レイドと世界に迫る危機①
(俺は何で……あんなことを言ってしまったんだ?)
俺の言葉を受けて気絶したアリシアの身体を抱きかかえて自分の部屋に寝かせた俺は、改めてその姿を見つめ直す。
魔法で軽く洗い流した身体は傷こそ一つもなかったが、白髪に染まり切った髪の毛が彼女の今日までの苦労を現しているように見えた。
(こんな姿になってまで俺のところに……何があったんだ……何で来たんだ……色々聞きたかっただけなのに、何であんな言い方……)
自問自答する俺……だけど本当はわかっている。
少し前からアリシアのことを思うと、どす黒い後ろ向きな感情が湧き上がるようになっていた。
マナの話を聞いて裏切られていたんじゃないかと思ってしまった俺は、それまで必死になって努力してきたことや堪えてきたことが全て無駄になったような気がして……自分の人生を良いように弄ばれた気がして怒りを覚えたのだ。
それまで愛していたからこそ、その反動で俺はアリシアを……頭を振ってその先を考えるのを止める。
(違う……勝手な推測で決めつけるな……アリシアがそんな……アリシアは……どんな子だっただろう? 俺はこいつのどこを好きなったんだったっけ?)
初めて会った時、その美しさに感動して一目ぼれしたのは覚えている。
だけどその後も愛情が続いたのは、他にも理由があったはずだ。
(駄目だ……全く思い出せない……それにこの顔を見ていると、むしろ胸がざわつく……痛む……前はドキドキしてもどこか心地よくて……何より落ち着いて安心できていたのに……)
「んっ……はぁ……れ……レイドぉ……」
「……っ」
苦しそうに顔を歪ませて、寝言で俺の名前を執拗に呼ぶアリシア。
その様子に俺は本格的に胸が苦しくなって、息が詰まるような感じがした。
とても耐えられなくて、俺は逃げるように部屋を後にした。
「れ、レイド……どう、だった?」
部屋を出ると、廊下で座り込んでいたアイダがすぐに話しかけてくる。
他の人たちも階段や一階の椅子などに座りながら、こちらを見上げている。
誰もかれも心配そうだったり不安そうな顔をしていて、だからこそ安心させようと軽く深呼吸して心を落ち着かせて笑顔を作り口を開いた。
「……怪我は一つもありません……極度の疲労でしょう……回復魔法を使えばすぐにでも起き上がるとは思いますが、アイダ先輩の言う通りちゃんと寝かせたほうがいいと思います」
「そ、それもだけど……その……れ、レイドは……大丈夫なの?」
「……大丈夫ですよ……何も問題はありません」
「け、けど……さっきまで凄い顔してたし……今だってその笑顔、無理してるでしょ? 無理は駄目、だよ?」
「……お見通しですか、流石アイダ先輩ですね」
あっさりと作り笑顔を看破されたことで、俺は皮肉にも自然に苦笑を浮かべることが出来てしまう。
「それで……なんだ……聞いていいのか?」
「あのアリシアって奴……元婚約者だって言ってたけど……その……」
次いでトルテとミーアがおずおずと尋ねてきて、俺はもう一度深呼吸してから語り始める。
「ええ……曽祖父が決めた婚約者で……だけど俺が軍学校の試験に落ちたことで、愛想をつかされて……婚約を解消したその日のうちにアリシアはファリス王国の第二王子と婚約した、と聞いていたのですが……」
「そ、その日のうちにですか……それでレイドさんは街を出て……ここに?」
フローラの言葉に無言で頷いてみせると、やはり皆が痛々しいものを見る目でこちらを見つめてくる。
もしかしたら話している最中にまた表情に出ていたのかもしれない……何せ俺にとって一番辛かった時の記憶なのだ。
実際に当時のことを思うだけで今も心がかき乱されそうなほどの苦痛を感じている。
(結構吹っ切れてたと思ったんだけどなぁ……アリシアの顔を見たら一気にぶり返したような……何で来たんだよ、今更……今頃になって……くそ……っ)
アリシアがもっと後に来ていれば、もしかしたら俺はもう少し余裕をもって相手ができたかもしれない。
アリシアがもっと早くに来てくれていれば、多分俺は恥も外聞も投げ捨てて縋りついていただろう。
それだけ彼女のことを愛していたから……そんな彼女へ勝手に失望して、見切りを付けて諦めようとしていたところなのだ。
正直自分でもアリシアにどんな感情を抱いているのか分からない。
未練があるような気もするし恨み辛みが溜まっているような気もする。
そこに愛情が残っているのかどうかすら分からない……胸が掻き回され過ぎて、この痛みが何の痛みなのか判断できないのだ。
それでも俺の言葉を聞いて気絶するアリシアを見たら、反射的に抱きかかえていた。
嫌悪感も何もかも忘れて、皆の言葉や視線すら無視して部屋へと運び優しく寝かせつけていた。
(ああ、駄目だ駄目だ……こんなことしている場合じゃないのに……しっかりしろ俺……皆を心配させてどうするんだ……)
「ぐぐ……はぁっ!! い、良いかなレイド殿?」
「むむっ……はふぅっ……こいつどーにかしてぇ」
「おおぅっ!! てーこうしちゃ駄目ですよぉっ!! 私の可愛いベイビィちゃんたちぃいいっ!!」
そこへ不意に助けを求めるような声が聞こえてきて、頭を上げてみるとエメラに抱きしめられたマキナとマナが胸に押しつぶされて苦しそうに俺を見つめていることに気が付いた。
どうやらこのどさくさに紛れて、気づかれないうちに抱き着かれてしまったようだ。
「……はは、エメラさんは変わりませんねぇ」
「だって可愛いんですよぉおおっ!! こんな可愛い女の子が傍に居たら抱きしめてチュッチュしてギュッギュして愛し抜かないと耐え切れませぇえええんっ!!」
「はぁ……ほんとーにエメラさんは空気読まないよねぇ……嫌がってるから止めてあげなよぉ……」
「話がややこしくなるから止めろっての……ほら離せってっ!!」
平常運転なエメラを見てまたしても苦笑を浮かべてしまった俺の前で、同じく呆れた様子でアイダとミーアがエメラから二人を引きはがしにかかる。
「あぁんっ!! 私のプリティベイビィイイっ!?」
「お前のではない……全く、エルフというのは普段は非力なくせにどうして私たちに抱き着くときだけこれほどの力を発揮するのやら……」
「本当に迷惑……困った奴ら……ほら、その辺に縛り上げて……」
「へーへー……ほらよっと……」
解放された二人の指示通り、ミーアによって近くの柱に縛り付けられたエメラは少し抵抗していたが解けないと分かると意気消沈したように俯いてしまう。
「あぁぁあ……私のベイビィちゃん達がぁああ……」
「……それよりもエメラさん、どうしてアリシアを連れてここにいらしたのですか? 一体どういう経緯があって……」
「あ、はい……ですがアリシアさんに会ったのはぐーぜんでぇええすっ!! ちょーど不審者のじょーほーを集めてここに戻る途中に未開拓地帯からフラフラと歩いてくるのを見かけたので声をかけた次第でぇええすっ!!」
「あのアリシア殿の外見を思えば彼女が噂に聞く不審者だったのだろうねぇ……しかし何故に隣国の公爵令嬢殿があんなところを歩いていたのか……?」
「ええとぉ……詳しくは聞けませんでしたけれどぉ、レイドさんに会いたくて来たみたいでしたよぉ……」
エメラの言葉にまたしても胸がうずくような気がした。
(今更何しに……って腹立たしいのか……俺を求めてくれたことが嬉しいのか……分からない……ただ、胸が痛い……息苦しい……)
何も言えないでいる俺にそっとアイダが近づいてきて、手を取ると近くの椅子まで引っ張り座らせてくれる。
そしてそのまま無言で寄り添うと、優しく背中を撫でてくれるのだった。
「……ありがとうございますアイダ先輩」
「よしよし……無理しない無理しない……何なら僕の部屋で休んでる?」
「いえ……気になるのも事実ですから……」
アリシアが何をしていたのか、どうしてああなったのか……聞けば聞くほど胸が痛むけど、聞かずにはいられなかった。
だけど自分からは口を開けないでいる俺に代わり、他の皆がエメラへと問いかけていく。
「けどよぉ、なんだってあんな姿でうろついてたんだか……」
「か、仮にも元とは言え婚約者のところへ向かうのにあんな姿で……よほど焦っていたんでしょうけど……」
「本当かどうかはわかりませんが、私と出会う少し前まで未開拓地帯でレイドさんの居るこのライフの町を襲おうとしていた魔獣の群れと戦っていたと聞きましたが……」
「なっ!? そ、それは本当かっ!?」
「ほ、本当ですよプリティベイビィちゃぁああんっ!! 魔獣も呼び出された魔物も全滅させたって言ってましたよぉおおっ!!」
新たな情報にこの場にいる全員が驚愕の表情を浮かべた。
(あ、あの魔獣が群れでこのライフの町を……やっぱりマキナ殿の言う通り……それをアリシアが……はは、やっぱり俺とはモノが違うな……そうか、アリシアがこの町を守って……)
また更に複雑な心境に陥り、俺は苦しむ胸を押さえてしまう。
そんな俺の背中を撫で続けて、優しく介抱してくれるアイダだが彼女もまた驚いたような顔をしてエメラと俺を交互に見回してきた。
「え……えっとぉ……そ、そんなに強いのアリシアさんって……?」
「つ、強ぇとは聞いてたが……あの魔獣の群れを単独で倒せるほどなのかよ……?」
「し、信じられねぇ……マジでそんなにヤバいのかあいつっ!?」
直に魔獣の強さを知る冒険者ギルドの三人に対して、アリシアの強さを知っている俺とマナははっきりと首を縦に振って見せる。
「……アリシアなら問題なく勝てるでしょうね」
「魔力も私並……力や体力も多分大陸でもトップクラス……それこそ噂に聞くドラゴンぐらいの強さじゃないと負けない……と思う」
「二人がそうまで言う以上は事実なのだろうなぁ……ここ数日急にこの付近から魔物や魔獣の姿がなくなったはそのためか……となると、このアリシア殿の身体に貼りついていた肉片の中には魔獣の物が含まれているかもしれないねぇ」
マキナは興味深そうに宿屋の床に落ちていた肉片や臓物を拾い集め始めた。
「しかし……本当にこの町を魔獣が狙っていただなんて……やっぱり俺を狙ってのことでしょうか?」
「アリシア様はそうおっしゃておりましたよぉおおっ!! はっきりとレイドの名前を口にして……それでこのライフの町にレイドさんが居ると分かったのだとも言ってましたからねぇええっ!!」
「まあそうだろうねぇ、他にこの何の変哲もない町をわざわざ襲う理由がないからな……しかしピンポイントでライフの町を目指してきたということは、この事件の黒幕には人類か或いは人類並みの知性と情報網を持った輩が居るということだろうねぇ……でなければ魔獣を倒したレイド殿の名前と居場所が知れ渡るはずがない」
「えっ!? ですが白馬新聞の記事を読めれば……」
「いいえぇええっ!! 確かにレイドさんのことは載せましたが、詳細な居場所は書きませんでしたよぉおおっ!! 変な連中が集まってきても困るでしょうからねぇええっ!!」
俺の疑問に対してエメラがはっきりと宣言して、実際に自らが持っているスクラップブックを開いて記事を見せてくれる。
(た、確かに載ってない……じゃあ魔獣たちはどうやって俺がこの町にいると知って……っ!?)
「つ、つまり……どういうことだよっ!?」
「要するにだ……向こうの親玉はこの白馬新聞の記事か、或いは他の方法で仲間の魔獣がやられたことを知ると何かしらの方法で情報を集めてレイド殿がここにいることを突き詰めた……しかしこれはただの魔物が多少賢くなった程度で出来ることではない……何せレイド殿を探し回っていたであろうアリシア殿ですら、魔獣に聞くまでレイド殿の居場所が分からなかったのだろう?」
マキナが確認するようにエメラへと視線を投げかけると涎を垂らしながら頷いて見せた。
「た、確かにそう言ってましたよぉおおっ!! はぁはぁっ!! 真剣な顔で考えるマキナたんも可愛いでちゅねぇえええっ!!」
「……まあとにかくだ、普通に聞き込むぐらいではレイド殿の居場所は分からないはずなのに魔獣たちは探し当てていた……つまりあの魔獣の背景にはそれを可能とする情報網があるということになる……そんな器用な真似ができるのはそれこそ人やエルフやドワーフか……とにかく知性ある人類が関わっていると考えたほうが自然だな」
「じゃ、じゃああの魔獣共が言葉を話したのって……そいつらが教えたからかっ!?」
「その可能性はあるし、或いは……いやこれはこれらの肉片を調べてからにしよう……それよりもだ、大陸全土を揺るがすこの事件に人が絡んでいるとすれば……これはまた厄介話になるぞ」
マキナが困ったような顔で俺たちを見回し、続けてぼそりと呟いた。
「これほどの規模だ、まさかたった一人でこなせるはずはないだろう……何よりレイド殿の情報を仕入れるにはある程度の立場にいる協力者の存在が不可欠だろうなぁ……どこの国の誰が関わっているのか……或いは我々の所属する何処かの機関の一員に内通者が居るかもしれない……幾ら警戒してもし足りないほどだ」
「……魔術師協会は大丈夫……多分……」
「果たしてどうかな……利益に目がくらんでいる連中が居るぐらいだからなぁ……勿論、私の所属する錬金術師連盟や冒険者ギルドも同様だ……白馬新聞社もな……」
「し、信用できるのは……この場にいる人間だけ……なのかなぁ?」
俺の背中を撫でていたアイダは不安そうに呟くと、ギュっとこちらにしがみ付いてくる。
今までのお返しに俺もその肩に手を伸ばして、安心させるように抱きかかえる。
「こう言いたくはないが、ここにいる人間とて裏を調べたわけではないから信用できると言い切るのは難しいな……尤も個人的に付き合った感想としてはレイド殿、アイダ殿、トルテ殿、ミーア殿、それにフローラ殿に……まあマナ殿も信頼に足る人物だとは思っているよ……誰もかれもお人好しで、人を傷つけるような実験に協力できる人とは思えないからね」
「わ、私はっ!? どうして私の名前が出ないのですかぁああああっ!!」
「……違う意味で信用できないからだエメラ殿……とにかくだ、当面の情報収集に関してはここにいる面々で行って行ったほうがいいと思う」
マキナの言葉に、皆が神妙な顔で頷いた。
(何だか凄い話になってるけど……俺もこの事件の関係者として解決に全力を注がないとな……アリシアのことで心を悩ませてる場合じゃ……アリシア……っ)
名前を思い出しただけで宿の部屋で眠る彼女の苦しそうな顔を思い出し、胸が締め付けられる思いに駆られる。
そっとそちらへ視線を投げかけるけれど、部屋のドアは閉まったままだった。
「……よしよし」
「……ありがとうございますアイダ先輩」
「えへへ……だって僕先輩だからね……」
そんな俺にすぐ気づいて頭を撫でてくれるアイダ……それだけで気が紛れるので物凄く助かっている。
「けどよぉ……こんな事件に進んで協力する奴が居るとは思えねぇんだけどなぁ……全ての国で魔物を暴れさせて……何の得になるんだよ?」
「それはまだ私たちがこの事件の本質を……黒幕の目的を全く分かっていないからではないかな? あの魔獣がどうやって生み出されているのかも含めて私たちはまだ何も理解できていないのだ……ただ魔獣や魔物を暴れさせているように見えるが、裏ではもっと意義のある研究に繋がっているのかもしれないからねぇ」
「け、研究ですか……?」
「或いは大陸全体を利用した大掛かりなプロジェクトだったりするのかもしれないが……とにかく協力する以上は何かしらのメリットがあるはずだが……これも含めて情報を集めないことには何も言えないのだ……そして、それにはやはりドーガ帝国の調査を行うべきだと思う」
「あっ!? そ、そう言えばそうでしたね……すっかり忘れていました……そ、そろそろ行きましょうかっ!?」
先ほどまで出発する気満々だったというのに、アリシアのことに気を取られて完全に忘れ去っていた。
それは一緒に出ていく予定のマナも同じようで、俺の言葉を聞いて慌てて椅子から立ち上がった。
(現在殆ど連絡の途絶えている……そしてそれ以前からも内部情勢が伝わりにくかった国……何より危険な魔物が本来住んでいる山に隣している唯一の国……確かに今回の事件の陰謀を企てるにはうってつけの立地だ……)
「そ、そう……レイドが行けるなら……行けるの?」
「れ、レイド……本当に大丈夫?」
「あの……アリシアって奴が目を覚ますまで残ってなくていいのか?」
「……」
皆の心配するような視線に俺は平気だと示そうと首を振ろうとして……動かせなかった。
(アリシア……俺はアリシアと話を……何を話すんだ今更……文句の一つでも言ってやる気か……だけど、どんな顔で会えば……会いたいような会いたくないような……ああ……アリシア……どうしてこんな場所に来た……何で俺なんかに会いに……アリシア……)
考えがまとまらなくて、ただアリシアのことを思うと胸が痛んで仕方がない。
だけど一度考えだすとアリシアのことが頭から離れてくれなくて、俺は胸を押さえて黙り込むことしかできなかった。
「……レイド殿が良ければここはアリシア殿が起きるのを待って、会話をしてから改めて出発するというのはどうだろうか?」
「ま、マキナ殿……何故ですか……?」
そんな俺を見かねてか、マキナが出してきた提案に何とか尋ね返すと向こうは淡々とした口調で答え始めた。
「それは彼女の能力が非常に優れているから……君たちの間の経緯は分からないからあえて無視して話を進めるが、アリシア殿が協力してくれるのなら編成を変えたほうがいいと思う……ドーガ帝国では今何が起きているのか、どんな状況なのかまるでわからないのだ……またこの町が再度狙われる可能性も考えられる……だから前衛も後衛もどちらもこなせて、どんな事態にも対処できるレイド殿とアリシア殿がドーガ帝国に向かい、遠距離攻撃が得意なマナ殿はこちらに残りギルドの面々と防衛に専念していただきたいのだ」
「っ!?」
その発言に思わず俺は息を飲んで、再びアリシアが眠る宿の扉へと視線を投げかけてしまう。
(あ、アリシアと二人で……俺とアリシアで……そ、そんな……お、俺は……だ、だけどマキナ殿の言葉は多分正し……ああ……町の皆の安全を……お、俺の気持なんかよりそっちのほうが……だけど……っ!?)
頭の中が混乱でぐちゃぐちゃになって行き、何を言うべきかもわからなくなっていく。
そんな俺を正気に戻したのは、ギュっと手を握り締めて引っ張るアイダだった。
「れ、レイドっ!! まだ決まったわけじゃないからねっ!! ちゃんとお話ししてそれから……そ、それともお話するのも辛いならやっぱり……っ」
「……ありがとうございますアイダ先輩……いつも本当にありがとう……でもそうですね……ちゃんと話し合わないと、ですね……」
俺を心配するように見上げるアイダ、また周りの人たちも同じように俺を気遣うような視線を向けてくれている。
さっきからずっとこうだ……いつまでもこんな良い人たちを不安にさせていてはいけないと思う。
だからこそ俺は、ちゃんとアリシアと向き合い話し合う覚悟を決めるのだった。
(そうだ、逃げてちゃ駄目だ……最初アリシアのところからは逃げるように俺は……そんな俺のところにアリシアはどんな思惑が在れど会いに来たんだ……来てくれた……なら俺も……ちゃんと会って……話を……っ)