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Gehenna-ゲヘナ-  作者: Filmrêve(フィルムレーヴ)
Blood Berry
14/104

6話

悪魔が起こしたとされる、船上パーティー沈没事件。

一週間ほど前、ニューヨークの豪華客船にてその事件は起きた。

パーティーの主催者は不明、船底には人間ではとても空けられないような大きな穴、そこに現れた死んだはずの女性ダリア。


悪魔と契約した女...アタシの母親...。

いや、彼女のことは今はどうだっていい。

問題は悪魔の居場所...。


あの後、まるで何かの糸が引かれたかのように慈善活動紛いの参加費無料のパーティーが各地で多数開かれるようになった。

地上のホール、船上の豪華客船、上空の飛行船、様々な場所で開かれるパーティーには、多くの人が参加していた。

その内の6件で死傷者が出る事故が起きていた。

無関係とは到底思えない。


数多くの会場から悪魔主催の虐殺パーティーを見つけるには...。


「これだけの情報じゃ足りないわよね...」


アタシがそう呟くと同時に誰かが扉をノックした。

入って来たのはリドルとかいう生真面目そうな男で、彼はこちらを見るなり嫌悪の表情を浮かべた。


「...クロコさんは?」

「さぁ?急用とかでどっか行ったわよ」

「そうですか...調査の方はどうですか?」

「見ての通り情報不足よ。あんた、別に無理して話さなくてもいいわよ?アタシも無意味に人と話したくないし」

「言われずとも要件はこれだけなので」

「それはよかった、さよなら」

「...情報が足りなければ直接ご覧になったらどうです?事務はこの部屋を右に進んで突き当たりを左です」


リドルとかいう男はそう言い残して部屋を出て行った。


アタシのことは嫌いだけど、調査の協力はしてくれる...真面目な男。

やっぱりいい付き合いができるわね。


そんなことを思いながら、アタシは早速部屋を出て事務室へと向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


沢山の画面とキーボードを弾く音、書類と情報に溢れた事務室。

そこにいる人は皆同じような顔つきでパソコンと向き合っていた。


なんか冴えない奴ばっかりね...。


アタシは堂々とした足取りで部屋に入ると、暇そうな顔をして座っているこの部屋の代表らしき男に話しかけた。


「ちょっと、いいかしら?」

「誰だあんた?見ない顔だが...どこの課の者だ?」

「どこの者でもないわ。悪魔絡みの船上パーティー事件での監視カメラの映像とか見せてもらえる?」

「どこの者でもないって...ここは情報の宝庫だぞ。身分の明かせない者に見せるものは一つもない」

「...融通が聞かないわね。あんた達が用意した資料が穴だらけなのよ。さっさと調べて見せなさい、どうせ暇でしょう?」

「...なっ...誰が暇だ!」

「どう見てもあんたしかいないでしょう?あー、もういいわ...パソコン貸しなさい。自分で調べるわ」

「貸すわけないだろ!」


意地を張る男をアタシは睨みつけて、彼の座る椅子を足で勢いよく退けた。

キャスターのついた椅子はその勢いで、スケートのように遠くまで転がっていく。


「ちょっと借りるわよ」

「...っ...何をするんだ!」


止める男を無視してアタシはパソコンを触る。

中には想像していた何倍もの情報が入っていて、事件の資料も数多く見ることができた。


何よ、こんなにあるんじゃない。

一週間前の船上パーティーでの監視カメラ映像は...あら?ここにはないの?

監視課...ってとこにあるのね。

じゃあ、情報提供をしてもらいましょうか。


着々と情報の深層部に潜り込んでいくアタシに、男は唖然とした表情で画面を見つめていた。


よし、これで返事を待つとして、パーティーの主催者が不明なのは気になるわね。

そこの真相さえ掴めれば、次の事件現場の検討がつくんだけど...。


ふとアタシは気がついたことがあり、とあるリストを探し始める。

すると、それに勘づいた男はハッとして、棚の中にしまわれた資料を取り出した。


「あった...やっぱりね」

「おい、まさかとは思うが...」

「カラレスって男が言っていたけど、ここだと偽名かどうかが分かるのよね?」

「あぁ、偽名だとここの情報に載らないからな。検索しても出てこない場合は偽名の可能性が高い」

「死んだ人間の名前は検索したの?」

「...いや、してない。胸元に付けられたネームプレートで判断した」

「ほとんどの遺体はちゃんと本名だったわ。でも、その中に一人だけ偽名の死体があった」

「それはこの中にありそうか?」


そう言って男は『死亡者リスト一覧』と書かれた分厚いファイルを手渡してきた。

中を開くと膨大な数の死者の情報が写真と共に乗っていた。


アタシは数秒目を閉じてから、ある1ページを開いて指を指した。


「この女よ」

「ポピー・ブリジトック...本名はアンナ・エルス。彼女は2年前に亡くなっているぞ」

「ええ、彼女がこのパーティーを開いた」

「どうやって?」

「大方、悪魔に操られでもしたんでしょ」

「...そんなことが」


アタシの言葉に男は困惑の表情を浮かべる。

すると、パソコンに一件の通知が入り、見てみると先程メールで頼んだ監視課からの映像だった。

アタシは近くに置いてあったUSBにそれをコピーして、部屋を去りながら男に伝えた。


「これ、借りてくわよ。それの他にあと6件悪魔の関与が疑わしい事件があるから調べておいてちょうだい」

「...あぁ...ん?いや、俺がか!?」

「暇つぶしにはなるでしょ」


そう言って部屋を出ると、黒スーツを着た仏頂面した男が、丁度事務室へ入ろうとしていたところと出くわした。


「...あら...偶然ね」

「いや、君を探しに来たんだ。リドルから事務室に向かったと聞いたんでな。何か進展はあったか?」

「ええ、まぁね。今からもう少し詳しく調べるところよ」

「...今日はヒールじゃないんだな」

「あぁ、ちょっと...壊れちゃったの」

「そうか」


クロコはそう言って何故か疑いの目をこちらに向けた。

それを見てアタシは直ぐに立ち去ろうとしたが、そんなアタシに向かって背後から彼が話し出す。


「もう怪我は大丈夫か?」


その言葉にアタシは怒り混じりに返事をした。


「誰かさんが手加減してくれたおかげですこぶる元気よ!」

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