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Gehenna-ゲヘナ-  作者: Filmrêve(フィルムレーヴ)
最強の戦士
26/104

7話

昔、俺が住んでいた町には沢山の子供達がいた。

その中には勿論、俺の友達もいて、一緒に広場や商店街を駆け抜けて遊んだものだ。

あの日の戦火によって全員死んだと思っていた...。


「やっぱり!アッシェルだよな!」

「ラーセン...生きていたのか?」

「それはこっちのセリフだ!お前はてっきり死んだとばかり...」


そう言って彼は安堵するような表情を浮かべて、目に涙を滲ませた。

そんな彼を見て俺は何も言わずに抱き締めた。


ラーセンは近所に住んでいた友人で、やんちゃな彼にいつも強引に引っ張り出されて、共に町中を駆け回った。

俺の幼馴染であり親友だった。


「しかし、見違えたな!体つきもこんなに良くなって...一瞬誰か分からなかったぞ?」

「お前は変わらないな、相変わらず騒がしい奴だ」

「なんだと、この野郎!」


ラーセンはそう言って軽く俺の肩を殴ったが、俺の固い体に拳を痛めたようで、笑いながら労わるように自分の拳を撫でた。


「こんなところで何をしているんだ?」

「俺は今日からあそこの軍隊に配属されたんだよ。あ、そうだ!お前さ、バートラム少佐がどこにいるか知らないか?その人を探してここに来たんだ。というかお前こそ何して...軍隊にいるのか?」


首を傾げる彼にどう説明しようか少し悩んだが、いずれ明かさなければいけないことだと腹を括り、正直に話すことに決めた。


「...俺がバートラム少佐だ」

「へ?」


動揺する彼にこれまでのことを話した。

家族が死んだこと、軍隊に入隊したこと、その後進んだ道のりなど...。

彼は段々と理解をしていく内に、信じられないという表情を浮かべていった。


「お前...身分詐称って...下手したら捕まるぞ...」

「何も残っていなかったんだ」

「アッシェルで入ればよかっただろう?どうしてバートラムなんて...」

「...」


表情を曇らせる俺を見て、ラーセンは頭を掻いて、仕方なさそうにため息をこぼした。


「分かった、深くは聞かないさ。お前が生きてる、それだけで今は十分だ」

「...ありがとう」

「そうか...少佐にまで昇級したのか...すごいじゃないか」

「気がついたらな」

「ははっ!マニーが見たら大喜びだろうな!」

「...」

「おいおい、何だよ、弟の話もしちゃいけないのか?」

「いや、そういう訳ではないが...」

「忘れたいのか?」

「そんなわけないだろう」

「なら、話してやろうぜ、マニーのこと。あいつだって寂しいだろ、兄貴が自分のこと話したがらなかったら」

「...そうだな」


俺が渋々そう言うと、ラーセンはにっこり笑って、近くの岩に腰掛けて、ポンポンと叩いて隣に座るよう促した。

俺はそれ見て少し微笑みながら、大人しくそれに従い座った。


「あいつ小さいクセして、一丁前に皆の前を走ってさ。お前の心配そうな顔が今でも目に浮かぶよ」

「目を離すと直ぐにどこかへ行ってしまって...。危ないからいつも手を繋いでいたんだ」

「そうそう、俺よりもやんちゃ坊主でさ!特に兵隊ごっこが大好きだったよな!撃たれたフリして倒れたら、声上げて笑ってよ!」

「あぁ、そう言えば、そうだったな」

「それなのに虫も殺せないお前が軍隊の少佐なんて、今でも信じられない!」

「言い過ぎだ」

「だってそうだろ?覚えてないか?兵隊ごっこしてた時にさ、お前が何もない所で突然、派手に転けたかと思ったら花を避けてたなんて...俺達大笑いしちまったよ」

「...そんなこともあったな」


俺は笑ってその言葉に答える。

そんな俺を見てラーセンも満足げに笑う。


「本当に信じられないよな。走り回ってただけの俺達が軍人になるなんて」

「...お前はもう戦場に出たのか?」

「あぁ、でも、一回だけだ」

「一回だけ?」

「...情けない話、怖くてさ。あそこでは人の命がまるで軽い。隣にいた奴が次見た時は死体になって転がってる」

「...」

「殺さなきゃ殺される...そんなこと分かってるけど、俺は...人なんて殺せない...!」


ラーセンはそう言って手で顔を覆った。

その声は悲しみと恐怖に満ちていて、俺は何故だかそんな彼に安堵した。


「...ラーセン、お前は“人”なんだな」

「...どういう意味だ?」

「人を殺すなんて...人がしてはいけないことだ。お前がそう思うことは間違いじゃない」

「...アッシェル」

「命を奪わずに命を守れたらいいのにな...今の俺達にはそれしか術がない」

「...そうだな」

「お前はやはり変わらないな。強引だけど根は良い奴で誰よりも優しい。だが、戦場では生きるか死ぬかだ。お前のその優しさが仇にならないようにな」


その言葉はまるで自分に向けられた言葉のようで、自分で言っておいて耳が痛くなった。


「...ははっ!いかにも少佐らしい言葉だ」

「一応そうだからな...そろそろ戻るか」

「おっとそうだった!少佐を呼んで来いって言われたんだ。早く戻らないと、皆が待ってる」

「あぁ、急ごう」


そう言って、立ち上がろうとした時、ふと傍に咲く一輪の小さな花の存在に気がついた。

荒野に咲く不自然なその花に、俺は彼女の言葉を思い出した。


『お花を踏まないで』


妙に引っかかる言葉だった。

今こうして小さな一輪を見つけたが、荒野に花が咲くわけがないと言ったはずなのに、どうして彼女はありもしない花の心配をしたのか。


そう言えば、初めて会った時も、同じようなことを言っていたような気がする。

何故そんなにも花を注視する?

可哀想だから...にしては念を押しすぎだ。

じゃあ、一体何故?


長年の戦場経験により、俺の勘が鋭く反応する。

あの花は踏んではいけないと。

踏んだら大変なことが起きると。


しかし、そんな疑念など露ほども知らないラーセンは、小さな花の存在に気がつくことなく、急ぎ足でその花の方へと向かって行く。


「ラーセン!その花を踏むな!!」

「え?」


俺は咄嗟に叫んだが、その時には既に遅く、ラーセンはその花を勢いよく踏みつけてしまった。


...カチッ...ドガァン!!!


その瞬間、大きな音ともに爆発が起こった。

踏みつけた彼は勿論、近くにいた俺も正面からまともにその爆撃を食らった。

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