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40 ルームメート 前編

 はぁ~。

 飯を食っただけなのに、なぜかやたらと疲れた……。

 今夜は部屋に戻ってゆっくり休むとするか。


 俺は自分の部屋の取っ手を握り、くるっと捻って扉を押し開いた。


「おかえり……」


 ――バタン!


 思わず全力でドアを閉めてしまった。

 部屋に戻ったら、虚ろな目つきをしている全裸の女がナイフを構えながらおかえりとか、どこのホラー小説だよ!

 やばすぎる光景に驚きすぎて、心臓が張り裂けるかと思ったわ!


「……」


 さ、流石に見間違いだよな?

 でも……部屋に戻りづらくなったな。

 とりあえず、先に風呂にでも入るか。


 廊下を後戻りして浴室へと向かう。

 えっと、確か食堂の隣の部屋だったはずだ。


 浴室と思わしき部屋の扉を開いてみると、中にはでっかい風呂桶みたいなものがどでーんと横たわっており、その上にはシャワーの頭っぽいものが吊るされていた。


『これが風呂なのか?』


『はい。あのシャワーヘッドは魔力を使って、水を井戸から吸い上げ、ついでに加熱する便利なセミマジックアイテムです。セミが付いているのは、純正のマジックアイテムと違って、使用者の魔力を少し必要とするからですよ。王都では、長く使う道具の燃費を良くさせるために、このような仕様になっているものが多いみたいです』


 おお、ハイテクならぬハイマジだな。

 ババアの家では、冷えた水をバケツで体にかけるという、前時代的な方法でしか体を洗えなかったし、これは嬉しい。


『ふむふむ、つまりこれに触れて魔力を注ぎ込むって感じか?』


『はい、多分そうですね』


 右手でシャワーヘッドを掴み、うーんと唸りながら念波を送り込む。


 ……。

 …………………………。

 …………………………………………………………。


 何も起きないな。


『ベルディー、魔力ってどうやって注ぎ込むんだ?』


『さあ? 知りませんよ。やったことないですし』


 相変わらず役に立たない奴だ。


 俺は適当な呪文を唱えたり、絶唱を歌ったり、フィーバーダンスを踊ったりしたのだが、やはりシャワーから水が噴出されることはなかった。


「ねえ、中に入ってるのフーンでしょ? 早くしてくれない? あたしさっきから待ってるんだけど」


 扉の反対側からソファイリの声が聞こえてくる。

 これは、ちょうどいいタイミングだ。


「ソファイリ、これってどうやったら水が出るんだ?」


「アクティベートって唱えればいいだけよ」


 なんだ、簡単じゃないか。


「サンキュー、ソファイリ!」


 では、早速――


「アクティベート!」


 すると、ブシャーっとシャワーヘッドから吹き出したのは、ほっかほかな暖かい温水ではなく、どちらかと言うと真冬のナイアガラだった。


『どうやら、浮雲さんの魔力量では加熱できないみたいですね。えっと、こちらの計算結果によると、マジックが最低でも2は必要みたいです』


 これからずっと冷水シャワーかよ……。


***


 う~、ぶるぶる。さぶい。

 歯をガチガチさせながら俺は自室に向かって歩いていく。

 冬の夜にあの仕打ちは酷すぎる。

 鼻水とか出てるし、風邪を引いたかもしれない。


『大丈夫ですよ。浮雲さんの故郷の日本ではバカは風邪を引かないんですよね? そう書いてあった資料を見たことがあります』


『それはただの言い伝えだ……』


 さっきのシャワーの使い方の件といい、こいつの知識はいつも微妙に的を外している気がする。

 天界から観察しているだけで、実際に訪れたことはないのだろうから、仕方がないのかもしれないが。

 いつか下界に引き摺り下ろして、俺と同じ境遇にあわせてやりたいものだ。


「……」


 扉の前までたどり着いたのだが、何故か体がここから先へ進むことに拒否反応を示している。

 何かとてつもなく恐ろしいことが、ちょっと前にあったような……。

 でも、思い出せない。


『チャームが低いと記憶にも残りづらくなるみたいですね。さっきの驚きようからして、始めて会った時のことは忘れているみたいですし』


『チャーム? 始めて会った時? なんの話だよ?』


 ベルディーが言っていることは意味がわからないが、一晩中ここに立っているわけにもいかないので、俺は思い切って扉を開いた。


 ……何もないな。


 前回入った時と同じく、ただの空っぽな部屋だ。


 変わったところと言えば、ソファイリとセタニアの部屋に繋がる壁の大穴からは、タンスの背中しか見えなくなっていることぐらいだろうか。

 着替えとかを覗くのは無理っぽい。残念。

 

 俺は一体何に怯えていたのだろう?

<名前> アムル・コーテン

<種族> 人間

<年齢> 23歳

<身長> 182cm

<体重> 82kg


 国の東海岸沿いにある小さな田舎村オルデナで、とある漁師夫婦に育てられた一人息子。全体的に明るい性格をしており、誰とでもすぐに打ち解けることができる、コミュ力が高めな青年。だが、フーン曰く、厚かまし過ぎてちょっとウザいらしい。

 戦闘技術は中の上といったところで、突出したステータスがあるわけでもない。だが、臨機応変にバランス良く戦えるという点に置いては、彼に勝る者は少ないだろう。敵の行動を観察している内に弱点を見抜いてそこを的確ついたり、フィールドや道具を上手く活用して予想外の攻撃を食らわせたりと、柔軟な戦術が彼の強みである。ちなみに、使用武器は水属性が付加されたトライデント。

 実は大の巨乳好きで、密かにセタニアを狙っているが、今の所、彼女がアムルに興味を示したことはない。


<ステータス>

レベル :52

パワー :42

マインド:9

スピード:34

トーク :31

チャーム:24

マジック:7

ラック :5

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