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X1 チョボルの1日

フーン以外のキャラクター視線から語られる回は、Xで表記します。

 俺様の名前はチョボルです。

 森の奥に潜む宿屋をたった一人で経営しています。

 若いのに大変ですねとよく言われますが、そいつらは何もわかっていない真性のバカです。

 俺様の方が間違いなく数百年は年上なのに、彼らは気づいていないのです。

 様々な人に何度も若い若いと言われてきたましたが、未だにあのバカどもが俺様の年齢に気づかない理由がちっともわからないですね。

 

 今年訪れた新しい八勇士のフーンとかいうつまらなそうな男にも、若いのに大変だなと言われました。

 気になったので、どうして俺様が若いと思うのかと聞いてみたら、あいつは意味がわからない返答をしました。

 一番道路で勝負を仕掛けてくるタンパンコゾウにそっくりだから、とのことです。

 俺様はどうやら、タンパンコゾウという名前の魔物か何かに似ているらしいのです。

 もしかして、これが理由だったんでしょうか?

 鏡に映らなくなってしまったので、最後に自分の姿を見たのは数百年前ですし、タンパンコゾウがなんなのかわからないので、本当かどうかはわかりませんけどね。


 まあ、そういったどうでもいいことはともかく、俺様は今朝も針葉樹のクレイの木の下で心地良い目覚めを迎えました。

 何故かは知りませんが、いつどこで眠ろうと俺様は次の朝には必ずここで目が醒めるのです。


 俺様は木の幹にぽっくりとあいた穴の中へと腕を伸ばします。

 この中には俺様がせっせと貯めた金銀財宝、そして膨大な量のコペルトが隠されているのです。

 毎朝これを確かめなけないと、どうにも気が落ち着かないんですよね。

 やはり、お金は素晴らしい。

 こんなにも俺様の心を温めてくれるのですから。

 悲しい趣味だと思われてしまうかもしれませんが、家族も友人もいない俺様には存在理由や生きがいといった物はこれしかないのです。


「さてと……」


 そろそろ宿まで行って、居候どもに朝飯でも恵んでやりましょうか。



***



「飯ができましたよー! とっとと、食べに来やがってください!」


 朝食コールをすると、まず食堂に顔を出すのは朝早くから外で訓練に勤しんでいたアムルとゴーサル。

 へとへとに疲れ切っているので、きっと腹ペコなんでしょうね。

 あいつらの次にやってくるのは、いつも決まってカーンとトリン。

 そして、最後に顔を出すのはセタニアとソファイリ。

 フーンとかいうバカは、ほぼ毎日寝坊して朝ごはんを食べ損なっています。


「チョボル、朝飯ちょうだい!」


「もう、なくなりましたよ」


 今日も寝坊ですか。

 この人は本当にどうしようもないバカです。


「そんなことを言わずにもう一回、作ってくれよー。腹ペコなんだ」


「俺様の知ったことではありませんね。とっとと餓死しやがってください」


 面倒なので即断りましたが、フーンが諦めずにしつこく粘り続けるので、俺様はとある交渉を持ちかけることにしました。

 森でカーベロン草を探してきてくれるのなら特別にとっておきの食パンを一枚進呈してやろう、といった内容の取引です。

 バカは特に深く考えず、すぐさまに同意してくれました。


 カーベロン草はこの辺りで採れる物の中ではもっとも価値が高い薬草です。

 しかし、1日を丸ごと費やしても、運が悪ければ一つも見つからないことがある、とてつもなく希少な薬草でもあります。

 つまり、俺様はパン一枚でおおよそ1日分の労働を買ったことになるのです。

 チョロいカモがいると簡単に儲かっていいですねー、ぐふふ。

 


***



「う~ん……」


 俺様は栞を今開いていたページの間に挟み、パタンと閉じた本をポケットにしまいました。

 読書に飽きてきたので、気分転換にバカどもの働きっぷりでも観察しに行きましょうか。


 外へ出てみると、最初に目に入ったのはアムルとゴーサルの二人です。

 腕立て伏せ、腹筋、武器の素振りといった似たような特訓に励んでいるようですが、二人の間には妙に距離があります。

 同じ場所で特訓をしているのに、ちょうどお互いがお互いの視線に入らないように、壁や木々を隔てて特訓をしているのです。

 よくわかりませんが、どうにも仲が悪いんですよね、あの二人。


「……」


 少しの間眺めていましたが、これもかなり退屈ですね。

 さっきから同じことの繰り返しばかりです。

 もう少し面白そうな人を観察してみましょうか。


 庭の端っこではソファイリがガーデンに水をやっていますが……これも退屈そうですね。

 セタニアは怪我をしているので、おとなしく部屋で寝ています。

 さっさと怪我を報告してくれたら時魔術士を呼べたでしょうが、あの酷い状態のまま歩いて帰ってきて、「そのうちなおるヨ」とか抜かしていた時には思わず絶句してしまいました。

 フーンとは別のベクトルですが、あいつもかなりのバカですね。


 セタニアとソファイリもダメとなると、残されているのはカーンとトリンになります。

 カーンは少し苦手なのですが……まあ、他にやることが日向ぼっこぐらいしかないので、一応、行ってみましょうか。

 確か、あいつとトリンには薪割りを頼んであるので、屋敷の裏で黙々と働いているはずです。



***



 てくてくと裏庭まで歩いて行くと、予想通りそこにはカーンとトリンがいました。

 カーンはジャケットを脱ぎ、半袖姿で薪割りに精を出しています。

 いつも魔道書を持ち歩いているので、魔法研究に励む知的タイプだと思っていたのですが、彼もアムルとゴーサルのようにわりと筋肉質な体をしていました。

 意外です。


 トリンの方はと言えば、近くの切り株の上でお茶を飲みながら、カーンを眺めているだけです。

 カーンはいつも俺様を見抜いているかのような目でこちらを睨むので、少し苦手なのですが、あのあからさまに女の尻に敷かれている様子を見ると、やはりたいしたことない奴なんだと安心します。

 少しからかってやりましょうか。

 

「カーンさん、薪割りは進んでいますか?」


「はい、チョボル様。あと、もう少しで頼まれていた量が終わります」


「そうですか。ところで、トリンさんは怠けているようですが、彼女も頼んだ分をやり終えたのですか?」


「いえ。ですが、私(わたくし)が彼女の分までの薪割りをしていますので、ご心配なく」


「ふむふむ。そうなんですか~。つまり、カーンさんは二倍の量の仕事をこなしているんですね?」


「はい、そうです」


「では、本来掛かる時間の二倍を消費して仕事を行っているんですね?」


「はい、そういうことになりますね」


「それは困りましたね……」


「何かご不満でもあるのでしょうか?」


「まあ、ぶっちゃけますと……それって効率悪すぎじゃねーのですか?」


「……え? そ、そうなのでしょうか?」


 カーンは口を半分開き、呆然と俺を見つめています。

 結構、動揺しているご様子です。

 これは押し続けたら、儲けられそうな感触ですね。


「つまりですね、二倍の時間を掛けて仕事をしやがっているということは、二倍以上の量の成果を出さないと割に合わねーんだよってことです。もしトリンさんが一緒に働いていたら、この仕事はとっくに終わってますよね?」


「そ、そうですが……」


「納得したみたいですね。では、仕事を遅らせたペナルティとして、俺様が二人に頼んだ量の二倍の薪を割りやがってください」


「……わ、わかりました」


 バカはカモですが、性格が良い人間もカモですね。

 支離滅裂なことを言っていても勢いで押せちゃったりします。



***



「ただいま」


 カーンをからかってすっきりしたので、一旦宿に戻ると、ちょうど同じタイミングでフーンが帰ってきました。

 カーベロン草の山を籠に乗せて。


「ど、どうやってこんなに見つけやがったのですか?」


「え? 普通に探していただけなんだけど」


 意味がわかりません。

 こんなにたくさんのカーベロン草がこの近くの森の中に生えていたなんて、とてもですが信じられません。

 しかも、このバカは自分が集めてきた薬草の価値を全く知らないみたいです。


 チャンスですね。


「ありがとうございました、フーンさん。では、それはこちらで全ていただきますね」


「はい、どうぞ」


 カモとは素晴らしい存在です!

<名前> チョボル

<種族> 霊

<年齢> 不明

<身長> 138cm

<体重> 0kg


 父親は貴族、母親は彼の侍女であり、望まれていない子供だったというのもあって、父親の妻などに日々虐待を受けていた過去を持つ。

 戦乱の中、父親の屋敷が魔族に襲われて住人が皆殺しにされるが、チョボルの魂だけはシステムエラーの発生によってこの世界に留まった。


 全てを失った彼は絶望していたが、どうあがいても死ぬことができない体質になってしまったので悔し紛れに新たな趣味を探し、その結果、彼は金の亡者になったのである。

 自分が生きていた頃の残酷な境遇は、母親がお金を持っていなかったせいだと思っており、それがトラウマとなって彼の心理に影響をもたらしたのかもしれない。


 普段はあまり行わないが、チョボルは壁をすり抜けることができる。

 他にも色々と霊っぽい特技があるが、基本的には普通の人間として振舞っている。


<ステータス>

レベル :システムエラー108130958085102

パワー :システムエラー108130958085102

マインド:システムエラー108130958085102

スピード:システムエラー108130958085102

トーク :システムエラー108130958085102

チャーム:システムエラー108130958085102

マジック:システムエラー108130958085102

ラック :システムエラー108130958085102

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