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Gehenna-ゲヘナ-  作者: Filmrêve(フィルムレーヴ)
Blood Berry
13/104

5話

ようやく話がまとまり、早速調査を開始するのかと思われたが、何故かアタシはクロコとかいう男と共に本部の訓練場と呼ばれる場所にいた。


「アタシ何のためにここにいるのかしら...?」

「殺し屋は下準備も無しに標的を殺すのか?」

「そんなわけないでしょ。簡単な仕事ならそうする時もあるけど、大抵は細かい情報分析から始めるわよ」

「なら情報分析のためにいると思え」


そう言うと、彼は少し遠くに視線を向けて、指を差しながら再び話し出した。


「あそこにいるのは訓練生だ。殺し屋から見てどう思う?」

「どうって、たくましい体つきの人が多いわね」

「そこじゃない...動きだ」

「彼らは何をしているの?」

「実戦の任務に向けて訓練している。今は主に格闘技術を学んでいるな」

「その任務ってのは人を殺すことはある?」

「...任務内容や状況に応じては」

「なら意味がないわね」


こちらの言っていることが理解できないという顔を浮かべる彼に溜息をこぼして、アタシは訓練生とやらに聞こえるように少し大きな声で話した。


「人を殺すのに3秒以上かけるのは三流以下よ。戦闘になる状況を想定するなんてプロの殺し屋は絶対にしないわ」


その声に数人の訓練生達がこちらを見た。

遠目からでも彼等の敵意が伝わってくる。

それを見て今度はクロコが溜息をこぼした。


「...なら、そうなった時はどうする?」

「有り得ないけど、もしそうなるような相手ならアタシは迷わず死を選ぶわ」

「殺し屋は死にたがりばかりなのか?」

「死にたがりなんかじゃないわ。殺される覚悟のない奴に人を殺す資格なんてないってだけよ」


アタシの言葉にクロコは少し黙り込んだ。

そして、彼はハンドサインを遠くに送り、それを見た訓練生は直ぐに訓練に戻った。


「カラレスは君を試しているぞ」

「どういうこと?」

「大方、初めは君が悪魔と関わりがあると踏んで利用しようと近づいたんだろうが、そうでないと分かった今、利用価値があるかどうかという部分しか見ていない」

「随分上からね」

「実際、奴は強いからな。君は何ができる?人を殺すことか?それでどうやって悪魔を見つけるつもりだ?」

「自己保身のための嘘ではないけど...」

「何がだ?」

「アタシなら確実にその悪魔を殺せるわ」

「...そうか」


謎に自信気なアタシの言葉に疑いも怒りもなく、彼はただそう言った。

信じたのかそれとも端から聞いていなかったのか、無口な彼からは読み取ることができなかった。


しばらく二人の間に沈黙が続いた。

すると突然、眼鏡をかけた生真面目そうな男が、資料を持ってこちらに走ってきた。


「クロコさん、悪魔課から情報が入りました」

「...今回の件についての見解は?」

「はい、今回の悪魔は相当厄介なようです。魔力を感知させないほどの技術を持った強力な悪魔と推測されるそうで...多くの人間の魂を集めるために大量虐殺を企ててるかもしれません」

「何故そんなに多くの魂がいるんだ?」

「長らく封印されていたのかもしれません。復活したての悪魔は他の悪魔よりも空腹らしいので」

「なるほどな...ありがとうリドル」

「いえ。あ、あと...」

「どうした?」

「カラレスさんとガラクさんと私は緊急の任務で呼ばれてまして、後は“魔女”に全部任せとけってカラレスさんが...」

「あいつは...!」


クロコはそう言いながら、携帯を取り出して電話をかけた。

恐らくというか...間違いなくカラレスにだろう。


リドルという男はこちらを見て、なんだか気まずそうな顔を浮かべたが、直ぐに切り替えて、にこやかな笑顔で話しかけてきた。


「あなたが“魔女”ですね?」

「ええ、そうよ」

「初めまして、私はリドルと申します。ユニークな名前で登録したんですね」

「アタシ登録はしてないわよ」

「...え」


アタシの言葉にリドルは驚いて分かりやすく距離を置いた。


面倒事には首を突っ込まないタイプね。

いい付き合いができそうだわ...。


「...話がついた。リドル達三人は人間課の案件に回ってもらい、俺と君で悪魔の捜索にあたる」

「あら、別に一人でもできるわよ?」

「本来これは我々の仕事だ」

「...あっそ」


アタシがそう言うとクロコは突然、腕まくりをし始めた。


「本題がまだだったな」

「まだ話すことがあるの?」

「あぁ、ここに来たのは他でもない。君の実力を知るためだ。二人で組むことになるのなら尚のこと、互いの能力値を把握すべきだからな」

「言ったはずよ、戦闘はしないって」

「それは単独での殺しにおいてだろう?今回は俺との協力任務だ。できなくてもやってもらうぞ」


その言葉にアタシは苛立ちと好奇心が湧いてきた。

だから、軽く鼻で笑って、なんの前触れもなく

、彼の胸に向かって容赦なく鋭い蹴りを入れてやった。


「できないとも言ってないわ」


自信気にそう言うと、クロコは見たこともない笑顔を浮かべ、こちらに手招きをして挑発してきた。


驚いた...結構良いとこ入ったと思ったのに。

直前で防いだ?いや、そんな素振りはなかったわ。

身体は見た目通り丈夫みたいね。

なら、手加減はしなくてもいいかしら?


アタシは激しくヒールの音を鳴らしながらクロコの元へと近づき、今度は強めに殴りかかる。

それも彼は容易に受け流した。

次の手もその次の手も捌くばかりで攻撃を仕掛けては来ない。


「アタシってそんなにか弱く見えたかしら?」

「何のことだ...」

「舐めていると足元すくわれるわ...よっ!」


そう言ってアタシは膝を抜いて彼の足を絡めとるように蹴り払った...はずだった。

思い切り蹴ったにも関わらず、彼の足はビクともせず直立不動でその場に立っていた。


「...は?」

「足元が...何だって?」


クロコはそう言うと、低姿勢のアタシの体を思い切り蹴り上げた。

本当に人間なのか疑わしいほどの蹴りに、アタシの体は軽々と宙に浮いた。


「...ぐっ...かはっ...ちょっとは手加減しなさいよ...!」

「軽くしか蹴っていないぞ?」

「...あなたの方が悪魔なんじゃないの?」

「いいや、俺は生まれた時から人間だ。...さぁ、もう一本行くぞ!」


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