序章
崩れゆく世界はどうしてこんなにも美しいのだろう。
この世界はもう救いようのないところまで来てしまっているのだと、本能が私の思考に訴えている。
全ては私の手の届かない所にあり、大きな流れは止められないのだと。
そしてそれが然るべき運命なのだと。
意識が少しずつ遠くなる。
考えたいことや思い出したいことが不鮮明になって、形を失ってゆく。
自分が誰であったのか、何故ここにいるのか、もう何も覚えていない。
ただ、使命を果たさなければならないという想いだけがこの身に残っている。果たすべき使命が何であるかはとうに思い出せないというのに。
世界に崩壊と再生を。
ある少女の存在が世界から消える時、この世界もまた失なわれる。
それは再生へと至るための過程。
歪んでしまった全てを、もう一度初めから…。
「今日で世界が終わるなら、どうかーーー」
困った顔で笑うあなたの顔を、もっとずっと見ていたかった。
意識を手放す刹那、名前も分からないあの人のことが浮かんで消えた。
これは全てを失う運命を背負った、とある少女の物語。
初めまして、コトリと申します。
ある曲からインスピレーションを受けて、勢いで書き始めました。
形にできるかわかりませんが、描き切れたらと思っています。
お付き合いいただけたら幸いです。