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32 八勇士の自由時間 後編

 現在、俺たちは商店街が広がる大通りから一本外れた路地に立つ家具屋の中にいる。


 店の中は結構広く、幅広い品揃えが並んでいた。

 定番の椅子、机、タンスなどはもちろん。

 シャンデリアや魔物の銅像などの小洒落たものもある。

 何も買うつもりはないが、見ているだけでも面白いお店だ。


「えーっと、とりあえずこのベッドを二つ買おうかしら」


 ソファイリが手始めに買おうとしたのは、目玉が飛び出してしまいそうな値札がついた、店内で最も大きい極上のベッドだった。

 今朝、チョボルにぼったくられていた時も思ったが、金銭感覚おかしいだろ、こいつ。


「セタニアはゆかでねるからいらないヨ」


「痛くないの?」


「ベッドきらい……。ふわふわすぎてねれないヨ」


「じゃあ、代わりに俺のベッドを買ってくれよ」


「……じゃあ、一つでいいわ。」


 ちょっ、一つ余分に買うお金があるのなら、別に誰のベッドでもいいじゃないか!

 不平等なのはいけないと思います!


「次は化粧台ね。これにしようかしら。鏡についてるデザインが、あたし好みなのよね」


 またもや迷いなく、最も高そうな品を選ぶソファイリ。


「後は、服用のクローゼットとタンス。それに魔道書を入れる本棚と――」


 おいおい、ちょっと待った。


「そんなに買って大丈夫なのか?」


「必需品しか買ってないわよ」


「いや、そうじゃなくて……まあ、お前の財布も心配だけど、あの狭い部屋にそんなにたくさんでかい家具は入らないだろ」


「問題ないわよ。縮小魔法を使えばいいもの」


 なら、最初から小さくて安いのを買えばいいのではなかろうか……。

 金持ちの思想はよくわからん。


***


「かわいいネ」


 目と口を覆うモップのような長い毛。

 ふりふりと振り子のようにゆっくりとテンポよく左右に動く尻尾。

 その足が六本ついている子犬っぽい魔物を、セタニアはひょいと抱き上げた。


 セタニアの顔の近くまで持ち上げられたその犬らしき何かは、毒々しい紫色の舌をでろんと晒し、セタニアのほっぺをぺろぺろと、今にも食いつくのではないかと思わせる勢いで舐め始めた。

 安全なのか、あれ?


「なんなんだ、あれ? って言いたげな顔ね。あれはケパスコよ」


「けぱすこ?」


 俺の心を的確に読み取ったソファイリに、きょとんとした表情を返す。


「低位の魔物よ。ペットとしてそこそこ人気があるの」


 俺たちは現在、魔物屋という看板が掲げられた露店に立ち寄っている。

 小さな店なので品揃えは少ないが、ケパスコと言う名の犬もどき。

 頭から小さな火が立ち上っているインコっぽい見た目の魔物。

 そして、カリアと一緒に狩った記憶がある、お馴染みのフラワーキティー。


 安全性はともかく、定番の犬、鳥、猫は一通り揃っていた。


「昔、あたしの実家でケパスコを一匹飼っていたことがあるわ。すぐに病気になって死んじゃったけどね。やっぱり、魔物は狭っ苦しい家庭に閉じ込めるより、伸び伸びと外の世界で生きた方が良いのよ」


「これ、ほしい。かって、ファイ」


「あんた、人の話聞いてるの?」


「だって、かわいいヨ。ほら」


 セタニアはぐっと腕を差し出して、六足犬をソファイリの胸元に押し付けた。


「た、確かにもふもふしてるわね」


 もふもふの誘惑に耐えられなかったのか、ソファイリの両手はゆっくりケパスコへと向かう。

 そして彼女はそのままワンコをぎゅっと抱きしめた。


「懐かしいわ。昔飼っていたケパスコにもこんなことをよくしたっけ。良い子良い子、よーしよし」


 プロレス技のような抱きしめを受け、ケパスコは息苦しそうにもがいている。

 もしかして、その昔飼っていたやつは、お前の扱いが雑だったから早死にしたんじゃないか?

 という疑問が浮かぶ。


 ――すぽんっ。


 必死にもがき続けてなんとかソファイリの掌握から逃れたワンコは、彼女のシャツの上部分のボタンを引っかき外し、開いた胸元の中へするりと潜り込んだ。


「ちょ、ちょっと……や、やめ……あ、あっ……」


 もぞもぞとシャツの表面が(うごめ)く。

 敏感な部分を刺激されたのか、ソファイリは喘ぎ声のようなものを上げている。


 ――パチン。


 ボタンが一つ弾き飛ぶ。


 ――パチン。


 ボタンがもう一つ弾き飛ぶ。


 ――パチ、パチパチパチパチパッチーン。


 全てのボタンが弾き飛ばされ、ソファイリの腹からワオーンと満足そうに吠えながらワンコが飛び出した。


 露わになるシルクのように艶やかな素肌。

 筋肉質ではないが、しっかりと引き締まったお腹。

 そして、紅に染まるソファイリの顔の表面。


「いっ、いやーーー!!! 見ないで、変態!!!」


 あ、まずいぞ。

 このパターンは間違いなく、俺が理不尽な攻撃を食らって終わるという、ありきたりでつまらないオチだ。


 くっ……。

 こうなったらせめて、攻撃を食らうまでじっくりと彼女のことを拝んで、目の保養にしてやる。

 そうすればいくらかの罪悪感が芽生えるので、攻撃を食らってもあまり悪い気はしないはずだ。


 つ、ついでに、そ、ソファイリのぶ、ブラの色を特定して――




 …………………………。




 ソファイリの胸は不自然なぶっとい光線に覆い隠されていた。


「えええええええええええくすぷろーーーーーーーーじょん!!!!!!!」


 ――海外意識(センサーシップ)のやろう!!!


 爆発を直に受け、俺の目の前はさらに真っ白になった。

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