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Gehenna-ゲヘナ-  作者: Filmrêve(フィルムレーヴ)
最後のディナーは舞台のあとで
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2話

今日も私はパソコンで暇を弄ぶ。

検索するのは最近のニュースやお化粧品、舞台公演の情報や食べ物のことなど様々だ。


ぼーっとしながら流し見ていると、ある記事に目が止まり、そのページを開く。

そこには女の子と見間違えるほど可愛らしく、小悪魔的な笑みを浮かべる男の子が映っていた。


その子は自分と同じようにお化粧をしていて、服も顔立ちも中性的で、モデルをしている子だった。


なんて可愛い子...私と同い年ぐらいかしら?


読み進めていくと人気急上昇中の若手モデルで、地下のバーで踊っていた彼は事務所にスカウトされ、やっと世界に認められてきたところだという。


しかし、彼は数日前から行方不明となっており、連絡もつかない状況から、誘拐も視野に捜査が進められているそうだ。

手掛かり一つない状況を記事は、

『消えた天使の行方はどこに?』

と題している。


おっかない事件ね...というか、こんな可愛い子独り占めしようとする人って誰よ。

羨ましいじゃない...。


私がその記事に釘付けになっていると、後ろの扉からノックの音が聞こえた。


「...昼食だよ」


いつも通り落ち着いた低めの声がして、小窓から食事が差し出される。

私もいつも通り受け取ろうと思ったが、その瞬間、先程の記事が頭をよぎった。


パパの顔ってどんなのかしら。

声からして落ち着いたおじ様感がするけど、もしかしたらあのモデルみたいに、童顔だったりするのかも...。


小窓は外側からしか開かない。

つまり、覗き込むならパパが開ける今しかない。


私は少しウズウズしながら、片手でそっと食事を受け取ると、すぐさま小窓をもう片方の手で押さえた。

そして、そっと小窓を覗き込んだ。


先ず見えたのは少しよれた白い服。

胴は細めで繊細な体つきだ。

ゆっくりと見上げるように顔へと視線を向けると、それを遮るかのように小窓に手が入ってきた。


「っうぐ!」


その手は悪戯に私の鼻を摘むと、指先で軽く顔を押し返した。


「...まったく好奇心旺盛だな」


そう言ってパパの笑い声が閉じた小窓からする。


「もう!あとちょっとだったのに〜!」

「...残念でした」

「照れてないで顔見せてよ〜!私、パパの顔みたいの!」

「...そうだね、また今度」

「今度っていつ?」

「...僕が照れ屋じゃなくなったらかな」

「もう!」


私は怒った声を上げてはみたものの、もうそんなことどうでもよくなっていた。

何故なら顔が見えなかったことよりも、初めて触ったパパの男らしい手に興奮していて、それどころじゃなくなっていたからだ。


細めだけどゴツゴツとしていて、優しく触れていたけど、力は強そうだった...。

もっと繊細な男性のイメージだったんだけど、何よあれ...反則じゃないの!

パパってもしかして結構男らしいのかしら?

可愛い男の娘ではなさそうだけど、逆に萌えるわね。


そんな考え事をしていると、パパは一頻り笑い終えたのか、いつも通り落ち着いた声に戻って話し始めた。


「...どうして顔が見たかったんだい?」

「別に、ただ気になっただけよ。パパこそ私の顔とか気にならない?」

「...僕はレイの声が聞こえるだけで充分だよ」

「勿体ないわね。私、パパが思ってる百倍は可愛いのに。あ〜あ、私も誘拐されちゃうかも〜」


私がふざけてそう言うと、少し黙って真剣な声色でパパが聞いてきた。


「...どういう意味かな?」

「あら、パパ、ニュース見てないの?可愛いモデルの男の子が誘拐されちゃったってやつ。私も負けず劣らずの可愛さしてるから、パパが目を離した隙に誘拐されちゃうかもよ?」


悪戯してきたパパに仕返しをするように、私は自信満々にそう言いながら、机の上に置かれた食事を優雅に食べ始めた。


「...レイはずっとここにいてくれるんだろ?」

「え?」


暫く黙っていたパパが突然、弱々しい声でポツリとそう言った。

私は驚いて食事の手が止まった。


「...居なくなったりしないって言っておくれ」

「パパ?」

「...僕を不安にさせないでくれ」


段々と消え入りそうな声で、怯えるかのように話し続けるパパに私はなんだか申し訳なくなってきて、椅子から立ち上がってドアの前に手を置いた。


「パパ、ごめんなさい。大丈夫よ、私はどこにも行かないわ。ずっとパパといるわ」

「...本当かい?」

「ええ、誘拐犯なんて私が返り討ちにしてやるわ!

こう見えても私強いのよ?パパにだって勝てちゃうんだから!」

「...ありがとう」


私が謝って慰めの言葉をかけると、パパはいつもの落ち着いた声に戻って、少し嬉しそうに感謝を述べた。


そうだった、パパって結構繊細なんだったわ。

この扉は開かないから、私が連れ攫われるわけなんてないのに。

窓だって外なんて見えやしないのに、どうやって私のことに気づくって言うのよ。


その後直ぐに私は食事を食べ終えて、小窓の方へと返した。

パパはそれを受け取ると扉の前から去っていった。


パパが居なくなったのを確認すると、私は安堵のため息をついた。


パパのことは愛してるけど、繊細すぎる男も考えものよね。

ママに会ったら相談してみましょ。


そう思いながら私はまたママの写真を見る。


いつ見ても幸せに満ちて美しい姿のママ。

私のことちゃんと分かるかしら。

息子が娘になってたら驚くかしら。

ううん、ママのことだもん。

きっと喜んでくれるわ。

いや、私の方が綺麗で嫉妬しちゃうかも。


そんなことを考えて、満足気に笑いながら写真立てを持ち上げた時だった。

隙間からするりと写真が出てきてしまい、ヒラヒラと宙を舞うと、床へと滑り落ちてしまった。


私は直ぐにそれを拾い上げようとしゃがみこんだ。

すると、写真の裏に小さく何かが書いてあることに気がついた。


「...ア...ルバ?」

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