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040 誤った選択

 

『ちっ、あいつどこまで行きやがった?』


 木々が立ち並ぶメタリアダンジョンの周辺を捜してみたのだがクロム達、子ども達の姿は見当たらなかった。


『まさか……あいつ』


 そうしてチラリと視線を送って見るのはメタリアダンジョンの入口。


 石造りで造られた地下への入り口は周囲にも同じような石でできた遺跡である壊れた柱が何本かある程度。

 その入口は地下に向かっていく階段があるだけでクロム達が入ったという確証は無かった。


『――――ん?』


 入口の中を覗き込むと、数段先にある物が目に入るので近付いて小さな粒を指で持つ。


『あいつ、もしかして中に入りやがったのか?』


 手にしたのは飴玉だった。それもクロムが好んで食べていた黄色の飴玉。

 目を凝らしてよくみると、埃の中に小さな足跡も見える。


『…………どうする?一旦マールのやつを呼びにいくか?』


 悩むのだが、マールは今日大事な用事で呼び出されたと言っていたことを思い出した。


『なら――――』


 他の誰かを呼びにいくかと考えるのだが、すぐに首を振る。

 ダンジョンに踏み込むというぐらいに誰かを呼びに行けるほど親しいものなど限られる。いくらか頼れる人材を思い付いたのだが、そんな親しい人がすぐに見つかるかどうかも怪しい。そうなるとギルドに捜索依頼を出さざるを得ない。


『はぁ。しょうがない』


 同時に考えるのは、依頼を出すにしても時間が惜しいし依頼料のこともある。

 どうせ入っていたとしてもその辺にいるだろう。


 その判断が全ての過ちだった。



「――――カイン?」


「……なんだ?」


 話している途中でマリアが口を開いた。

 俯いて思い出すように視線を外して話していたのだが、顔を上げてマリアを見ると、不安そうにしていることが窺える。


「その、大丈夫ですか?キツそうに見えますので……」


「自分から聞いて来たんだろ?」


「そうですが…………」

「大丈夫だ、気にするな」


 もう踏ん切りはついてはいる。思い出すのは確かに辛いのだが、忘れるわけにはいかない。忘れるつもりもない。これからの目的にそれがあるのだから。


「続けるぞ?」


「はい」




 ――――そうしてクロム達を探しにメタリアダンジョンに入った。


 中はほんのりと薄暗いのだが、壁に埋まっているマナを含んだ鉱石のおかげである程度の視界は確保出来た。


 カインも入るのは初めてだったのでゆっくりと確認する様にしばらく進んでいるのだが、魔物の気配は感じられなかった。


 聞いた話によると内部の構造が変化する階層になるまでは魔物は現れないらしい。


『――思っていた以上に静かなんだな』


 これならすぐに見つかるかもしれない。

 少し駆け足になって奥に入っていく。


『……確か地下五階までは内部の構造は変わらないんだよな?』


 地下二階に続く階段を見つけて考える。

 まさか下に降りたわけじゃないよな。


『どうする?もしかして実は中に入ろうとしてやめたとか?』


 ここには念の為に探しに来ただけだ。もっと言うなら行き違いになって既に帰ってしまっているのかもしれない。


『さすがにこれ以上進んでいる事はないか……』


 地下に続く階段を目にして嫌な考えを否定する様に振り返って背を向けた。


『――――いや、やっぱり一応見ておこう』


 念の為、念の為だ。

 地下二階は広大な空間が広がる場所だという。そこまで確認して、もしいなかったのなら一度王都に戻ってみよう。


 再び振り返り、地下二階に続く階段をゆっくりと降りていった。


 地下二階に着いたところで、目の前の光景に衝撃を受ける。


『――クロムッ!?』


 探していた子どもたちがそこにいたのだから。

 クロムを含めた子どもたちは三人共横たわっていた。意識を失っている様子で、慌てて駆け寄って抱きかかえる。


『良かった。息はあるみたいだな』


 三人共息をしていた。

 小さな寝息を立てているので、どうやら眠っているだけのようだった。


『けど、なんでこんなところにこいつらがいるんだ?』


 ここにいる理由が興味本位だとしても、眠っている理由を理解できない。


『まぁいいか。とにかく見つかったんだ。連れて帰るか――――ん?』


 両脇に子ども達を抱きかかえようとしたところで、壁の魔石は一際大きく光りを放った。

 あまりの光量に目を開けていられない。


 同時にググググっと何かが大きく動く音が聞こえて来た。


 光が収まるのと目を開け、瞬間的に眼前に殺気を感じる。


『――なっ!?』


 轟音を浴びせながら目の前には大きな物体、太い腕が振り切られていたのだ。

 即座に殺気を認識して子どもたちを抱いたまま慌ててその場を飛び退く。


 同時に、置かれている状況に絶句した。


『こいつは……ゴーレムか…………?』


 身の丈三メートル以上ある土で出来たゴーレムがいたのだった。




「――ゴーレム……ですか?そんな珍しい魔物が……」

「ああ。俺も初めて見た」




『――ちっ、こいつ、俺を逃がさないみたいだな』


 ゴーレムの拳に対して子ども達を抱きかかえながらもなんとか回避だけはできるのだが、逃げ切る事までは適わない。

 さらに状況を悪化させたのが、ゴーレムは上階に上がる階段の前に立ち塞がったのだ。


『くそっ、なんとかならないか?』


 一度子どもたちを下ろして剣を抜こうかと考えるのだが、考えた所で同じだ。

 ゴーレムの身体を斬ることはまだできない。剣が折れるだけだ。

 上級の剣士になれば石をも斬ることができると聞いたことはあるのだが、想像もできない。ましてやゴーレムが相手となれば尚更だ。


 だが、このままでは体力が底を尽きる。


『(どうする?――そうだ、これがあった!)』


 何かないかと、ふと腰の鞄に目を向けると思いだした。

 子ども達を地面に降ろして腰の鞄に手を入れる。


『これなら流石に効くだろう』


 取り出したのは小さな小瓶。

 魔法が不得手なカインが用意していた魔法薬。それは、剣に振る事で特殊な効果を発生させるというものだった。

 急いで小瓶のフタを開けて剣に振りかける。


『覚悟しやがれ!』


 青白く光る剣を構えて、ゴーレムと対峙する。


 ゴーレムの拳を見極め、懐に潜り込んで腕を目掛けて剣を力一杯に振るった。

 剣は折れるどころか腕を豪快に切り裂いた。


 ドスンと重量感のある音を立ててゴーレムの片腕は地面に落ちる。


『よしっ、これならいける!』


 確信めいたものを得た瞬間、もう片方の腕が勢いよく振るわれた。


『――おっと』


 軽やかに躱して、もう片方の腕も切り落としてやろうと思った瞬間――――。


『――がっ!』


 見えない角度から強烈な衝撃を腹部に受けて吹き飛ばされる。

 地面をゴロゴロと転がりながらなんとかゴーレムを視界に捉えると、ゴーレムの腕は再生されていたのだった。

 剣もカランカランと地面を転がる。


 思わぬ一撃を喰らったことで立つ事が出来ないでいた。


『くっ……くそっ』


 ズシンズシンと音を立てながらゴーレムが迫ってくる中、地面に転がっている剣へ必死に腕を伸ばす。


 しかし、剣に手が届きそうなところでもうゴーレムは目の前にいた。


 足を振り上げられ、叩き潰されそうになるところで死を覚悟する。


『――――すまん、マール。どうやらここまでのようだ』


 こんなことになるならマールを探して一緒に来れば良かったと後悔した。


 踏み潰される瞬間にマールに謝罪する。


『あとは頼んだぞ』


『ちょっと、勝手に死なないでくれるかなぁ。――アイスニードル』


 小さく声が聞こえた。

 聞き慣れた声が聞こえ、幻聴かと思った次の瞬間、ドスンとさらに大きな音が目の前で起きると同時に土煙が立ち込める。


『……は?』


 目の前には無数の氷の槍が突き刺さって倒れるゴーレムの姿があった。


 煙の奥には聞き慣れた声の主。人影が立っている。


『遅くなってごめんね、カイン。助けに来たよ』

『マール!?』



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