた...鍼治療を教えてくれた友達って...もしかして、この人なのだろうか?

女性だったんだ...。


そうして二人の任務内容や功績について感心しながら見ていくと、ある情報に俺の手が止まった。


「...え?...死亡?」


そこに書かれたいたのはユウナギという女性の、死亡に関する簡素な情報だった。

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