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46 さようならベルディー その3

 アムルの後に続いて森の中へと進む。

 

「ほら、見ろよ見ろよ。いるだろ、あそこに」


 こちらの存在に気づかれないために、ぼそぼそと俺の耳の中に囁くアムル。

 彼が指差している地点には、手のひら程度の大きさのオラクルドールがいた。

 弱っているのか、オラクルドールは疲れきったようにふらふらとよろめいている。

 どこかの誰かに狩り損ねられた直後に、運悪くアムルに見つかってしまったらしい。

 つまり、こちらから見れば絶好のチャンスだ。


「フーン、お前はこれを使ってくれ」


 アムルは彼の貯蔵箱(アイテムボックス)から竹製の槍を取り出し、それを俺へ強引に手渡す。


「俺っちはペラペラペラ(あっちに回って)茂みペラペラペラペラ(の中で待ち伏せ)、お前はそれを使ってあいつをペラペラペラ(そっちの獣道へ)誘導してくれ。頼んだぜ」


 ぬぬぬ。


 こいつの舌、回りすぎだろ。

 口の動きが早すぎて、何を言っているのか殆どわからなかった。

 まだこっちへ来て半年ほどなんだから、もう少しわかりやすく喋ってくれよ。

 ベルディーがいたら、便利なリプレイ機能が使えるんだけど……いやいやいや、そんな機能は全く必要ないぞ。

 だから、もしベルディーが俺の脳内を盗聴していても、絶対に戻ってくるなよ?


「えーっと、つまり、何をすればいいんだ?」


 と、問おうとした時にはアムルは既に姿を消していた。


 はぁー……。


 まあ、断片的に得た情報から察するに、おそらくこれを使ってオラクルドールを茂みの中へと誘導すればいいのかな?


 抜き足、差し足、忍び足。

 気づかれないように、ゆっくりと弱っている魔物に迫る。

 そろそろ槍の先っぽがギリギリ届く範囲内だ。

 今回の目的は攻撃を加えることではなく誘導なので、ここら辺から一発ぶち込んでみるか。


 俺はえいやーと適当に武器を前方へ突き出した。

 すると、オラクルドールは瞬時に俺が放った殺気を感じ取ったらしく、俺が腕を動かし始めた瞬間とほぼ同じタイミングで、迫り来る槍とは真逆の方角へ猛烈なスピードで飛び始める。


 狙い通りだ。


 このまま一直線に進めば、茂みの中へと突入するはず。

 途中でルートを変更してしまわないように全力で追いかけ、オラクルドールが左右へ曲がろうとするたびに、その行動を槍の攻撃で阻む。


 茂みにたどり着くまで、後10メートル。

 9……5……3……1……0!


 ――ボフ!


 成功だ!

 おそらく、ここへアムルが全力の攻撃を叩き込むのがこの作戦だろう。

 なので、彼の間もなく放たれるであろう必殺技に合わせて、俺も槍を茂みの中へぶっ刺すか。

 とおりゃー!

 

 ――グサ!


「痛ってー!!!」


 やけにアムルっぽい悲鳴を上げるオラクルドールだな。

 ……なわけないか。


「なんで、茂みの中にいるんだよ」


「さっき言っただろうが! しかも、オラクルドールが逃げちまったじゃないか! どうしてくれるんだよ!」


 脳天にでっかい絆創膏を貼ったアムルが、ブチギレた表情で茂みから飛び出してきた。

 セタニア並みではないかもしれないが、槍でぶっ刺されたのに文句を言う余裕があるこいつもかなり頑強だ。



***



 よし、アムルは怒ってどこかへ行ってしまったし、今度こそ出発だ。

 左右前後に面倒な頼みごとをする可能性がある人間がいないかどうかを確認しながら、道から少し離れた木陰の中を進む。

 これなら絶対に見つからないだろ――


「ワン!」


 見つかった。

 

「なんでついてきたんだよ?」


 ケパスコはへけっと首を可愛くかしげる。

 ……まあ、犬に質問をしても無駄だな。


 わざわざ連れて帰ったら、誰か暇な奴に絡まれて、また面倒なことになるかもしれないし、連れて行くか。



***



 ケパスコと共に、早歩きしながら森の中を進んでいき、出発から一時間後ぐらいに王都へ到着した。

 さてと、まずはチョボルから受け取ったメモを確認して、どの店から回るかを考え――


 ――あっ。


 失くしたっぽい。

 念のためにポケットを裏返したり、パンツの中身や、髪の毛の中を確かめてみたがやっぱりない。

 この調子だとマジで晩飯抜きになるかもしれない。

 ううむ……どうしたものか。

 なんとなく内容を覚えているような気がしないでもないのだが、俺のマインド1の記憶力は全く当てにならないからなぁ……。


「ワンワンワン!」


 精神を集中させて記憶を脳の奥底からほじくり返そうとしているのに、ケパスコがしつこく吠え続けるので、気が散りまくる。

 どうして意味もなく吠えるんだ、こいつ?

 バカなの?


「ああ、もう、わかったから。シャラップ!!!」


「ワンワンワン!!!」


 黙れと言ったら、1デシベル上げてくる反抗期の鑑。

 やっぱり連れてくるんじゃなかった、このクソ犬。

 

「すみません」


 ケパスコを相手にイライラしていると、後ろからほんわりとした優しい声が耳に届く。


「あ、はい」


 引き込まれるように背後へ振り向くと、そこには白いワンピースを着た、整った顔立ちの女の子がいた。

 黄金のように輝く、上品な縦ロールの金髪。

 お淑やかさと気品を際立たせる、純白の手袋。

 一言で表すなら、間違いなくお嬢様と呼ぶべき容姿。

 そんな美しい女の子が、太陽のように明るい笑顔で俺の様子を窺っていたのだ。 


 ……もしかして、待ちに待った(まともな)新ヒロイン登場か!?

誤字報告システムとやらを試しに設定してみました。誤字報告なのに、早く届かないかなとワクテカしています。読者からの反応なら、それがなんだろうとめっちゃ嬉しいんだよ……。

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