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42 達人アルバイター・フーン

 マジックショップ北星で仕事を始めてから早一週間。

 こちらでの生活にもだいぶ慣れてきた気がする。


 奴隷という名の家畜だった俺だが、これまで精一杯頑張った(大嘘)甲斐があったのか、無事に社畜へとステップアップできたのだ。


「いらっしゃいませ!」


 俺は今日も素敵な笑顔でお客様を迎える。

 この些細な努力が実を結んだのか、最近は客足が少しずつ増えてきているような気がする。

 気まずいジジイしかいない店に出入りするのは気が引けるからなぁ。

 この変化は間違いなく俺がここでバイトを始めたお陰だ。


「すみません、これらでお願いします」


「はい、畏まりました」


 さてと、俺が全くもって商品の値段を覚えられなかったので、ジジイが仕方なく作成してくれた表を見ながら、お客が支払う代金を計算する。

 えーっと、650+40+120だから……810だな!


「810コペルトになります」


 ふふふ、完璧。流石、俺。

 伊達に中学を卒業したわけじゃないからな……というのは、ただの見栄で実は裏でインチキをしています。


 先日、初めて会計の仕事をしていた時、俺のあまりにも酷い暗算力に呆れ果てたベルディーが会社のサーバーにアクセスして、俺に暗算Lv1のスキルを付加してくれたのだ。

 これで足し算と引き算は常に正確に行うことが可能となった。

 この調子で暗算スキルを磨き続ければ、アインシュタインレベルの天才まで成り上がれそうな気がするぜ!


「810の合計で、600コペルトのお支払いですね。では、お釣りの210コペルトです」


 流石、俺。お釣りの計算も完璧。


『計算ができても、それの意味を理解できなければ無意味なんですけどね……』


 ベルディーは相変わらず無駄にケチをつける。

 嫌な奴だ。



***



~マジックショップ北星のすぐ外にて~


「おい、そこがバカな会計がいるって噂のマジックショップか?」


「ああ、そうだ。たった今、半額で商品を買ってきたところだ」


「マジかよ! これは活用する他ないな!」



***



「いらっしゃいませ」


 またまた、お客様が店に入ってきた。

 しかも、やたらと商品をたくさん手に取っている。


「これを頼む」


 商品の山とコペルト小紙幣の束をさっと俺に差し出すお客の男。

 コペルト小紙幣にはコペルト紙幣の十分の一の価値がある。

 つまり、10000コペルトだ。

 ちなみにこれは十分の一を実際に計算したのではなく、その説明を暗記してあるだけである。


「はい、畏まりました」


 えーっと、2100+40+40+40+40+40+800+18782+18782+18782+18782+680+900だから……79728!


 つぎは――


「一枚、ニ枚――」


「あ、すまねえ。ちょっと俺がいくつ浮遊石を買ったか、教えてくれないか? 忘れちまったんだ」


「五つですよ」


 お客が唐突にしてきた質問に、笑顔で返事する。

 こういう些細な気遣いが積もって、店の評判が上がるのだ。

 ジジイも少しは見習って欲しい。


「ありがとうな」


「えっと、では……あ、どこまで数えたのか忘れた」


「5枚目だった気がするぞ」


「あ、確かにそうでしたね。ありがとうございます。6枚、7枚、8枚、9枚、10枚、11枚。全部で110000コペルトですね」


「ああ、その通りだ」


 次はお釣りの計算だ。

 79738 − 110000 = −30262


 マイナス……だと?


『ベルディー、マイナスがついた数字の時はどうすればいいんだ?』


『支払い額が足りないんじゃないですか?』


『ああ、なるほど。そういうことか』


「お客様。すみませんが、30262コペルトほど足りていないみたいです」


「え? そ、そうなのか?」


 男はきょろきょろと目を泳がせている。

 何故かは知らんが、少し困惑しているみたいだ。


「おい、早くしてくれ。いつまで待たせるつもりなんだ」


 男の後ろに並んでいる次の客が彼を急き立てる。


「お客様? 大丈夫ですか?」


「あ、ああ。ちょ、ちょっと待ってくれ、いますぐ財布から残りの額を出す」



***



~マジックショップ北星のすぐ外にて~


「どうだ? 大儲けできただ――ぶふぉ! ど、どうして俺を殴るんだよ!」



***


 最後の客の会計を捌き終えると、倉庫の整理をしていたジジイが店の中に戻ってきた。


「フーン、お前がここに働きにきてから、大分客が増えた。いつも頑張ってくれて、ありがとう」


 流石、俺。ジジイに褒められちゃったぜ!

 

「というわけで、これまでの仕事分の給料じゃ。受け取れ」


 ジジイが白い封筒を差し出す。

 手に持って見たところ、かなり薄いが、経験ゼロから働き始めた俺の初給だしこんなもんだろう。


「あ、ありがとうございます、ジジ……じゃなくて、ビュフォルさん!」


「それと、今日はもう帰っていいぞ。わしはこれから出掛けるので、いつもより早めに店を閉じるつもりじゃ」


 よっしゃ、早退だ!

アクティブスキル

空の支配者(ウェザーコントロール)

 20話参照。


・暗算Lv1

 足し算と引き算を瞬時に行うことができる。掛け算と割り算には非対応。


パッシブスキル

堅忍不抜もどき(ペインキラー)

 20話参照。


海外意識(センサーシップ)

 CEROの横暴(ゴアブロック)の強化版。グロだけではなく、エロもある程度規制してくれる。グロ規制はユーモアに溢れているが、エロ規制はなぜか低予算じみている。

 

メタルパニック(タライ落とし)

 7話参照。

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