No1
俺の名前は雑賀 狛彦(さいか こまひこ)先日20歳になった。ちなみに(さいが)ではなく(さいか)だ。こう言うと戦国時代好きならピンとくる人もいるかもしれない。
和歌山県の紀伊半島を拠点とし鍛冶や林業などの工業、太平洋と瀬戸内海を結ぶ海運で漁業や貿易業も盛んに行った人々の共同体。
そして歴史に名前が上がる様になるのが雑賀 孫市(さいか まごいち)率いる戦国時代最強の鉄砲傭兵集団 「雑賀衆」(さいかしゅう)。
信長や秀吉をも苦しめるが、その強さゆえに最後は秀吉10万の軍勢と日本三大水攻めのひとつに数えられる太田城の戦いにて歴史から名前が消えることになる。
しかし商人や技能集団でもある雑賀衆は各地へ散り散りになりながらもコミュニティを維持し歴史の水面下で大きくなり始める。
そして俺の先祖がハントしてきた金銀財宝や技術で飛躍し、今や世界にも名前が知られる複合巨大企業のSAIKAグループへとのし上がった。
そんなSAIKAグループのトップがこの俺 雑賀 狛彦なのである。だが一般の社員や世間一般の人達はその事を知らない、知っているのは上層部と一部の人達だけである。
俺がグループの経営や方針に口を出すことはない。素人の俺が出来る事はないからだ。上層部に任しているほうが会社は回るに決まっている。そんな奴がなんでトップなんだと思うだろう。
それは先祖から受け継がれている俺の仕事が表に出る事はないトレジャーハンターだからだ。
今のトレジャーハンターは金銀財宝を探すことじゃない、お金はSAIKAグループが稼ぐからだ。求められるのは未知の動植物であったりオーパーツのオーバーテクノロジー・超古代文明のロストテクノロジー等々を発見し持ち帰る事だ。
それをSAIKAグループが世界各国からスカウトや引き抜きにより集められた天才研究者達が解析し技術化させることにより莫大な利益を生む革新技術となる。これこそが雑賀衆からのし上がった所以である。
そんな俺は今……
「コマ、起きて下さい」
「もうすぐ目的地に着きますよ」
「ああ、おはようアリア」
大阪は河内長野市に向かう愛車の軽ワゴンで爆睡していた。車の中は俺一人、誰が運転かと言えば自動運転だ。それを制御しているのが俺の横で浮かぶキューブ、6面体の色を揃えるパズルより少し大きめで水銀色をしていてゆっくりと回転している。
このキューブが俺の知識の先生でありブレインであるパートナー、マザー・アリア。
キューブは端末で本体は、先代達がハントした遺物を基に年月と莫大な予算をかけ開発した光量子コンピューターで創られたアーティフィシャル・インテリジェンス通称AIの人工知能だ。
~アリアのひとりごと~
ごきげんようアリアです、あらすじ以来ですね。
さて今回は量子コンピューターについて少しお話します。
1980年代から発想、考察を経て技術力も上がり2019年にアメリカが当時世界最速のスーパーコンピューターでも1万年かかる計算問題を3分20秒で解くことに成功したSycamoreプロセッサ。
2020年には中国が九章を開発し学術雑誌「サイエンス」にて発表。
2021年に日本で光子を利用する光量子コンピューターの基幹技術「スクィーズド光源」を開発・発表をし、実用化すれば従来の量子コンピューターに必要だった大規模な冷却システムが不要となる。
各国開発にしのぎを削っているが2022年でも影響力のある成果は出せておらずまだまだスーパーコンピューターの方が利用価値が高い。