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34 冒険者ギルド

「で、結局あたしが全員分払ったんだけど……」


「まあ、そのうち返すから心配するな」


「かりたものはかえす。ぶぞくのならわし」


 ピアスを買わずに店を出ても良かったのだが、ソファイリがあたふたとしていた俺を押しのけて、勝手に金額を払ってしまったのだ。

 彼女曰く、俺がだらだらしていてじれったかったから、イライラして思わず支払ってしまったとのことらしい。


 だがまあ、それは多分建前で、気を遣ってくれていただけなのだろう。

 本音を見抜くために一考しなければいけないのが、ツンデレ系キャラの面倒くさいところだ。


「信用ならないわね……。どこかにお金を稼ぐ当てでもあるの?」


「ないな」


「ないヨ」


「……」


 額に手をやり、はぁーっと嘆息をつくソファイリ。


「本当に一から教えないといけないみたいね。あたしについてきなさい」


 ソファイリが俺達を向かわせた先には、ドームのような形をした大きな建物があった。

 玄関からは、人間、獣人、エルフ、鬼人などの様々な種族が慌ただしく出入りしており、非常に賑わっていた。


「ここが冒険者ギルドの王都支部よ」


 お約束展開キター!

 

「登録するのは誰でも無料だし、向こうから自分の実力に合った仕事を紹介してくれるわ。あんた達みたいな社会的にどうしようもない人は、大抵ここで生計を立てているの」


 なんか、無駄に現実的な説明だなあ……。

 ダンジョン攻略とか、魔物討伐とか、もっと夢のあることを言って欲しいものだ。

 これだとハロワにでも通っているかのような気分だ。


 だが、何はともあれ、仕事が必要なのは事実。

 チョボルの旅館で食べ物は出てくるものの、他の生活用品は一切提供してくれていない。

 このままでは、まともな暮らしを送るのも困難なので、せめて布団かベッドを買えるまでお金を貯めなくてはならない。

 

『布団とベッドにこだわりすぎですよ。他にもっと必要なものありますよね』


『床以外の物の上で寝ることは俺の夢、そして俺に生きる意味を与えてくれる願望でもあるんだよ』


『そんな安っぽい夢より、もう少し高望みした方が物語的には盛り上がるんですが……』


 人の夢にケチをつけるとは失礼な奴だ。


「フーン、何ぼさっと突っ立ってるの。中に入るわよ」


 おっと、いつの間にか二人はギルドの玄関の前に立っていた。

 小走りして、彼女達の後に続く。


 ふむふむ、冒険者ギルドか。

 かませキャラに絡まれて、難なく撃退したら、いきなり一目置かれる冒険者になる……みたいな筋書きかな?

 非常に楽しみだ。


***


「次の方」


 受け付けのお姉さんが列の最先端に並んでいる男を呼び、列が少し進む。

 俺達の前にはまだ二人いるので、登録できるまでもう少し時間が掛かりそうだ。


「なあ、ソファイリ。登録って何をすればいいんだ?」


「鑑定石に触れて、名前を教えるだけよ」


 鑑定石……だと!?

 俺がそれに触れた瞬間、受け付けのお姉さんが驚きのあまり絶句するパターンか?


 「こんなレアスキル初めて見たわ!」とか。

 「ラック94? こんな凄い数字初めて見たわ!」とか。


 こいつやべーとか思われて、いきなり高ランクの仕事とか任せられちゃったら、ど~しよっかな~。

 想像するだけでニヤけてしまう。


「次の方」


 ようやく順番が回ってきた。


「では、こちらの鑑定石に触れてください」


「きらきら……」


 ぼけーっと突っ立っているセタニア。

 石が放つ虹色の光に見惚れていて、お姉さんの声がまったく耳に入っていないようだ。


「セタニア、これに触るのよ」


「さわるの?」


 彼女が触れた瞬間、鑑定石の光は少しずつ深い青へと濁っていき、それを観察しているお姉さんは、何かしらの暗号のようなものを紙切れに書いていく。


 気になったので「あれは何をしているんだ?」と、ソファイリに尋ねてみる。


「鑑定結果が古代文字で浮かび上がるから、それを書き記しているの。そして、その結果をマジックアイテムで解読するのが登録の手順よ」


「一々、面倒だな」


「そうね、でも仕方がないのよ。魔族と人族が和解して共通語が主要になってから80年も経つから、今時、古代文字を読める人間はほぼいないわ。本当に寿命が短いって損よね……。あたしの世代は読めないけど、あたしより一つ上の世代のエルフはみんな読めるもの」


 そういえば、エルフって長生きなんだよな。

 見た目的には同い年なんだが、ソファイリは本当はいくつなのだろうか?

 気になるけど、直接聞いたら激怒しそうなのでやめておく。


「登録が完了しました」


 解読をするために奥の部屋へ行っていたお姉さんが、透き通ったクリスタルのような色のカードを持って戻ってきた。


「セタニアさんの初期ランクはAになります」


「Aランク!? 凄いじゃない!」


「すごいの?」


「当たり前よ! それが初期で貰える物のなかで、最も高いランクよ。あたしの初期はDだったし、今のランクもまだBよ」


 ソファイリは大はしゃぎしているが、隣のセタニアは相変わらず「なにそれ美味しいの?」と言わんばかりの、ぼけーっとした表情で首を傾げていた。


「では、こちらの登録カードを右腕に当ててください」


 セタニアは透き通ったカードを受け取り、指示通り皮膚にそれを押し付けた。

 すると、カードはピカッと一瞬だけ強い光を放ち、完全に消え去った。


「喪失防止のために、体内に収納されるようになっています。取り出したい時は右腕に触れながらリターンと唱えてください」


「りたん???」


 絶対にお姉さんの説明を理解していないな……。


「では、あちらの掲示板から好きな依頼をお選びください。Aランクなので、掲示板に貼られた依頼はどれでも受けることが可能です」


「いらい???」


 こいつ、依頼に書かれている文字を読めるのだろうか?


「あんたの番よ、フーン」


 ソファイリに促されて鑑定石に触れる。

 すると、セタニアの時のようにお姉さんが結果を書き記した。


 わくわく。ドキドキ。どんな結果が返ってくるかなぁ~!


 解読を終え、奥の部屋からお姉さんが戻ってきた。

 少し困っている感じの顔をしている。

 驚異の鑑定結果を見て狼狽(うろた)えているのかな?


「あの、もうしわけないのですが……もしかしたら、衰弱の呪いに掛かっているのでしょうか?」


「え? いや、掛かってないと思うけど」


「えっと、そ、そうですか。では、こちらが登録カードになります」


 さてさて、何ランクかな~。

 カードの表面に書かれている情報の中から、ランクの記述を探し出す。


 あった!


 ――ランク:測定不能


 は? もしかして、強すぎて測定不能なのか?


「測定不能? 何よ、それ?」


 背伸びをして俺の肩の上からカードを覗き込みながら、質問するソファイリ。


「それが……ステータスが低すぎたらしく、ランクに仕分ける数式が破綻してしまい、選別が不可能だったようです。ですので、ひとまず最低ランクの仕事を受けていただき、結果が従えばランクを差し上げることになります」


「あはははは!」


 腹を抱えて笑うほどじゃないだろ!

 ソファイリちゃん、酷いよ……ぐすん。


「では、こちらの中から依頼をお選びください」


 お姉さんが提示した依頼は三種あった。


 料亭ワミタ 

  ジャガイモの皮むき


 エーワンブックス 

  量産型魔道書の写し書き


 マジックショップ北星 

  店員見習い


 選択肢が実質一つだな、これ。

 上の二つからはブラック臭がプンプン漂っている。

<名前> ソファイリ

<種族> エルフ

<年齢> 57歳(人間で言うと19歳。エルフは成長が遅い)

<身長> 164cm

<体重> 40kg

<BWH> 75|52|79


 エルフの里出身の少女。銀髪ロング、尖った耳、魅力的な鋭い碧眼。異性にモテそうな魅力的な顔だが、素顔なのに睨まれていると勘違いされてしまうほどの驚異の目力を持っており、初見で相手を怖がらせてしまうことが多い。


 戦闘に関しては、主に魔法を使って戦う。子供の頃から魔法の才能があると言われており、それを伸ばし続けてきた結果、いつの間にかエルフの里のなかでも五本指に入るほどの、強力な魔法使いとなった。


 趣味はガーデニング、チョボルの旅館の近くに小さな菜園を作る予定らしい。魔法を使わずに植物を栽培するオーガニックファーミングに関心を持っており、現在主流の成長促進魔法による栽培を全面的に忌み嫌っている。


 社会的に少し危ういセタニアとフーンを、放っておけない心の優しい性格をしている。だが、何故か自分の行動を優しさだと人に思われたくない、ちょっと捻くれた性格の持ち主でもあるので、素直になるのが苦手。


<ステータス>

レベル :35

パワー :4

マインド:21

スピード:9

トーク :9

チャーム:15

マジック:47

ラック :13

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