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027 湧く感情

 

 酒場に行くと情報屋はすぐに見つかった。

 情報屋に情報料として銅貨10枚を渡し、目撃者から得た話を聞く。どうやら目撃時間は夕暮れ時で、場所は迷いの森で間違いはない。


 目撃者は薬草の採集に向かっている時。迷いの森の中にある月夜の花という効能の高い薬草を作れる花の群生地だということだった。その場所付近で目撃したのだが、遠目に見て慌てて逃げたのでどんな魔獣なのかは確認できず、正体はわからず仕舞いだったという。


 情報屋から情報を仕入れて酒場を出るとフローゼが膨れっ面になって不機嫌そうにしていた。


「どうしたんだ?」


「なんで酒場に行ったのに何も食べさせてくれないのよぉ!」


「…………」


 返って来た言葉に思わず言葉を失う。


「あのな、前もって言っていただろう?今は情報を仕入れに来ただけだって」

「でもせっかく行ったんだから何か食べさせてくれてもいいじゃない!」

「お前いい加減にしろよ!?」


 段々と腹が立ってきた。


「ほらっ、カインもすぐ怒らないの!フローゼさんはまだ知らない事が多いのですから仕方ないじゃないですか」


 苛立つカインを宥める様にマリアが声を掛ける。


「フローゼさん?安心して、大丈夫よ。ちゃんと時間がくればご飯は食べられるから。人間は自由にいつも食べられるわけじゃないのよ。ちゃんとお金を稼いで、それから対価としてお金を払う必要があるの」


 マリアに諭されるフローゼを見て辟易するのだが、フローゼはマリアからゆっくりと説明され、渋々と理解していた。


「それとカイン?」

「ん?」

「一つ気になったのですけど、どうしてさっきの情報がギルドになかったのですか?あれぐらいならギルドにあっても良いと思うのですけど?」


 マリアは抱いた疑問を呈してくる。


「ああ、それは確定した情報じゃないからだな。ギルドとしては信用に足る情報なら流してくれるが今回は目撃者も慌てていて魔獣の正体がわからない。つまり、どれくらい信用できるかわからないってことだな。そんなあやふやな情報ほど危なっかしいものはない。ギルドは基本的に信用できない情報は流さないようにしている。責任が取れないからな。だからこうやって情報屋を通じて情報を得るんだ。自分たちの責任でな」


「へぇ、そうなんですね」


 マリアは考え込む様にカインの言葉を咀嚼する。



「だがなにも悪いことばかりじゃないぞ?」


「えっ?」


「いや、こういうとこでの話なんだが、ついでとしてギルドが把握していない情報が手に入る事もあることもあるしな」


「ギルドが把握していない情報って?」


 一体どういうことなのかとマリアは確認するように問いかけた。


「まぁ一番最近ではマリアとフローゼに出会ったあの遺跡だな」

「ああ、あそこですか?」

「あそこはもう何もないとされている遺跡で、願いが叶うって噂もずいぶん昔の話でな。今ではもう誰も信じていないってぐらいの眉唾物の話だったからさ。そんなわけのわからん場所でマリアとフローゼに会ったんだからな…………」


 カインは思い出す様に口にする。


「ふぅーん、そうですかぁ」


 カインの話を聞いてマリアはにやにやとした顔でカインを見た。


「な、なんだよ!?」

「いいえー、べっつにぃ。 つまり、カインはいつも口では文句ばかりですが、私達と出会ったことを悪い事ではないって思っているのですね?」


 カインはそこでマリアが何を言っているのか理解できずにキョトンとする。

 そして先程口にしていた自分の言葉を巻き戻すようにして思い返すと、思い出した。確かにそう言っていた。間違いなく。


「ち、違うっつの!そういうつもりじゃなくてだな!」

「ではどういうつもりなのですか?」

「い、いや、その、それはだな……」


 どう言葉を取り繕おうか。改めて考えると何故それを口にしたのか自分でもわからない。


 確かにマリアもフローゼも共に美少女には間違いはない。それに対して不満はないがどうこうしようというつもりもない。

 生意気だがマリアは聖女であるらしいし治癒魔法も当然の様に高レベル。更に自分よりも強い。これはもう間違いなく断言出来る。


 そしてフローゼは天使でそもそも人間ですらない。そしてなによりポンコツだ。それに加え食事への執着が異常に強い。仮に人間だとしても色々とそれはどうかと思ってしまう。


 そんな二人と一緒にいることが流れとはいえ不思議でならないのだが、改めて冷静になって考えてみると何が悪くないと言ったのかはわかっている。


 それは、どこか気が休まる感じがするからだ。


 これをどう伝えようか悩む。


「ねぇ、早く言ってください」


 横を見るとマリアはにやにやとしていた。


「(……くっ…………)」


 結局言葉を思い付かないまま微妙に震える唇を僅かに開く。


「――ま、まぁそりゃあこんだけの女を連れて歩いていたら当然気分は良いよな。周りから見ているやつらは中身を知らないわけなんだし! つ、つまりそういう意味だな」


 結局本音を隠して伝える事にした。

 正確には何故気が休まるのかまでは自分自身も理解できていないのだから。


 そう伝えると、横を歩いているマリアは表情を変化させて険しくさせている。

 どうしたのかと思い、マリアに声を掛けようとしたら、マリアの方から先に口を開いた。


「カインのばーっか」


 そうして先を歩いて行く。


「……は?」


 何故今怒られたのか理解できない。思わず立ち止まる。フローゼは不思議そうに疑問符を浮かべながらカインを追い抜いて行った。


「(もうっ、カインがそんなくだらないこと考えてないのは知ってるんだからね!どういうつもりで悪くないって思って今何を考えていたのか知らないけど、もうちょっと素直になれば可愛げもあるのになぁ)」


 微妙に不機嫌な装いを見せながらも振り返り立ち止まる。


「――ほらっ、なにしているんですか?早く行きますよ」


 そこには先程向けられた表情は既になく笑顔でカインに呼びかけた。


「はぁ?ったくなんだよ。意味わかんねぇな」


 マリアの感情の変化に思考が追い付かないのだが、別に怒っているわけではないのかと思い、わからないことを考えても仕方ないので余計なことを考えないよう頭から振り切る。


 とにかく魔獣討伐の依頼をこなす為に街の外に向かって歩いて行った。



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