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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

緋色の炎

作者: 月光皇帝

文字を書く練習というかリハビリを兼ねて書いたものです。

見たことある描写とかあると思いますが、まぁあの作品のオマージュ感が強いです。でも書きたくなってしまったので許してください。


消されていたらまぁガイドラインに引っかかったものだと思うので潔く消去されます。

小説投稿サイト『ハーメルン』様にも投稿しておりますのでもし見れなくなっていたらを探していただけるとありがたいです。


この世界は普通じゃなくなった。

よくあるネット小説のように、異世界が融合したとか、ダンジョンが出現したとか、そういうのじゃない。そういうものだったらどれだけ良かっただろう。



それは突然現れた。正体不明の謎の生命体。ホラー映画やゲームなどで出てくるクリーチャーとでも言うような化物が現れたんだ。



化物は人を喰うなんていうのはありきたりだと思う。けど、それが現実になったとき、それはありきたりという非日常の空想から残酷な現実に形を変えた。



警察が、自衛隊が、海外から軍まで出動し、僕らの国に現れた化物を殺すために武器を、兵器を使用した。が、一週間以上戦い続けても、化物を倒すことはできなかった。それどころか、化物に餌を与えるだけだった。



僕たちはみんな逃げた。化物に殺されて食われないために逃げた。けど、化物は少しずつ、一人一人捕まえて食っていく。そんな中、僕のクラスメイトが一人、目の前で食われた。



「早く逃げて! せめて君だけでm」



真っ赤な血すら一滴も無駄にはしないと、啜る音と、骨を砕く重低音。さっきまで一緒に走っていたのに、こんなにもあっさりと。怖かった。



幸い、怪物から逃げることができた。大切なクラスメイト一人の犠牲で、僕は助かってしまった。周りの人は皆『君だけでも助かって良かった』と生きていたことを喜んでくれた。



でも、あの時のクラスメイトの呼ぶ声が今でも僕の中で木霊する。その声が呼び起こしたかのように、僕の頭には最悪の展開がよぎる。大量殺人兵器とも言える兵器がある。それを某国が使うのではないかということだった。



可能性はゼロじゃない。それに某国だけじゃない。もし僕らの住むこの国の人間が全て化物に食べられてしまえば次は自分たちだと考える。なら倒せる可能性がある内に倒す。例え国一つが死んでも全世界から見れば必要な犠牲と割り切ってしまうかもしれない。



怖かった。怖くないわけがない。だって、僕も死ぬ。大切な家族も、友人も、みんな死んでしまう。怖くないわけがない。



ついさっきまで元気だった大切な人達が化物によって死ぬ。化物を倒すための犠牲として殺される。そんなの怖いに決まってる。今日という日まで僕は、いろんな人たちに助けられて、支えられて、過ごしてきた。



それをすべて奪われるのなんて・・・そんなの、怖いに決まってる。自分に何ができるかなんて考えなくてもわかる。何も出来ないんだ。物語の主人公のような力は持ってない。実は僕の『ご先祖は・・・』なんてご都合主義もない。だからといって何もしないという選択肢は、僕に無かった。



夜、避難所から抜け出して、僕は雨の中、未だ暴れまわる怪物の所に向かった。今も警察や自衛隊がどこかで戦っているはずだ。せめてそんな人たちの手伝いをしたかった。



それに、もしかしたら倒せているかもしれない。そんなありもしない希望を胸にしながら。



そして、それは当然ありえない。現実は残酷だ。目の前に広がるのは化物に食われている人だったナニカ。それを喰らう化物。



「ウワァァァァァァ!!!!」



それが僕の最後の記憶。そして、僕が  の瞬間だった。





――――◇――――





『次のニュースです。昨日出現した人外生命体36号ですが、同じく出現した人外生命体3号により撃破された模様です。尚36号による被害者は21名と発表されていますが、詳しくは不明です。続きまして―――』



「また3号が助けてくれたのね」



「当然です! だって3号なんですから!」


テレビから流れるニュースに母さんが口ずさみ、幼馴染の彼女がまるで自分のことのように喜んでいる。



謎の怪物。政府の発表で『人外生命体』と名付けられた化物が突如出現して三年。日本は健在だった。そして、崩れかけた日々も、前と同じとはいかないが戻ってきた。



奇跡とも言えるこの出来事には人外生命体3号が起こした奇跡だった。3号。それは僕らの前に突如として現れた人外生命体。1号は最初に出現したやつ、その後姿の違う奴が現れて2号と命名された。そして3号は文字通り3体目の怪物だ。



誰もがあんな化物が3体現れたとき、自分の死を覚悟した。けれど、3号は最初から1号2号と戦い始めた。とても戦いと言えるようなものではなかった。



戦い始めた3号だけど、二対一、更に3号は戦い慣れていないのかほとんど一方的にやられ続けた。けれど、何度も何度も立ち上がり、1号2号と戦い続けた。



そして3号の粘り勝ちだった。3号の拳が1号の心臓を貫き、2号の頭を砕いた。その結果二体は死に、3号だけが残った。その後3号は人を襲うことなく、どこかへと消えていった。



『人外生命体出現事件』と後に言われるこの事件は死傷者述べ1629人にも及んだ。が、同時にそれだけで済んだとも捉えることができた。すべて3号が出現し、1号2号を葬った結果だ。



3号はその後も出現し続けた人外生命体と戦い続けている。世間では『3号は我々人類の味方だ』とか『3号と協力するために対話をすべきではないか』などの多くの友好的な意見と『人外生命体はすべて危険だ』『いつ3号が人を襲うかわからない。倒せる時に倒すべきだ』などのその危険を危惧する意見もある。



ただ現状、3号はたくさんの人を救っている。理由は本人以外にはわからない。けれど人々は自分たちを助けてくれる。あるいは助けてくれた3号に対してとても好印象を抱いていた。



真悠まゆちゃんは3号を見たことがあるのよね?」



「はい!! あの時から私は3号のファンで味方なんです!!」



「あらあら、そんなこと言うと真雄まおが3号に焼いちゃうわよ?」



「焼かないよ。それより真悠、時間大丈夫なの? 今日朝早いんでしょ?」



「あっ!! ヤバイ!! おばさん私先に出ます!! 真雄くんも遅刻しちゃダメだよ!?」



「わかってるから早く行きなよ」



「いってらっしゃい」



「いってきます!!」



幼馴染、西崎真悠はそう言って飛び出していった。



「真悠ちゃん。最近やっと昔みたいに元気になってきたわよね。3号には感謝しなくちゃね」



「・・・そうだね」



真悠は人外生命体5号により、家族を殺された。その後彼女は僕らの家族と親しかったこともあり僕らと一緒に過ごすことになった。



でも当時の彼女は一歩間違えば死んでしまうんじゃないかってほど気力をなくしていた。同時に、家族を殺した人外生命体を恨み、必ず絶滅させると決意し、人が変わったようになった。



現在この国のは、人外生命体と戦うための人材を育成するための学校が急遽設立された。人外生命体の死体や残した物を回収、調査、研究することで、三年前にはできなかった抵抗する力を手に入れた。



けれどそれも所詮抵抗するまでの力でしかない。未だ人類が人外生命体を倒すことは出来ないんだ。倒せるのはいま現状、同じ人外生命体だけ。



けれど無いよりはマシということで設立された学園には年齢問わず多くの学生が毎年のように入学していく。



ある人は真悠のように人外生命体に恨みを持つ人、ある人誰かを助けるために戦うことを決意した人、ある人は人外生命体と戦うことで得られる手当を求めて。



皆人外生命体によって何かを奪われ、それを埋めるために、もしくは取り戻すために、戦うことを決意した。そしてその中には幼馴染の真悠もいた。話によると真悠は学園でも優秀な成績で既に実戦経験も積んでいるという。



一昔前の僕なら『ラノベみたい!』とはしゃげたかもしれない。そして真悠と同じように学園に入学して、物語みたいな学園生活を送ろうとしてたかもしれない。けど、僕はもうそれを選ばなかった。いいや、選ぶわけにはいかなかった。



「ご馳走様でした。僕も行くよ」



「お粗末さまでした。行ってらっしゃい。辛くなったら早退していいからね?」



「ありがとう。行ってきます」



僕も一応学校には通っている。さっきの戦うための学校じゃない、普通の学校だ。けど、僕はあの日のトラウマが急に過り、かなりの頻度で早退させてもらっているか、遅刻している。



学校側も友人も皆僕がトラウマを持っているという事は知っているためそれを咎めたりしない。それどころか既に退学になってもおかしくないのに今でもこうして学校に通い、進級までさせてもらえている。



家を出れば僕と同じように学校に向かう人やサラリーマン、散歩中の老人が当たり前のように生活している。けれどその一角では、未だ人外生命体による被害で崩れた建物や残骸がいたるところに見える。



それでも皆必死に生きている。僕はそんな日常を過ごせる人たちを見るのが好きだった。当たり前の日常に為に生きようとする当たり前の生活。人の声。当たり前がこんなにも幸せなんだと、美しいんだと思ったから。だから僕は・・・



「・・・うっ・・!! 朝からかよ・・・!!!」



学校まであと10分ほどのところで、頭の中に突如として響く音、そして浮かび上がる人外生命体の姿。まだ警報も出ていない新しい人外生命体だ。これは学校にはいけないや。ガッ国に向かうルートから真逆の道へ、僕は進んでいく。





――――◇――――





――――◇――――

『人外生命体』

・人を食らう蒼い血を持つ謎の生命体。現在まで36号まで確認されている。人を捕食する他に人類では不可能な身体能力を有しておりパンチやキックなどで簡単に構造物建造物を破壊したり、当時の人類が持ついかなる兵器も通じない生命力を持つ。また、個体によっては更に特殊な力を持つ個体も確認されている

――――◇――――

『人外生命体3号』

・人外生命体でありながら唯一人類に対して危害を与えていない個体。また、人外生命体が人を襲おうとするとそれを庇うように行動を起こすことから、唯一我々人類が友好的な関係を築ける可能性がある個体。 真っ赤な体と全身に走る銀色のライン。そして美しい真紅に輝く瞳を持つ。

現段階で判明していることは個体としての能力として緋色の炎を操る。この炎は事故の欠損修復や、他の人外生命体の能力により人類が受けた未知の死傷に至る傷を修復する能力を持つ。このこともあり、我々人類は3号との接触、あるいは鹵獲が人外生命体との戦いにおいて大きなものになると確信している。

しかし残念なことに上層部や各国首脳、さらに現場世論の意見が大きく異なっているため、3号に対しては現状アプローチをすることは禁止されている。

――――◇――――

『西崎真悠』

・国立自衛学園の二年生。人外生命体出現時に両親を失い、近所に住んでおり、幼なじみである『覇堂真雄』の家で共に生活するようになる。両親を失った当時は生きる気力さえ失っていたが、同時に自身の中に家族を奪った人外生命体に憎悪を抱くようになり、自らの人生を『人外生命体の殲滅』の為に使うと決意。

『自衛学園』入学当時は死に急ぐかの様な戦闘訓練や実戦参加などを繰り返していたが、彼女を動かす動力故か、はたまた元より天賦の才があったのか生還と好成績を残し続けていたため、誰も彼女を咎めることができなかったという。

しかしある日を境に彼女は変わった。本来持つ周囲に溶け込みムードメーカーとなる明るい感情を取り戻し、学園での友好関係をすぐさま広げていった。そしてその理由を聞くと彼女はいつもこう答えた。

『私が戦う理由をもう一つ見つけちゃったんです。その為に私は自分の足で、憎悪だけじゃない私の全部で戦うことを決めたんです。』

 総答えた彼女の表情は乙女であり、彼女に対して恋心を抱いていた男共をことごとく打ち砕いた。

――――◇――――

『覇堂家』

・母『覇堂美咲』、息子『覇堂真雄』の母子家庭。父『覇堂奏太』は消防士だったが、数年前に起きた火災事故で取り残された人を救うために命を落とした。残された家族は最後まで『誰かを守りたくて、助けたくて消防士になったんだ』と話していた父が、最後までその意志を貫いたことを誇りに思っている。

――――◇――――




『人外生命体37号の出現を確認。迎撃班は装備を整え至急出動せよ。繰り返す―――』



学校に着いた途端に鳴り響くアラート。また新しい人外生命体が出現したんだ。また誰かを殺して食べるために・・・



今日は日直だったから早めに学校に来たことが幸いした。いつもどおりに家を出てたら出動に間に合わなかったかもしれない。日誌を受け取って職員室を出ようとしていた足を止めて、先生に出撃の許可をもらおう。



「先生! 私出ます!!」



「自分も出撃します! 先生!」



同じ日直だった各務原くんも同じ思いみたい。各務原くんは私と同じく家族を人外生命体に殺されている。だけど私と違って、各務原くんは自分と同じような人がこれ以上出ないために戦っている。



親を殺した人外生命体を根絶やしにするために戦う私よりもずっと素敵だと思う。



「西崎、各務原・・・しかしお前たちの装備は先日の35号との戦いで損傷し整備中だ」



「なら予備でも構いません。お願いします先生!」



「自分もお願いします!」



「・・・わかった。ただし無茶はするな。準備が整いしだい人員を送る。絶対に死ぬな」



「「はい!!」」



私が通う学園、『国立自衛学園』は人外生命体と戦うために設立した新しい学校だ。年齢問わず戦う意志がある人を集め、人々を人外生命体の危険から守るために戦う兵士を育成する場所。



『未成年が―――』という意見も多数あったけど、私たちにそんな事を言う余裕はなかったし、当時安全地帯に閉じこもっていた人たちの意見なんて聞くつもりはない。



結局当時の政府と、被害者から多く寄せられた署名により入学する年齢は問わずということになった。当然未成年だからといって入学するなら容赦なんてない。



厳しい授業と訓練をこなし、戦い、守る知識と技術を学んできた。ここに来た人はみんな自分の命をかけてでも戦う意志を持つ人たち。世間一般的には『特殊人外生命体戦術兵』とも呼ばれたりする。



例え倒すことができなくても、私たちは、私は戦えるんだ。そしていつかは、あいつらを倒すことだって出来るようになるんだ。



『本部より総員に通達、現在人外生命体37号は、同じく出現した人外生命体3号との交戦を開始したと通報を受けました。迎撃班は現地到着後、37号への攻撃を優先せよ。繰り返す―――』




「3号・・・」



人外生命体だけど、私たちのことを助けてくれる唯一の存在。そして今日まで出現している人外生命体をすべて倒している個体。彼が死ぬ前に、倒されちゃう前に必ず私たち人類が倒せるように成らなきゃいけないんだ。





――――◇――――





――――◇――――

『特殊戦闘戦術兵装』

・俗に言うパワードスーツ。人外生命体に人類が抵抗するために、人外生命体の死骸や排出物などを研究、調査することで開発された兵器。全身を覆う装甲は瞬間的に高圧電流を流し、人外生命体からの拘束から逃れ、特殊弾頭と専用のライフルを所持している。しかし現在の段階では決定打になるものではなく、また装甲による防御面でもしっかりと防げるというにはまだ足りない。

――――◇――――

『国立自衛学園』

・正式名称『日本国立特殊災害自衛官育成学園』。突如出現した『人外生命体』と交戦し、大勢の自衛官が命を落としてしまったことにより、不足した自衛官の補充、及び『人外生命体』との戦いを主とした特殊部隊育成のための学園。

 常に入学生を受け入れており、二名以上の本人署名があれば男女10才からでも入学が可能。当時は様々な批判が飛び交ったが、それは同時に、日本という国がそれほど追い詰められてしまったことを意味していると後の『人外生命体4号』の出現で嫌というほど理解させられた。

 学生たちは第一線で戦うために厳しい訓練と様々な状況に対応するための知識を養うため日々切磋琢磨している。『人外生命体』との交戦以外では『人外生命体』によって日常を壊された人々のために炊き出しや仮設住宅の設置など、自衛隊と同等の作業を行っている。

――――◇――――





――――◇――――




それはあまりにも唐突な出来事だった。

全世界全人類が震撼するほどの、あまりにも大きな出来事。そして人類の希望が消えたことを意味していた。



『人外生命体3号、46号との戦闘により死亡が確認』



いつかはそうなってしまうと誰もが想像していた最悪の事態。

3号は決して強い個体ではなかった。人外生命体との戦いは寧ろ『よく勝てていた』と思えるほど劣勢な戦いばかりだったから。



なんどやられても、なんど傷ついても、時には手足を失っても、3号は咆哮を上げて立ち上がり戦い続けていた。誰が見たって命を削っている戦いだってことくらいわかっていた。


けど、人類はその直前、史上初めて、人外生命体に対して効果がある特殊な兵装『緋炎弾頭』の開発に成功した。



人外生命体の体内に特殊な薬剤・・・つまり猛毒となりうる物を注入する専用の弾丸。そしてそれを発射するためのライフル。45号との戦いにて、初めて使用することになったそれは、初めての実戦投入で大きな功績を残した。



勿論、それも報道で大きく取り上げられ、人類はようやく反撃の機会を得たと世界各国が喜んだ。けど、それは3号がいたからこそ完成した、いいや違う。3号がもたらしてくれた代物だった。



人外生命体の持つ能力で犯され、死ぬ運命を突きつけられた私たち人類を救ってくれた3号の能力。緋色の炎。それは人を傷付つことなく、人外生命体だけを、その能力だけを害し、焼き払っていた。



助けられた人々、緋色の炎に触れた人々の血中には、人体には影響がない謎の細胞と抗体が作り出されていた。それを採取し研究した結果が『緋炎弾頭』。人外生命体を外傷ではなく、血液から攻撃する兵装。



3号なんてもういなくてもなんとかなるかも知れないなんて考えを持ち始めた人たちが出た瞬間だった。3号最後の瞬間を直接見た人はいなかったけど、到着した部隊の人が目撃したのは、3号の死骸”と”人だったものを一緒にを食べていた46号だったという。



そして、3号と一緒に食べられていた人は、私に3号死亡以上の悪夢を突きつけてきた。



「ぅぅ・・・・あぁ・・・・・ぅぁああ・・・!!!!」



「・・・・・っ!!」



ここにあるのは唯一無事だった右腕だけ。それ以外の部位は46号に食べられたんだと、状況証拠が物語っていた。そして残っていた右腕の血液が教えてくれたのは、大切な彼の名前だった。



―――今日、お前の誕生日だろ? 帰ってきたらケーキでも買いに行くか。



朝出かけるときに、私にそう言ってくれた彼の顔を、声を、もう聞くことはない。おばさんは地面に崩れ落ちて、泣いてる。



理解できてしまう。でも理解したくない。私だって、命をかけて戦ってる。だからいつか死んじゃうかも知れない。でも、彼は違うでしょ・・・



トラウマで体調を崩しがちだった彼、それでも毎日元気をくれた彼。自分が一番辛いはずなのに、私とおばさんにいつも元気をくれた大切な人。今日の夜は三人でケーキを買ってきて私の誕生日をお祝いしようと言ってくれた人は、もういない。



「どうして・・・どうして私の大切な人を奪っていくのよ・・・!!! 返してよ・・・返してよぉ・・・・・・私の・・・わたしの・・・・・・!!!」



唯一残ってくれた私の大切な人。小さい時に『ずっと一緒だよ』って約束したのに・・・約束・・・したのに・・・守りたかった。守るために戦ってきたのに、私は・・・私は・・・!!!



「真悠ちゃん・・・ぁぅ・・・だ・・・大丈夫・・・大丈夫だから・・・ぅああ・・ぅぅ・・・」



「・・・っ!!」



過呼吸で冷たくなったおばさんの体。でもその中に感じる暖かいモノが私を包み込んでくれた。一番自分が辛いはずなのに、私のことを抱きしめてくれた。



そうして考えてしまう。真雄くんを失ったおばさんはこれからどうなっちゃうんだろうって。もしも、もしここの感情がおばさんを覆い隠してしまったら・・・そう考えてしまった。



震える喉を抑えて、一生懸命口にした。



「・・・おばさん・・・私、真雄くんの分まで生きるから・・・!! おばさんの事、真雄くんの分までおばさんと一緒にいるから・・・!!! だから・・・だからぁ・・・!!!」



「うん・・・!!! うん・・・・!!!」



その日、私たちは一晩中、泣き続けた。この先泣く事が出来なくなってもいい。だから、今日だけは泣かせて。





――――◇――――





――――◇――――

『緋炎弾頭』

・人類が開発に成功した『対人外生命体専用弾頭』。制作には『人外生命体3号』がこれまで救ってきた人々の体内で生成された『3号抗体』を使用している 『3号抗体』を媒介し、特殊な弾薬に装填することに成功したこの『緋炎弾頭』は実戦投入された『人外生命体45号』との戦闘において大きな功績を残し、人類が人外生命体に反旗を翻し、生き残る可能性を大きく飛躍させた。

――――◇――――

『緋色の炎』

・『人外生命体』はその個体によって様々な特殊能力を持つことがこれまでの戦闘によって明らかになった。『緋色の炎』と呼ばれるようになったこれは『人外生命体3号』の能力である。

 この炎は熱量を持っていないが、欠損した『人外生命体3号』の自己修復能力であると、これまでの戦闘で明らかになっている。また、『緋色の炎』は人類に対してもまさしく希望の炎となった。この炎に包まれた人間は『人外生命体』の能力で負った傷に限り、瞬く間に修復する。これは『3号抗体』と後に呼ばれる特殊な細胞によって起きた奇跡であり、神秘の現象である。

 このこともあり、人外生命体3号は『人類に味方する唯一の人外生命体』として世間に大きく認知されている。

――――◇――――

『3号抗体』

・『3号抗体』は『人外生命体』の血液細胞に対して特殊な反応を起こし、消滅させる性質を持っていることが研究により明らかになった。

――――◇――――

『人外生命体46号』

・『人外生命体3号』を葬ったとされる新たなる人外生命体。蛇のような頭部を持ち、身体は人類と同じように見える。

3号を葬った瞬間は目撃されていないものの、部隊が到着した時の状況、さらに夥しい量の血液などから判断し、3号は46号によって葬られ捕食された可能性が濃厚である。また、現場には巻き込まれたと思われる一般人の右腕と血液が残されていた。鑑定の結果、右腕の持ち主は現場に近い高等学校に通う『覇堂真雄』氏17才であることが判明した。

――――◇――――





「撃てぇっ!!!」



人外生命体46号は再び出現した。悲しむ時間もくれない。こっちの事情などお構いなしに、奴は現れて人々を襲っている。私も出撃し、46号を倒すために戦った。



真雄くんの敵を討つために。これ以上誰も泣かせないために。



真雄くんの弔い合戦と決意し出動した私の初戦は46号に大きな傷を与え、逃がしたしたものの、致命傷になりうる攻撃が出来た。次に出現したときは絶対に殺すと決意した。



同時に、世間的には3号に頼ることなく、人外生命体を撃破一歩手前まで追い込んだ劇的な”勝利”だった。



これで戦える。次こそ倒してやる。なんて、そう考えたのが、私たち人類の甘さだった。



「ゥゥゥゥゥ・・・・!!!」



「クソッなんで効いてないんだっ!!?」



「まさか・・・奴らも抗体を作れるとでもいうのかよっ!!?」



「いいから撃て!! やるしかないんだ!!」



人類を襲う悲劇。逆転の切り札となるはずの『緋炎弾頭』が46号に対して効果を失っていた。あの時撃退ではなく、しっかりと殺していれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに。



「う・・・うわぁぁぁ!!!!」



「ばか!! 戻れ!!」



錯乱した部隊員の一人が単身突撃し、近接攻撃兵装『チェーンブレイド』で46号に斬りかかった。



46号は冷静にそれを避けて、武器を持つ腕に噛み付き引きちぎった。腕から吹き出る血を見て隊員はさらに錯乱を起こした。が、それも一瞬だった。



ゴギュリ



肉を喰み、骨を砕く音と共に、その部隊員はその命を落とした。46号は味わうように、こちらの攻撃をものともせずに”食事”を続けた。



「た・・・隊長・・・!!!」



「っっ!!!!!」



戦う私たちの心が折れる音が聞こえた。逃げろ。逃げろ。死ぬぞ。ありきたりであり、このあと起こる事実という名の警鐘が私たちの中で大きく鳴り響く。



初めて、死ぬと言う感覚を味わった初出撃の日以来、今までで最も大きく、最も残酷なものだった。助けて。助けてと、身体が振え叫びをあげている。



でも、もうこんな時に助けてくれた3号はもういない。



「あぁぁっぁぁああああっぁっぁああああああ!!!!!!!」



隊員の一人が逃げた。敵前逃亡だ。けど、それを皮切りに、隊員達が逃げ出した。ハッキリと突き付けられた人類敗北の光景が、戦う彼らの戦う心を砕いた。



「ゥゥゥゥゥ? ゥゥゥゥゥ!」



それを見て、46号はとても楽しそうだった。とても楽しそうに、残っていた”肉”を一口で飲み込んだ。そして、私たちに向かってそれはそれは気持ちがいいとでも言うような笑顔を向けてきた。



「・・・け・・・な・・・・・ふ・・・ける・・・・・」



「ゥゥゥゥァ?」



「っっ!!! ふざけるなぁっ!!! お前は!! お前たちは一体何の権利があって私たちの大切な人を殺すんだ!!! 返せよ!! お前たちが奪った物を!! 私の大切な人を!! お父さんを!! お母さんを!! 私の真雄くんを返せよ化物っ!!!」



「西崎っ!!」



隊長の声が聞こえた気がしたけど、そんなことどうでも良かった。コイツだけは絶対に殺す。例え私に何があっても、コイツだけはなんとしても倒す。



弾をばら撒きながら『チェーンブレイド』を展開して斬りかかる。回避されても反撃されないように弾をばら撒きながら、何度も何度も斬りかかる。



46号は面白そうなものを見るように笑顔だった。弄ばれているのは明らかだったけど、それでもいい。こいつを殺せるならどんな恥でも、どんな屈辱だって受けてやる。



「ゥゥゥゥァォォ!」



「ぃっ・・・!!」



持っていたライフルを弾き飛ばされて、腕に伝わる激しい痛み。骨が逝ったのかもしれない。でもそれがどうした。まだ私は立っているんだ。



「ュァォ!!」



振るわれた腕が、『チェーンブレイド』を砕いた。その腕を傷つけることなく、46号はにこやかに、簡単に壊れたそれを見て心底ムカつく笑顔だった。



「あぅっ!!?」



「西崎!!」



46号の腕が、私の首を捕まえ、ゆっくりと地面から持ち上げた。残った人たちが私を助けようとするけど、私に被弾する可能性があるためか、ばらまくようには撃てないみたい。



ゆっくりと締め上げられていく感覚、上下関係をはっきりさせることが楽しいとでも言うのか、46号は笑顔だった。



おばさん、ごめん。私も死んじゃうみたい。けど、簡単に死んでやるもんか。



「き・・・ばくこー・・・ど・・・5・・・・5・・・・8・・・・・・なn・」



「っ!!?西崎!!!」



せめて・・・せめてこいつに傷くらいはつけてやる。だから後は・・・



後は・・・・・・



あ・・・とは・・・・・・・・



・・・・・・



・・・いやだなぁ・・・やっぱり・・・いやだよ・・・



しにたく・・・ないよ・・・



「・・・ぅぅ・・・・ま・・・お・・・くん・・・・」



私・・・しにたくないよ・・・



次の瞬間。



私の視界には・・・・・・信じられない光景が映し出された。





――――◇――――





――――◇――――

・相葉丈一郎

 警視庁の警察官の一人。正義感が熱く、彼を慕う者も警視庁には多く在籍している。そして3号の正体を知っていた人物である。彼は秘密裏に3号と接触し、彼の友好関係内にいる医療関係者らと共に3号のサポートを行っていたと46号事件の後に告白した。それは3号を守るためだったと彼は語る。

――――◇――――





――――◇――――





一台のパトカーが46号に突撃し、捕まえていた彼女の者に気を取られていた46号は完全に不意をつかれ、突撃に耐えられずに彼女を手放し吹き飛んだ。



解放された彼女は失っていた酸素をたくさん取り込むように息を荒くしながらも生きていた。間に合ってよかった。無茶をお願いしてしまったけど、相葉さんには感謝してもしきれない。



運転席から相葉さんが降りて、捕まっていた人に駆け寄り安否を確認している。それに合わせてその人に駆け寄ってくる仲間の人たち。彼女も・・・真悠はやっぱり大勢の人に慕われていることを目撃して、ちょっとさみしい気持ちになりながらも、昔みたいに明るくて友人を沢山作れる人柄に戻れたんだと安心した。



「あなたは?」



「私は警視庁の相葉といいます。応援として駆けつけた次第です」



「応援・・・なんて無茶な・・・」



「無茶だろうと我々が戦わなければ大勢の人が死んでしまうんです。覚悟のうえです」



やっぱりかっこいいな相葉さん。こんな時でもはっきり言い切れるんだから。そんな相葉さんを見てたら僕も覚悟が出来た。



相葉さんと視線が合い、頷くと、相葉さんも強く頷いてくれた。



「皆さん。今からここで起こることは他言しないで頂きたい。これは私個人の願いです」



車から降りると同時に相葉さんの声がそこにいた人たちに響く。同時に僕の方に視線が来た。



「・・・ぇ・・・・? ま・・・お・・・くん?」



「そうだよ真悠ちゃん。ただいま」



夢でも見てるのと言いたげな幼馴染のか細くて、泣きそうな声。そっと彼女に寄り添ってただギュッと抱きしめた。



「もう大丈夫だよ」



「うぁ・・・・うぁあああ・・・まおくん・・・まおくぅん・・・!! いきてた・・・いきてたよぉぉ・・!!!」



腕を怪我してるみたいで、とっても弱々しかったけど、真悠ちゃんは今度こそ涙を流してくれた。



「ゥゥゥゥゥァァァ!!」



ここでようやく吹き飛ばされた46号が明らかな怒りを表しながら起き上がり、戻ってきた。吹き飛ばされて起こっているんだろう。けど、怒ってるのは僕だって同じだ。



抱きしめていた真悠ちゃんからそっと離れて、僕は46号に向かい立つ。



「っ・・・まおくん・・・!! だめ・・・にげなきゃ・・・!!」



「逃げないよ。僕は逃げない。僕はここに僕の意思で立ってるんだ。もう大切な人を目の前で殺させないために」



「ゥゥゥゥァ・・・!!?」



46号がようやく僕に気づいた。そして驚き、たじろいだ。そうだろうな。お前は確かに僕を”殺したはず”なんだから。でも僕はここにいる。ここに立ってるんだ。



今度こそ、負けないために、勝つために。



「覇堂くん・・・頼む」



「はい!!」



意識を僕の中にある炎に、あの日僕を救ってくれた”本当の3号”から貰った炎を呼び起こす!!



僕の心臓から緋色の炎が燃え上がる。血管に血が通うように、全身に炎が走る。炎が僕の体を人から”人ではない何か”へと変えていく。



「これは・・・・!!?」



誰かが驚く声が耳に届く。僕だって人前で姿を変えるのは少し、怖い。けど、誰かを目の前で失う怖さに比べたらこんなもの乗り越えられないものじゃない!!



「ゥゥゥゥウウウウウ!!! ラァァアア!!!」



真っ赤な身体と銀色に走る全身のライン。そして真紅の瞳を持つ人外生命体3号。それが僕のもうひとつの姿。あの日救われた僕が本当の3号から受け継いだ力。



「ゥァァァ・・・ラァムゥダァ・・・・!!?」



「もう負けない。もうこれ以上、僕の前で誰も死なせない!!!」





――――◇――――





――――◇――――

『覇堂真雄』

・彼は普通の青年だった。しかし、人外生命体が出現したあの日、すべてが変わった。彼曰く、彼はその日、死んだのだという。しかし彼は『本当の人外生命体3号が命をくれたんです』と語る。その後彼は『人外生命体3号』へと変化することが出来る様になったという。

 その後彼は自分の意志で『人外生命体』と戦い続け、人々を救い続けた。当時の年齢から考えると、彼は13才の頃から現在17才になるまで、戦い続けてきた。そして『人外生命体46号』との戦いで、彼はその秘密を全ての人に打ち明ける覚悟でもう一度立ち上がった。

後に『ラムダ事変』と総称される『人外生命体』が関わってきた事件は全て、彼が居たからこそ乗り越えられた奇跡なのだと、当時を知る人々は語る。

――――◇――――

『人外生命体3号』⇒『ラムダ』

・人類が知った『人外生命体3号』の名前。その正体は当時17才の学生『覇堂真雄』。能力は『緋色の炎』と総称される能力及び『人外生命体』の出現を把握する探知能力。この能力は自らの身体を修復するだけではなく、『人外生命体』の未知の力を文字通り焼き尽くす力を持つ。その為、未知の力に犯された人間を唯一救う事が出来る力でもある。

 『人外生命体46号』との戦いで生死に関わる損傷を負うが、能力により再生し復活。再生の際に能力が強力になりその後、敗戦を期した『人外生命体46号』との再戦のため、唯一『人外生命体3号』の正体を知っていた『相葉丈一郎』と共に現場へ急行。追い込まれていた特殊部隊の下へと駆けつけ、その場で『人外生命体3号』へと変化。その際『人外生命体46号』が口にした『ラムダ』と言う言葉から、それが彼の名前だと仮定し、現在に至るまで『ラムダ』の名で呼ばれるようになった。

――――◇――――





――――◇――――





「ハァァァ!!!」



「ゥガァ!!?」



もう何が起きたか理解できなかったけど、それでも良かった。真雄くんは生きてた。それだけで私は嬉しかったから。



それで真雄くんが3号だとか、今までどうして黙っていたのかとかそういうのは全部後でいい。後でいいんだよ。だって・・・昔から真雄くんは私のヒーローだったんだ。私を私に戻してくれたのも真雄くんなんだ。



それから、私の分までいろんな人たちをずっと守ってくれたのも全部全部、真雄くんだったんだ!



「西崎、無茶をするな」



「隊長。確かにこっちの腕は動きませんけど、まだライフルは撃てます。もう、平常心ですから、戦えます・・・いいえ、戦うんです・・・!!!」



3号が・・・真雄くんがそこにいて、戦ってるんだ。何も出来ないならこれはただの自殺行為かも知れない。でも、私は真雄くんを守るために、自分の意志で戦うんだって決めたんだ・・・!!!



「あぐっ・・・ンンアァァラァ!!!」



「ガァッ!!?」



人外生命体の攻撃はとんでもない力がある。それを受けて苦しそうで辛そうな声を出しながら、それでも踏ん張ってパンチを繰り出して殴り返す真雄くん。たまにむちゃくちゃ言い出したり、それを急に実行し出す真雄くん。



私が憧れて、勇気をもらったあの真雄くんがそこにいるんだ。だからこそ、だからこそ私はここで立ち上がらないといけないんだ。自分を貫くためにも絶対に・・・!!



「若いのにいい覚悟だ。動ける奴らは付いて来い! 反撃に出るぞ!」



「・・ですが・・・我々の装備では・・・」



そんな弱音を誰かが吐いた。わかってるそんなこと。でも、でも!!!



「っ!! 泣き言を言うんじゃない!! 出来ないからなんだ!! たかが数回効果が無かっただけだ!! あそこで戦ってる3号は・・・真雄くんは私たち以上に失敗して!ボロボロになって!! ずっと戦ってるんだ!! 私と同い年の彼が!! あなた方よりもずっと年下の子が戦ってるんだぞ!!」



これは自分に対する喝でもある。見てるだけじゃダメだと、手元にある”これ”は玩具でも飾りでもない。これは・・・守るために使う武器なんだ!



「そうだ・・・俺たちはさっきまで『自分たちは戦える』と豪語したぞ!! なら最後まで貫けよ!!」



同じ隊員が頬を叩きながら立ち上がってくれた。



「そうだ・・・!! 私は戦うためにここに来たんだ!! 効果が無かったなんて今更だろう!! 効果がなくとも注意を一瞬引いて、みんなを守るのが!! 人を殺す人外生命体を倒すのが私たちの覚悟だろ!! 恐怖を乗り越えて今まで戦ってきたんだろうが!!」



「気合を入れて立ち上がれ!! 今の私たちに出来る精一杯でやるしかなんだよ!! 逃げるなら!! 諦めるならもう二度とここに来るんじゃない!!!」



「俺のガキと同い年のガキが戦ってんだ!! ここで戦えねぇと息子に合わす顔がねぇよな!!!」



「よく言ったお前ら!! 各員覚悟がねぇなら今すぐ逃げちまいな!! これより俺の隊は彼を!! 3号を援護する!! 根性あるやつだけ付いて来い!!」



「「「はい!!」」」



真雄くん。今、行くよ!!!





――――◇――――





「オォォオォォォオォォォォ!!!!」



46号の顔面を叩き割る勢いで拳を振るう。回避されて鳩尾に一撃を受けたけど膝を折るな。この程度気合と根性で乗り切れよ僕!!



「グゥガァ・・・!!?」



「ダァァァラァァァ!!!!」



鳩尾へ一撃入れてきた腕を掴んで一本背負いで地面へと叩きつける。倒れたところにスタンプを叩きつけ続ける。



「シャァァゥァ!!」



「くぅっ!!」



長い首をしならせて僕を吹き飛ばす46号。お腹にすごい痛みがある。少し気を抜けば意識を持っていかれそうだ。でも僕の攻撃は以前よりも46号に効いている。理由はわからないけど前よりも戦える。それだけ分かれば僕はまだ立てる。



炎で傷を塞いで、怪我を治す。顔を上げれば46号がこっちに向かって駆け出していた。よけられなさそう。なら、耐えてからスキ見て蹴り飛ばしてやる・・・!!



「ぅてー!!」



「アグァ!!?」



「今だ覇堂!!」



相葉さんと真悠がいた部隊の人たちが援護してくれた。46号の体勢が崩れて前のめりになった。鳩尾ガラ空きだっ!!



炎の力を手足に集中させていく。炎は赤を超えて黒を帯び僕の両手に集まっていく。



「ゥゥガァァ!!!?」



「ダァァァァァアアアアアア!!!!!」



拳を通して炎を46号へと叩き込む。何度も何度も、一発ごとにより強く、より速く、力を爆発させるように力を込めて。そして最後に一撃、一歩更に踏み込んで大勢の人たちを食って悲しませたその顎をへし折るように!!



「ウォォリャァァ!!!!!」



「ゥゥゥゥガァァァ!!!!」



その一撃は叩き込んだ炎の力を爆発させて、46号の身体を燃やし尽くし、そして体の一部を残してその生命活動を停止した。



「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」



勝った。今度は、勝てた。でも、僕だけじゃ勝てなかったかもしれない。今回勝てたのはきっと・・・



「真雄くん!!!」





――――◇――――





――――◇――――

『人外生命体46号事件』

・出現した人外生命体46号蛇のような頭を持っており、その口で人間を食らっていた。これに合わせて『人外生命体3号』が交戦を開始するも、力量の差で敗北。胴体と右足を捕食されたが、駆けつけた『相葉丈一郎』により撤退に成功。入れ替わるように特殊部隊が到着し、その光景から46号により3号が捕食されたと判断。また、戦闘により切り落とされた右腕の変化が溶けたことにより3号の正体『覇堂真雄』が巻き込まれ死亡したと判断した。

 救助された『覇堂真雄』は『相葉丈一郎』により外科医『永瀬トオリ』の在籍する病院へと搬送され、秘密裏に緊急オペが行われた。その甲斐あって『覇堂真雄』は一命を取り留めることが出来た。

 ちょうどその頃、再度出現した46号と特殊部隊が交戦。『緋炎弾頭』の効果が現れて撃退に成功する。

 翌日意識を取り戻した『覇堂真雄』『人外生命体3号』はその力を使い失った身体の修復を

開始したが、大きすぎる損傷に修復が出来なかったとのこと。しかし彼曰く『気合と根性入れたら強くなれました』と常識が通じない力で能力が強化されたらしく完全復活を遂げた。直後46号の出現を探知したため『相葉丈一郎』と共に現場へ急行。

 三度出現した46号は後日判明した『緋炎弾頭』に対する抗体を得ており、『緋炎弾頭』の効果を弱体化させ、部隊員の精神を砕き崩壊一歩手前まで追い込んだ。部隊員『西崎真悠』が捕食されかけたとき、『相葉丈一郎』『覇堂真雄』が現場に到着しすんでの所で救出に成功。そこで『覇堂真雄』は自らが『人外生命体3号』であることを記録上では初めて明かし、46号との戦闘を開始。

 戦闘は拮抗していたが病み上がりであることもあり、苦戦を強いられていた。しかし立ち直った特殊部隊『染岡班』と『相葉丈一郎』による援護射撃により形成を逆転。見事46号を撃破した。その際、46号は3号に対し『ラムダ』と発言したことを確認したため、以降『人外生命体3号』を『ラムダ』と命名する。

 この情報は許可があるまで関係者以外への開示、公言を禁じるものとする。



追記

2XXX年Y月 約5年に渡る人外生命体によるすべての事件が解決したことにより『ラムダ事変』の情報をすべて開示することを許可する。尚、『ラムダ』の正体に関してだが、既に大勢の人々が周知しているが、今回の情報開示で初めて明かされたものである。


もし私の文章を気にいてくれたら連載中の作品『プラネットクロニクル』もよろしくお願いします。


それから感想・評価・レビューとかも貰えたら嬉しいです。よろしくお願いします。

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