20180528_南伊豆04
誰か読んでください。
こちらのベテラン竿に合わせた両軸リールは、実はあまり使っていない物になります。袋の番号「石04」。あたしの石鯛用リールの4番目。二大メーカーS社の品。中古品コーナーで見かけて購入した物です。S社のスピニングリールは家にゴロゴロしていますが、両軸リールとしては初めて買ったS社製。
何年も前から出ているモデルで太い糸が十分巻けるスプールの大きさがあります。イシダイ用としてはドラグ力が低目だけど、欠点らしい欠点がない。
だけど、使い慣れたA社のカウンターなし両軸リール「石01」、Dブランドの石鯛用カウンター付きリールの「石02」や「石03」などと使い勝手が違い、何となく使わなくなっていきました。
でも道具は使わないと慣れない。
壊れた。予備はあるけど使えないでは、どうしようもないでしょう。
初任給で新しく買った「石05」の巾着袋を作っている時、ふとそう思いました。だから、今回は「石04」。一応、数回は使っているからデビュー戦ではありません。
で、と。
右斜め前方、水深が浅くなっている高根に向けて、最初は真横に70メートルほどを投げ入れた。高根全体を探るためです。
竿をシャクったり、少しずつリールを巻いたりして、底の様子を探る。これを底取りと言います。
なお「底取り」の細かい定義は釣りの種類によって変わります。底物釣りでは地形を探ることと思って下さい。船釣りなどでオモリが海底に着いたことの「底立ち」、ルアーが底に接触することの「ボトムを取る」と同義で使われたりします。
2投目。
見た目より海中の潮の流れが速い。オモリはこのままで良いでしょう。80号の数は少ないから、4回根掛かりしたら、必殺オモリ2つテープ止めになるけれど。あれをすると、ゴムチューブを被せた状態でも根掛かりしやすくなるから嫌いです。
少しずつ投げる方向を左へ、地方から遠ざかるように変える。3投目、4投目はピンと来なかった。
5投目、途中上がって急に落ちる感じがあった。ここか。直線距離で60メートル? カウンターを見ると58でした。
それから周囲の底取りを更に幾度か繰り返しました。2度ほど根掛かりしそうになりましたけれど、軽く横にそらすだけで外れた。
投げ込む最初のポイントを決め、竿を上げる。臨時竿置きにセット。
別のピトンと竿置きを出して、投げ込むポイントに対して良い位置に割れ目を探します。
理想より横40㎝、縦80㎝ほどずれるけど、隙間を発見。ピトンを挿してみる。少し緩い。まずはピトンの頭をハンマーで打ち込みます。ピトンと穴の隙間に別のハーケンを2本打ち込んで、更に割り箸を食い込ませて補強。蹴飛ばしても倒れないくらいに固定しました。竿置きをピトンの頭にセット。
ベテラン竿の「石竿2号」をそちらへ移して、次の道具へ。
新人選手「石竿6号」のワッペンを付けた竿袋を取り出し組み上げます。新人はショップで見つけた中古品。ただし、2017年発売の最新モデル。製造元は大分県のOEMでも作っているR社。
穂先が折れた欠損品で安かった。でも、それ以外は擦れ傷一つない美品。
店員さんに聞いたら、前の持ち主は購入してすぐに無理をして折ったらしい。修理を勧めたのだけれど、これが欠陥品なんだと言い張って無償交換を吹っ掛けてきたとのこと。道具の扱いが悪くて、壊してはクレームを入れてくる有名人だそうです。
さんざん文句を言われて中古で引き取ったのだけれど、店側が穂先を替えて出品するとクレームを入れられそうで怖いとのことでした。他店舗に回してもクレームを入れてくるかもしれないらしい。それはもう、出禁にしたほうが良いと思います。
・・・まあ、お金を落とす客は逃がせないか。代わりの石鯛竿をポンと買い直したらしいし。
おかげで激安価格で購入できました。この日に店頭出し、昼前にあたしが購入。利益は少なくするから早く店頭から消えてくれという値段。早い者勝ちですね。
すぐに大分のメーカーに穂先を注文したら、予想より早く届きました。あらかじめ店のほうで話を通してあったのかもしれません。穂先は定価ですけれど、それを入れても新品定価の半分に届かない金額で済みました。
部屋で竿を継いで、夜の町並みに向け突き出しながら、バルコニーでニヤニヤと振ったものです。
晩御飯を食べに来ていた弟から「不気味だから止めなよ」と言われたけれど。
・・・新しい竿を入手したら、誰でもやりますよね?
でも、入社前研修の為に実家へ引っ越し、研修が終わる直前に予想外の配属をされて、てんてこ舞いの忙しさになってしまって、底物釣りには行けませんでした。別の近場での釣りに無理矢理使うこともしていません。
地元猪鼻湖の岸辺や、こっちで投げ釣りが禁止でない近所の護岸で、投げの練習はしたけれど、今日がデビューです。
長さはこちらも560㎝と長め。3本半継なので、仕舞寸法が165㎝とまた長い。
牙の刀でイシダイの「やわら」。実はモデル名を見て柔道をやっている弟を思い出して衝動買いしたのが真実。引っ越しに備えて物は増やすまいと、ウインドウショッピングのつもりでしたから。
新人に合わせる両軸リールは袋の番号「石02」。使い慣れた二大メーカーG社Dブランドの50番台を着ける。名前にトーナメントとかZが付いて格好良い。
高校の時に伯父から譲られた旧シリーズの赤スプール。しっかり手入れしているから今でも万全。カウンターの電池切れでメーカー完全修理に出したら泣きを見たのは別の話。
狙いのポイント第5へ向けて空で振ってみる。変わらずの気持ち良いしなり。
先程と同様に糸を通し、天秤を結び、距離に合わせたオモリをつなぎ、ハリスは付けず、構える。
この岩から見て西側正面のやや右方向、80~100メートル先に向けて、底取りを始めました。
こちらは大きいオモリ80号ではなく、オモリ50号と少し重めなだけにしています。
ちなみに底物釣りでの50号はかなり大きい部類です。あたしは身体全体のしなりと竿の弾力で投げるため、30号や40号は中距離、重めの50号を遠距離で多く使います。
大体の感触で投げ込み、寄せる際にリールのカウンターを見て調整するのだけど、投げ込みが予想より20メートルオーバーしました。糸フケ(出すぎた分の糸のゆるみ)を引いても10メートルずれています。
110メートル先から竿をシャクりつつ手前に引きずってくる。砂混じりの砂利かな?
ちょっと左にずらして2投目。少しだけ力を抜きましたけれど、またオーバー。105メートルちょい。高低差でしょうか?
引きずると、コツンとぶつかる感触、ここからは岩の上? いいえ、それほど大きくない石に乗り上げただけみたいです。シモリの回りは細かい砂利か砂地のように思えます。おっと、今度こそ岩礁です。大きさもあります。
3回目の投擲。ピタリと決めたつもりが、今度は少し足りない。93メートル。
慣れたリールだからまだ良いけど、この竿は名前の通り柔らかいから、投げ込むのにコツがいります。竿の長さも元調子も同じだから「石竿2号」と同じ様に考えていたのだけれど、結構違います。
地元や自宅近くで投げの練習をした時は、もっと上手く投げられたのだけれども。まあ、練習の時とはオモリが違うし、リールも違います。さらに言えば湖の岸辺や足場が平らな護岸で練習したから、7メートルある沖磯の頂上では足の位置や姿勢も別にならざるを得ません。
積み上げた経験からもう少し上手く決められると思ったのですけれど。まだまだ未熟な釣り歴21年。
最初に思った通り、この岩から80メートル先に、良さそうな海中の岩礁があります。そこから奥も手前もしばらく砂が多い砂利な感じです。秋から早春だったら、ヒラメを狙えるかもしれません。しばらく沖磯からヒラメを釣っていません。底物のシーズンが終わったら、また来てみようか。
座っているこの岩に向かって、西側から潮が流れてきているから、シモリの頂上から少し下にオモリを置いて、潮が餌を岩から垂れ流れるようにすればイシダイを騙せるか?
釣りは、いかにして魚を騙すかという駆け引きが重要です。餌の中に針はないよ。糸なんかつながっていないよ。美味しい餌だよ。そう騙すわけです。特にイシダイは頭の良い魚だから、何の工夫もなしには釣れません。ワイヤーハリスを黒塗りにしたり、青く塗ったり、色々試行錯誤を重ねています。
正面沖を狙うのに適した位置へ2つ目の竿置きを設置し、最初の臨時の竿置きは回収しました。今回は初めて乗る磯だから慎重にやっているけれど、実は通い慣れた場所では底取りもあまりしません。変化が少ない釣り場が多いからです。ここらだと神子元島のいつもの釣り座がそうですね。
逆に通い慣れていても釣行の度に再確認が必要な釣り場もあります。例えば、神奈川県の三浦半島にある海岸は、海水浴場だった砂浜が消えてしまうくらい潮流が激しいから、投げ釣りへ行くと毎回海底の様子を確かめる必要があります。
残りの道具も準備。
次はタモ網の枠に網をセット。玉の柄を取り出して、セットされたタモ網枠を嵌め込む。この玉の柄だけは、すぐ拾えるように尻手ロープを付けません。竿と違って、戦いの最中だと、すぐに尻手ロープを外すことが難しいから。タモ網を使う時、片手は竿でふさがっていますからね。
玉の柄に尻手ロープを付けていた頃の話ですが、地磯でかなりの型が掛かって水際まで喜び勇んで降りていったら、尻手ロープが短くてビンと突っ張り、見事に転倒したことがあります。
左腕に大痣を作ったことよりも、あそこまで寄せた銀ワサをバラしたことが忘れられません。
ちなみに、尻手ロープを付けないようにした後は後で、玉の柄が波にさらわれたこともありました。
タモは予備があるけれど、バラした魚はそれっきり。
キリッと釣り仲間に語ったら、「長いロープにしろよ」と突っ込まれました。
だって、予想外の大物で、寄せられる場所が遠いかもしれないじゃん。
ロッドケースにはまだ竿袋が入っています。出来れば今日はお休みにしたい予備の「石竿4号」です。二大メーカーS社の石鯛竿で、手に入れて4年になります。
S社の公式動画で、名人や元ボクシングチャンピオンが使っているのを見て、次の日にリールを持ってショップへ見に行き、バランスも良いとすぐに買った品です。
S社製、翔んじゃうイシダイ。ハードな525㎝。伊勢やここ伊豆で自分記録トップテンの下位を幾度か上げている中堅選手。ハードでも食い込みが素晴らしい竿ですけれど、新人とは調子が違いすぎます。それに、新人デビューの相方はベテランじゃないと。
予備になったリールはDブランドの「石05」。初任給で先月買った一番新しいリールです。真っ赤な幻の覇王さまの50番台。今日のデビューは取りあえず止めておきます。先に買った「石04」に慣れるのが道理ですから。
石鯛竿は家にもう2本「石竿3号」と「石竿5号」があります。合計5本。底物を始めてまだ10年。それにしては数を持っているのではと思います。石鯛竿は、1本1本が高価だから、お金に余裕がある人以外、1本2本でしのいでいるのではないでしょうか。
そして実は、留守番の「石竿3号」、「石竿5号」があたしの主力で両エースなのです。何度も最高記録を与え続けてくれています。
現在の最高記録は「石竿5号」が南紀で塗り替えてくれたもの。第2位から第4位までの記録は「石竿3号」が打ち立てています。
不動のエースだった「石竿3号」は、6年前、釣りを知らない兄が買ってきてくれた竿。
初めて買った石鯛竿を不注意で壊して落ち込んでいた時、プレゼントしてくれたのです。兄のアパートがある千葉で竿とリールを買って、その足で三ヶ日の実家に来てくれました。
ナイロンの20号あたりが一緒だと完璧だったのに。
一応言っておきます。冗談ですよ。
前に兄自慢のつもりでこの冗談を話したら、周りが一斉に引いてしまい、びっくりしました。「あんたは冗談を言うようには見えない」と怒られ、自分の仏頂面に落ち込んだものです。
「イシダイという魚の海での釣りを始めて、3年、いや4年の女の子にプレゼントする品を探している」
と店員に聞いて買ったそうです。
絶対、兄はショップに適当なことを言われて売り付けられています。まともなショップなら、使う人間の好みによって硬さや調子が違うことを忠告するでしょう。手持ちなのか置き竿なのか、南方宙釣り、ぶっこみ釣り、遠投釣りと、釣りのスタイルによっても好まれる竿が変わりますから。
例えば、チヌ釣りをする人へと言われて、ウキフカセ釣りを専門にする人なのに、カセ釣りの短竿を勧めますか? 例えば、アオリイカに凝っている人へと言われて、エギング命な人に、ティップランのロッドならともかく、ヤエン釣りの竿を持ってきたらどうなるでしょう。
成金ちゃんが彼女に格好つけてプレゼントするとでも思われたのかもしれません。その頃の兄は20代以上には見られなかったけれど、大学4年には見えなかったかも。老け顔ではなく良すぎる頭の出来が外ににじみ出ていて、年齢不詳な雰囲気があるのです。
まあ、高校生の妹に高価な石鯛竿をプレゼントする大学生がいるとは思い付かないでしょうけれど。
Dブランドの2012年春の新製品。2009年までDAI○Aはダイ○精工という社名でしたが、G社に社名変更しD○IWAはブランド名に切り替わりました。ブランド石鯛竿の共通名「まぼろしのぱおう」。MH〇24という今は消えたメタルチューンモデル。定価高い。その年の新製品だから、買値もそのままじゃないでしょうか。
セットでもらったリールも同じくDブランドの40H遠投。もちろん新品。定価高い。買値結構したはず。
お馬鹿なあたしは、お兄ちゃん大好きと安易に喜んだのです。高校に入ってアルバイトを始めていたから、お金の価値を知っているはずなのに。
兄が高価なものをプレゼントしてくれたと気付いたのは、兄が帰ってDブランドの広告を見てから。竿のランクを勘違いしていました。定価を見てコーヒーに激しくむせたことを覚えています。
あたしの好みからすると少々硬い竿でしたけれど、兄からのプレゼントを使わないなんて冗談じゃない。工夫して竿とリールに釣り方を寄せました。
この竿を手にしてからです。どんな道具でも工夫して使いこなすようになったのは。
新エース竿の「石竿5号」。実はこちらも兄に買ってもらった竿になります。3年前、21歳の誕生日プレゼントでした。
高2の終わりにくれた「石竿3号」で喜びすぎたせいか、兄は味をしめてしまい、それ以来、頻繁に何かと釣り用具を贈ってくるようになりました。
例えば、高校を卒業して上京し、勉強を教わりに兄のアパートに通っていた夏の終わり。出先で「糸巻き」を見つけたとスピニングリールを見せてきました。
巨大なスピニングリールを。デフォルメされたオモチャと言われても信じてしまいそうな大きさです。
「偉いね。一人暮らしできて」
顔が初孫に洋服を贈るお祖父ちゃんです。
ちなみに、家の祖父は、叔母いわく「引退した極道」な顔付きをしています。優しい祖父なのですけれど。
そんな祖父の若い頃にそっくりと評判の兄は、プレゼントする理由が思い付かなかったのかな?
まあ、本当は、5カ月間も勉強勉強で脳みそが耳から出そうになっていたから、慰めと言うか励ましで買ってきてくれたのだと思います。そう思えるようになったのはずっと後になってから。
本当にあたしは馬鹿です。反射神経だけで生きています。大人になってまで兄弟や祖父を心配させていて、情けない。ほんの少しだけでも考えようよ、あたし。
あの時の兄は「糸巻きを偶然見つけてね」と言い訳していました。仕事からの帰り道、ショーウィンドウに飾ってあったから、何の気なしに買ってきたと。
けれど、包装が前の「石竿3号」と同じチェーン店の物でした。場所を聞いたら、やっぱり当時の兄のアパートから車でちょいと走った最寄りの大型店。言い訳が変わり「走っていたら店があったからのぞいた」って、お兄ちゃん釣りしないよね。
アニメのお店とか本屋ならわかるけれど。まだ、良さそうだったからバイクとか車とか家を買ってきたというほうが兄らしいです。
竿の「石竿3号」とリールの「石03」に関しては、石鯛を釣る女の子へのプレゼントとして勧められた物をそのまま買ったと言っていました。
でも、このクジラでも釣りたいのかと言いたくなる巨大なスピニングリールは何でしょう?
箱のモデル名でまず鳥肌がたちました。2013年に発売されたばかりで、海水用を示すSWが付けられたシリーズ。それこそ高級石鯛竿が買える値段がするはずの最高峰モデル。縁がないからショップでチラ見する程度だったモデルです。
「キミは、こういう頭が動く糸巻きも使っていたろう? 何にでも使える糸巻きだそうだよ。大は小を兼ねるって」
勉強しすぎとは違う理由で頭が痛みます。頭が動くって。まあ、スピニングリールは道糸を均等に巻けるようスプールが上下します。間違ってはいません。
でも、釣具において大は小を兼ねません。このリールで豆アジのサビキ釣りやメバルのジギングをしたら腕がいかれます。こいつの番手(糸巻き量)は30000。三千ではありません。三万です。3000ではなく30000。当時、大きすぎてナンパネタになったくらいの大きさです。ちなみに女の子を針で引っかけて釣るのはナンパではなく人さらい。
やっぱり、高い品を売り付けられていました。重さも1㎏近くあって、使いやすいとは言えません。
汎用ならもっと小さな番手のリールです。メーカーによって同じ番手でも違うのだけれど、S社、G社Dブランド、A社のように、同じメーカー内なら糸巻き量は変わりません。2500番から4000番くらいの軽いリールが汎用として使いやすいと思います。これくらいの番手なら、有名メーカーでも安い品が幾らでもあります。
前から言っている通り、詳しい人と一緒じゃないと不必要な、高価なだけの道具を売り付けられてしまう鴨になると叱りました。もらう立場なのだから、礼だけすれば良いという友人もいますけれど、兄に無駄遣いをさせるのが嫌なのです。
だけど、兄は全然納得してくれません。誰か周りの詳しい人に聞いてみろと言い含めたのですけれど、「僕の知り合いには釣りをする人がいないから」と泣き言を返されてしまいました。
なので翌日、あたしが東京に持ってきていたスピニングリールを千葉まで運んで、見本として兄に見せました。当時のあたしのスピニングリールはS社がほとんどで、・・・今もそうですけれど。まあ、S社の4000番を3つ見せました。
全部汎用的に使っている物です。ちょい投げもブラクリ釣りもサビキもやります。これらでルアーも投げます。
大は小を兼ねるというのは、1000から2000番くらいが最適解な釣りで2500か3000、2500か3000番なら4000番を使うことを言います。不意の大物にも対応できますから。
全部4000番を使うのは、手に馴染んだ大きさだと、とっさの時に使いやすいという理由もあります。
見せた中で一番安いのは、小学校から使っている廉価モデル。ALIVI○というモデル名で、モデルチェンジを繰り返してずっと売っている人気作。意味はSpanish、・・・スペイン語でやすらぎだったかな?
紫ボディーが姉の瞳の色に少し似ていて衝動買い。S社製なのに5年売れ残ってモデルチェンジしてしまい、処分品となって、980円でした。雑誌を見ると、あたしが4歳の時、1998年のモデル。
高2で仕入れた中級モデル。母に呼ばれて行った名古屋で、時間潰しに入ったリサイクルショップ。そこのジャンク品コーナーにパーマネントやグリス固着で動かない状態で転がっていた物。一個500円とあったから買いました。
色々と絡まった糸を外して、分解して、曲がっていたベイルを叩いて整形。固体化していたグリスを掃除し、グリスにくっついて外れた部品をはめて、割れていたギアやハンドルノブを取り寄せて交換。高い油を注し、動作がスムーズになるまで調整、3カ月がかりで修理しました。
たぶん、新品を買ったほうが楽でした。モデル名「ULTEGR○ ADVANCE」のUL○EGRAの意味はわかりません。advanceは前進だけれど、商学部を出た今のあたしには前金に聞こえる。
19の時に入手した上級機種「TWIN P○WER」。都内、ではない、江戸川の向こうだから千葉県のフリマで見つけました。
これは、ひどく荒い扱いを受けていたたようで、一見ゴミ。1個100円のジャンク品バケットに入っていました。同じモデルが2つ。良く見て、何とかなりそうと思い2つとも購入。使える部分を寄せ集めてニコイチに。
ただ、スプール(糸を巻く部分)は内側の破損がひどくて両方使えず、安くて状態の良い中古スプールが見つかるまで半年くらいかかったでしょうか。
番手が同じなら大きさも大差なし。興味がない人には重さの違いくらいしかわからないでしょう。何時間も使わなければ高級品の良さはわからないはずです。
説得して、腰を抜かすような高価なプレゼントは防ぎたいと息五味ました。
・・・いきごみ、・・・意気込みました。
「ずいぶん傷だらけだね。大きくて綺麗な新品のほうが良くないかい?」
ところが兄は、逆にプレゼントへの自信を持ってしまいました。あたしは愛用品がボロいと指摘され少し泣きそうに。2つは再生品だけど、汚れは落としているのに。
兄に高ければ良い訳じゃないことを語っても、逆に説得されそうになりました。
「5万キロ走行の軽トラより新車の4tトラックのほうが良いだろう?」
兄に口で勝てるはずもない。
結局、ショップへ連れて行くことになってしまったのです。新品を見本にするなら文句はないだろうと。
次の週末だったかな?
知っている中で一番良心的な釣具店へ兄を連れて行きました。運転は兄ですけれども。
大物釣りにしか使えない大きすぎて高すぎる物とは違う新品。中学生でも買えるリールを並べました。
二大メーカー以外も並べます。安いリールに海外生産が多いことは問題ないのですけれど、同じモデルなのに個体差が激しいことが難点です。
前に釣り場の小さな釣具店で、聞いたことがないメーカーのベイトリールを買ったことがあります。ジギングしている最中に突如巻けなくなりました。というかハンドルが空回り。振るとカラカラ音がする状態。験が悪くて、番号も付けずに処分しました。
色とデザインだけで衝動買いするのは止めたほうが良いです。
無論、当たりを引くこともあります。友人はパチモノっぽい800円のリールでメーターオーバーを上げたのです。しかも、2年くらいは壊れなかったと聞きました。でも、あたしは運が悪いんです。
エントリーモデルを5つ並べても、色やデザインくらいしか違いがわからないはずです。
他にS社の中級品を1つ。あたしには十分高価ですけれど。
また、兄が買った最高級モデルの4000番があったので、ショーケースから出してもらって、それも横に。
都合7つ。釣り師なら一目で違いがわかるかもしれませんけれど、見た目は全部綺麗です。
カウンターに並べた中でわかりやすかったのが、Dブランドの2013年新発売のエントリーモデル。「世界の回転」という大層な名前がついていますけれど、釣具の名前としては派手ではありません。巻き上げがスカスカではなく、あらかじめオレンジのナイロン糸が巻かれているから、見た目も良い。新製品セール中で税込み4000円以下だったから、この時は本当に買おうか迷ったくらいです。
もう1つ。S社製の中級品も気になりました。これだけ小さく見えて、番手を確かめましたし、持った時の軽さに驚きました。XGモデルだからハンドル1回転ごとの糸巻き量も多い。S社のハンドルの巻き味もあり、最高級品に劣らない品。「征服する」「克服する」といった意味の名前も受験生向き。まあ、高校の時のアルバイト代1カ月分はするから買えませんけれど。
正直言って、兄は魚釣りに全く興味がありません。姉や弟は結構な回数付き合ってくれているのですが、あたしが子猿だった頃から飼育係。いえ、散歩させる飼い主。
おにーちゃ、つれてぃあ。みてみて。
自慢すると誉めてくれましたけれど、それ以外は隣で物静かに本を開いていました。あたしが3歳か4歳だとして、兄は7歳か8歳。ずっと後になって教えてもらったけれど、祖父の本棚にあったパール・バックの「大地」の英語版を読んでいたそうです。実家でちらりと見たけれど、1000ページ越えの重い本。
・・・7歳か8歳。小1か小2。枕になりそうな厚い本か。
あたしが小2の時は、・・・友達のスカートめくりをやりやがった男子を蹴り飛ばして、祖母が学校に呼び出されたことくらいしか覚えていない。いや、あれは1年の時でした。2年の時は、姉を囃し立てていた4年生を見かけて、ドロップキックをかまして呼び出されました。それがあたしの7~8歳。
よく、出来の良い兄を弟妹が妬むという話がありますけれども、兄との差は妬むとかそういう次元ではありません。この差があって妬める人は、少年野球の補欠だとしてもメジャーリーガーMVP選手を妬めます。
兄がリールを見聞する間、あたしは投げリールのコーナーを眺めていました。
気になるモデルがあるけれど、買いはしません。何しろ浪人生でしたから、よほど余裕のある時しか釣りに行けません。週1ですら難しく、東京都大田区の部屋から兄の千葉市稲毛区のアパートへ行く時に海の側を通り、何とか誤魔化していました。まだバイクには毎日のように乗っていたから耐えられたのです。
受験が終わったら、底物も投げも船もカゴもちょい投げもサビキもブラクリもキャスティングもジギングもエギングもやってやるぜ。
もう夏も終わりかよ。
そろそろ砂浜での投げ釣りが気持ちいいよな。ハゼやメゴチ。雨水でにごればイシモチ。夜釣りのマダイ、スズキ、アナゴ。場所によるけれどマゴチやメバル、アイナメも。頑張ればカレイやヒラメを探せるかもしれない。
受験が終わったら、まずは底物釣り。そう決めてはいても、季節の釣りものに気持ちが引っ張られる。
投げ釣りでカレイを釣るには、最低でも竿は2本出します。多い時には6本。
邪魔。
竿もリールもそれだけの数が必要ですけれど、投げ竿も投げ釣り用リールも足りないから、色んな道具を組み合わせます。できれば、遠投できるリールがもう1個欲しかった。
これは遠投に良さそうな投げ釣りリール。名前の「超空気」はわかります。○○エアロはS社のリールによくある。後ろの「浜の指導者」はともかく、「CI4+ 35」というのは意味がわからない。
無意識にリールを竿に付けた想定で投げ釣りの動作をしていると、兄から声をかけられました。
「キミ、ありがとう。教えてくれて」
振り返ると兄が微笑んでいました。納得してくれたようです。あたしは釣りのムックだけ1冊買って、店を出ることにしました。
冷やかしすみません。大学生になれたらあれこれ買いに来ますから。そんな言い訳を伝えられるほど口が上手くありません。
隣の兄もなにも言いません。こちらも納得したなら、あの超大型スピニングリールを返品してきてとは言いません。
だって、人からプレゼントされると嬉しいじゃないですか。ただ、勤め人を始めた兄の給与が思ったよりずっと低いことも知っています。兄の頭脳ならもっともっと高いお給料をもらっていると思ったのに。本当の収入源は株取引だと知っていても気が引けます。
あの大きなスピニングリールはしばし封印しました。ヒラメや沖釣りの先生が、元気になったら相模湾でマグロをやりたいと仰っていたので、それにお付き合いしてのデビューでした。
リールの大きさに先生もビックリ。
「仁美さん、ここで本マグロは難しいと思うわ」
先生、別に100㎏、200㎏のクロマグロを狙っているわけではないです。
釣れたのはカツオとキハダマグロ。数㎏程度だったから、ファイトを楽しむどころか、簡単に引き寄せ出来てしまい不満が残ったことを覚えています。
「キミ、コインパーキングから車を持ってきてくれないかな。僕はトイレに行ってくる」
兄から車の鍵を預かって、コインパーキングへ戻りました。知っていますか? 田舎と違って東京のお店には駐車場がないのです。
当時の兄の車も運転しにくいものでした。名前はMR1? MR3? そのような車。元はボロボロの中古車を同級生に「50万の借金の形に取られるから」と買わされた物らしい。消耗が激しかったから「走れる」よう整備を頼んだら、姉曰く「レーシングカー半歩手前」に改造されてしまいました。
一般人の走れるは、法規に合った、正常な走行ができる状態。走り屋さんたちの走れるは、「何人たりとも俺の前には走らせねぇ」な社会不適合者用の状態。
うかつにアクセルを踏めない車です。天下の「TOY○TA」車をこんなにしちゃって。
前に高速でうっかり加速させたら、速度計が振り切れてしまったくらい。体感速度で230は出ていた。アウトローみたいな姉たちのバイクを追いかけたのが間違い。
回転を上げると高校にいた族どもの直管よりひどい轟音が渋谷に鳴り響いてしまいます。エンストしない回転数でクラッチを繋いで、そろそろと移動。
後付けの計器が幾つか付いているけれど、あたしには何が何だかわかりません。兄が通っていた大学の部活に任せたら、こんなになってしまったそうです。数年前、兄自身が「普通に整備を頼んだはずだったのに」とぼやいていました。
お店が入ったビルの前で運転を交代。助手席に潜り込むと、兄が手提げの紙袋を寄越してきました。
・・・これは?
兄に渡された紙袋の中身は、実例にと見せたDブランドの汎用リールとS社の軽い中級品。更にあたしが眺めていたS社の投げ釣り用リール。
・・・あれ? プレゼントを回避する話がどうして?
あれ?
お店に連れて来る話になったのは、プレゼントしたい病の兄が張った罠だったようです。人から物を贈られて文句を言うものではありません。
汎用エントリーモデルは、4000番ありましたから、護岸や防波堤からのちょい投げ釣りやカゴ釣り、サビキ釣りなら問題なく、マアジの50㎝という大物も仕留め、少し無理すれば遠投できてマダイや青物だってやれた品。サーフルアーでのヒラメ、スズキ狙いにも使いました。
同じ4000番でも軽い中級品は、繰り返し投げるのが楽だったから、主にルアー釣りに使いました。基本的にフロロカーボンを巻き、スズキや青物、浜からのマゴチ、もちろんヒラメも。軽いからシモリのある場所での根魚に使ったこともあります。
今で持っている投げ釣りリールは、太糸との相性も良く、カレイ釣りやイシモチ釣りで遠投する時に重宝しています。投げ釣りにおけるシロギスの自己記録はこのリールを使っての夜釣りで達成したくらいに。投げ用リールではあたしの中で一、二を争う愛用品です。
ちなみに、兄が売り付けられた例のS社の30000番リールも、実は結構使っています。マグロ用リールだから、メーターオーバーの青物狙いのルアー釣りの時だけですけれど。PEの12号が400mくらい巻けますから、突っ走るマグロ相手でも楽勝です。パラオや沖縄の釣りでは、内心で兄に叱ってごめんなさいと謝りました。
兄を連れて行ったのは現在も行きつけの釣具屋。渋谷で見つけたショップの海釣り館という所です。上京してから今まで、釣具店は都内や神奈川、千葉にある何十軒かを見て回ったけれど、店員が親切で品揃えがおかし・・・、品揃えが良い店は、そこしか見つけられませんでした。親切な店は他にもありますけれど、なぜ置いてあると言いたくなる道具が普通に並んでいるのはここだけです。
渋谷と言えば・・・。
ん? 渋谷? 何が渋谷?
え~、あたしは「石竿5号」の話をしていましたか? そうです。話を戻します。
口下手で声に出す言葉は少ないのに、内側では思考があっちこっちに飛ぶので、たまに出る言葉が会話と合わないこともしばしば。多くの友人から不思議ちゃん扱いされています。
・・・3年前にも、誕生日にプレゼントしたいと言い張る兄を抑えられず、またも渋谷のこのお店に兄妹で行くことになりました。「石竿5号」は兵庫県西脇市ひらがな四文字メーカーの石鯛竿。磯釣りやアユ釣りでは人気が高い会社です。釣り針屋さんだと思っている人もいますけれど。
この年、2015年の新製品。が○石の最高峰。釣具で良くある雰囲気な名前。「大きい」「対する」だから、大物用といったところですか。遠投モデル540㎝。定価むちゃ高い。購入価格すごかった。
○ま石は他に持っていないから確かなことは言えないけれど、良い竿です。これ以上に投げやすい石鯛竿は他に知らない。
なお、渋谷のショップでは兄の評判は良い。何せ妹が欲しがる品なら高かろうが安かろうが買い与えるお兄ちゃんなのだから。しかーし、店長、あたしが来店する度に兄が一緒かどうかを期待するな。カミツブシ(割ビシのことです)1袋でも客でしょう?
それと、店長には残念ながら、今年の誕生日は釣り道具ではなかった。
包丁でした。
・・・お兄ちゃん、あたし、普通の出刃で良いの。
久々ですよ、包丁使いの練習にこんにゃくを切りまくったのは。久々ですよ、自分の研ぎに納得いかず、物に当たったのは。
青紙スーパーを名匠が打った本焼の大出刃包丁って、お祖母ちゃんだって使っていなかったくらいの代物ですよ。あたしは名料亭の板長じゃありません。
兄からの贈り物は、高性能な物が多い。道具に恥じない腕を振るえているか、不安になることがあります。
蛇足ですけれど、和包丁の素材で高級とされる鋼安来鋼と言います。青紙スーパーというのは、日立○属が安来工場で作っている最高級の安来鋼です。炭素混じりの鉄が炭素鋼、青紙は更にクロムやニッケルを含ませて硬度や耐久性を上げた合金。その切れ味から、柳葉、いわゆる刺身包丁に使われているのを多く見ます。
それこそ江戸時代から続く江戸料理で腕を磨いてきたあたしは、刺身、特に薄作りには、たこ引きを使っています。今は江戸料理屋でも江戸前寿司でも柳葉を使う人が多いけれど、あたしはたこ引きのほうが美味しく仕上げられるのです。
この切れ味に惚れてしまい、今はスーパーとは言わないまでも青紙1号か2号製のたこ引きが欲しくて、貯金を使うかどうか迷っています。
・・・どうしてこう、あたしは脱線するのでしょうか。
まだまだ続きます。