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駆け出し冒険者レイド⑥

「へぇーっ!! すげぇじゃねえかレイドっ!!」

「はぁーっ!? こんなに儲かるのかっ!? 羨ましいねぇほんとっ!! いやすげえなレイドっ!! お前冒険者向いてるんじゃないかっ!!」


 先ほどの騒ぎの説明を聞いた二人が俺のことを羨ましそうに見つめてくるが、その声には羨望と尊敬が入り混じっているように聞こえた。


「いえ、多分偶々ですよ……偶然俺の魔法が良いほうに作用しただけでそんな大したことはしてませんから……」

「はははっ!! 謙遜するなってっ!! 初っ端からこんな成果上げる奴そうそういないんだから誇っていいぞっ!!」


 そう言いながらマスターが何かカードを手に持ってくる。


「ほら、お前の冒険者カードだ……まあどうせすぐ書き換えることになるだろうけど、名前が間違ってないか確認しておいてくれ」

「え、ええ問題ありませんが……すぐ書き換えるとはどういうことですか?」


 前にアイダが見せてくれたものとそっくりなカードに自分の似顔絵と名前が刻まれていることを確認しつつ、マスターの言葉を尋ね返すと俺のカードの一部を指さしながら答え始めた。


「ほら、似顔絵の横にEランクって刻まれてるだろ? 仕事を沢山こなしてギルドからの信頼が高まればこのランクが上がって新しいカードと交換になるんだ」

「なるほど……しかし、だとしたらしばらくはこのままなのでは?」

「いいや、わざわざお前を指定する専属依頼が出来た以上その時点で能力が認められていることになるからな……恐らくCランクぐらいまでは一気に行くはずだ」

「「「なぁっ!? Cランクぅっ!?」」」


 マスターの言葉にランクを抜かれる三人が揃って驚きの声を上げる。

 俺もまた想定もしていなかった事態に、頭が混乱状態で逆に何も言うことができない。


「そ、そんなにっ!? れ、レイド凄すぎだよぉ……うぅ……僕なんかここに所属して一年ぐらいたつのに未だにEランクなのにぃ……はぁ……」

「お前は誰でもできる薬草納入しかしねぇからなぁ……しかしマジか……俺もミーアも二年ぐらいかけてようやくランクアップしたばっかりだってのに……いきなり抜かれちまったなぁ……はぁ……」

「Cランクかぁ……あと一つ上がればちゃんとした二つ名がついて支部の垣根を越えてギルドの方から直接依頼されたりするBランクじゃねぇか……はぁ……」

「な、なんかすみません……」


 流石に三人の声に呆れが混じり始め同時にため息をつかれてしまい反射的に頭を下げてしまう。

 尤もそれでも三人の視線には妬みのようなものはなかった……あの街では毎日向けられていたからこそはっきりとそれがわかる。


(本当に良い人たちだなぁ……だからこそ追い抜くのが申し訳ないと感じてしまう……それも俺なんかが……)


「謝んなって、これはお前の実力で出した成果なんだから……しっかしすげぇな本当に……」

「偉そうに向いてないとか言って悪かったなレイド……」

「い、いえ気にしてませんから……」

「しかし確かに驚いたぞ、まさか魔法を使えるとは言えいきなりこんな成果を叩き出すとはなぁ……この調子で活躍してくれればこの支部の評判も上がって予算も増える……そうなれば所属してる奴らへの支援も分厚くなる……皆のためにも頑張ってくれレイド」

「は、はあ……まあ皆さんのためでしたら頑張……やれるだけやって行きたいと思います」


 やっぱり頑張るという言葉を口にしようとすると胸が痛む。

 それでもこの支部で俺を受け入れてくれた人々へ恩恵を与えられるというのなら、頑張ろうという気持ちがわいてくる。


「そりゃあ助かるっ!! 良い武器とか防具とか回復薬とか融通してくれるようになれば俺だってまだまだ上を目指せそうだしなっ!!」

「それはいいなっ!! 食料品とか酒とかサービスで出してくれるようになればあたしもお金を節約できるしなっ!!」

「お前ら現金だなぁ……まあ確かに一流のAランク冒険者が居るところなんざそう言うサービスを含めた福利厚生が物凄く充実してるって聞くけどなぁ……」

「ふっふぅんっ!! こんなすごいレイドを連れてきたのが僕なんだぞぉっ!!」


 皆の言葉を聞いたアイダは、自慢するように胸を張り始める。


「何でお前が偉そうなんだよ、おい」

「あはは……いや本当に感謝してますよアイダ先輩には……街から追い出されて行き場のなかった俺をこんな素敵な場所に連れてきていただいて……それに皆さんの心遣いにもとても救われています……本当にありがとうございます」


 心の底からの感謝の想いと共に、俺は皆に向かって頭を下げる。

 彼らが受け入れてくれなければ……そしてあそこでアイダに出会わなければ俺は今頃きっと行き倒れていただろうから。


「だ、だからそんな改まって礼なんか言わなくていいってのっ!!」

「そうだってっ!! あたしらは好きでやってることなんだからそーいうのやめろってっ!!」

「そうそう、そんなこと気にしなくていいの……同じ支部に所属してる仲間なんだからさ」

「仲間……そう、ですか……そうですよね……ふふ……」


 皆の思いやりを感じる言葉に、俺は自然と笑みを浮かべてしまうのだった。


(ああ、本当に……ここに来てよかった……皆さんの期待を裏切らないようにしないと……今度こそ絶対に……)


「それよりもレイド……約束忘れないでよ?」

「ええ、ちゃんと覚えていますよ……ランクが上がったらお手伝いする約束でしたよね? もちろん喜んで協力させていただきますよ」

「やったぁっ!! ありがとうレイドっ!! レイドがきょーりょくしてくれたらきっと僕もランクアップできちゃうよっ!! ふふふ、これはトルテとミーアを超える日も近いねっ!!」

「はぁっ!? そりゃずりぃだろお前っ!! レイドぉ、暇な時でいいからたまには俺にも手を貸してくれよぉっ!! いい店紹介してやっからよぉっ!!」

「あぁっ!? 抜け駆けは無しだろお前らっ!? レイドあたしにも協力してくれっ!! 時間がある時だけでいいからよっ!! そしたらアイダにはできねぇ色んなサービスしてやっからなっ!!」


 俺の背中に飛び乗って得意げにアイダは約束事を口にすると、トルテとミーアもまたこちらに来て俺の肩を揺さぶり始めるのだった。


「あ、あうぅ……わ、わかりましたっ!! やらせていただきますから揺さぶらないでっ!?」

「僕が最初に約束したんだからねっ!! 僕が最初だよっ!! それに二人ともレイドに変な事教えようとしないでよぉっ!!」

「あぁっ!? 何言ってんだお前っ!? そーいうお前こそレイドにべったり引っ付いて迷惑かけんじゃねえぞっ!?」


 俺を挟んで言い合う三人を見て、マスターはため息をつくと呆れたように呟くのだった。


「お、お前らなぁ……レイドも嫌なら断っていいんだぞ……そんなお人好しだとこの先苦労するぞ?」

「あ、あはは……御忠告ありがとうございます……うわっ!? だ、だから引っ張らないでくださいっ!!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 頑張れって言うな、って言われだしたのはいつからだろう。東日本よりは前かな。阪神淡路か。頑張ろう、でもそこまで違いはなさそうに思うんだけれど。まだトラウマは抜けないな。そう簡単にはいかないかあ…
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