表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

詩という名の吐露

呆然として 立つ

作者: 三千


呆然として 立つ


手元には 一枚の手紙

少し 力が入ったのだとわかる 強い宛名

ぷいと そっぽを向いて貼られた切手に

覆いかぶさるように 押されている消印

つい

昨日のこと


これが本当なら

けれど 俄かには 信じられず

僕より 背の低い君

揶揄からかって 遊んだ日

君のその背

受け継ぐ子 遺し

なぜ 神様は こうして

人を驚かせては 笑うのか


握りつぶした手紙には

君の無念と辛苦

最後に 添えられた 文字が一層 力強く歪む

悔しい

そうだろう

君は

相当 悔しかったのだと思う

僕だって

こんなにも 悔しくて たまらないのだから


そうか

もう君には 会えないのかと

呆然として 立つ

それは 寒い冬を 越してもなお

曇天を 見上げながら

ああ春はもう そこなのにと 立ち尽くしているような 感覚に似る


なくしてから 知るのは

誰ひとりとして

なくしたくない ということ

けれど その日は いつか必ずきて

僕も そうだろうから

だから 灰になるその いつかの日

君に会えるのかもなと

考える 今日という日


そうして

もし 会えたのなら


たとえば 道ですれ違ったり

たとえば 川の対岸であったりしても

笑いながら手を振る

君の柔らかい笑顔を 見たいと思う


それに応えて

僕も 手を振るよ

大きく大きく

身体を 揺らして


だから どうか

どうか それまで

安らかでいてくれないか


僕が おういおういと

手を振る日まで








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] そうして もし 会えたのなら から後半の行のせつなさ、全て良い。完璧。
[一言] 壊れかけのradioが背景で聴こえそうな詩ですね。 昔誰しもが経験した甘酸っぱい思いが伝わって来ました。
[良い点] 二度と元に戻せない別れを前にすると、どう受け止めていいのか分からず、呆然とするほかないですよね。 もし再会できたら、私は何と言うだろう。 まず、いたらなかった点を謝って、それから、ありが…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ