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28 八勇士集合?

 チョボルが経営している宿とやらは森のさらに奥深くに潜んでいた。

 こんな辺鄙なところではお客が全く来なさそうである。

 一体どうやって儲けているのだろうか。


「えーっと、皆さんがそろったみたいなので、そろそろ部屋を振り分けますね。感謝しやがってくださいね。あ、でもその前に決まりなんで出席を取りますね。ああ、めんどくせ……まずは、ゴーサル・ソンさん」


「おう」


 力強いハスキーボイスで返事をするゴーサル。 

 彼はボブスに似た屈強な身体つきをしていた。

 そして、ボブスと同じくハゲだった。きらぴかーん。


「次、アムル・コ――」


「はいは~い! ここにいるぜ~!」


「まだ呼び終わってねーよ、クソが! やり直しますね。アムル・コーテン」


「あ、はい……」


 肩を竦め、アムルは気弱な声を上げる。

 チョボルに怒鳴られる前までは、いい感じにちゃらちゃらと楽しそうに微笑んでいたのに、えらい変わりようだ。

 まあ、俺はチャラいのに偏見持ってるんで、ちょっとメシウマ。


「次、カーン・グン」


「はい」


 こちらもにっこりと笑顔を返しているが、アムルのへらへらとしたマヌケ顔とは違い、おそらく本当の心情を覆い隠すための愛想笑いだ。

 他の勇士たちと比べてほっそりとした身体つき、後頭部の高い位置で括られた長い銀髪、四角いフレームのインテリメガネ。

 肉弾派ではなく、頭脳派のイメージを抱かせる容姿だ。


 ちなみに、こちらの世界に来てからは初めて見るメガネである。

 メガネが作れるってことは、この世界も場所によっては、科学がそれなりに進んでいるのかもしれない。


「次、トリン・ジェネヴァ」


「トリン様はこちらです」


 カーンは隣の女性へ向けて両腕を差し出しながら、彼女の変わりに答えた。


「うるせーよ、カス! 俺様はトリン呼んでんの。空気が読めないゴミクズは、黙るか今すぐ首吊って死んでもらえると助かります」


「は、はい。(かしこ)まりました……」


 冷徹そうなカーンですら、チョボルには(かな)わないようだ。


「もう一度呼びますね。トリン・ジェネヴァ」


「はい」


 トリンと呼ばれた女性は奥ゆかしい、ガラスのように透き通った声でそう答え、右手で月を掴むかのごとく空高く腕を掲げた。

 彼女はベージュ色の長いドレスを(まと)っており、ビーズのチェーンで頭部にとりつけられた薄い布で顔を覆っている。

 なんというか……、神秘的な人だった。


「次、ソファイリ・パルテス」


「はい」


 うお、銀髪美少女キタ!!!

 耳の先が尖っているし、もしかして彼女は異世界定番のエルフという種族なのだろうか。

 せっかく遥々と転移して来たのに、人間だらけで辟易していたところに、ちょうどいいスパイスが投入された。

 胸はカリアのごとく真っ平らだが、すらりとしたモデルのような体つきや、宝石のような青い輝きを放つ眼――


 ――ぎろっ。


 な、なんかめっちゃ睨まれた。

 ちょっとジロジロ見つめすぎたかな。


「次、ルネアの部族セタニア」


「ここに、いるヨ!」


「そして、最後。フーン」


「はい」


「みんな揃っているようですね。では、お部屋にご案内します」


 チョボルに続いて八勇士の面々は宿の中へと進む。


「ここが玄関で、左へ進むと浴室と食堂があります」


 わお! 外見はしょぼかったが、中は旅館みたいになっているではないか。

 まあ、俺は八勇士様なんだからこの程度の待遇は当然か。がはは。


「右側には空いているお部屋が四つあるので、各自適当に一人と組んでお好きなのへ荷物とか持ち込んでくださいね。俺様はもう寝ますんで、あとはどうぞご自由に」


 そう言い残し、チョボルは玄関からさっさと出て行った。

 どうやら彼の部屋はこの旅館とは別の場所にあるらしい。


 ぽつんと放置されてしまった八勇士たちの間に気まずい沈黙が生まれる。


「ねえ、誰が誰と組むの?」


 沈黙を打ち破ったのはエルフのソファイリだ。


(わたくし)はトリン様と同居いたします」


 男女混合の部屋になってしまうが、まあ、先ほどの出席のやりとりで二人は知り合いっぽいことが発覚ているし、問題はなさそうだ。

 その証拠にトリンは反論していない。


「じゃあ、あんたたちはそこの手前の部屋ね。わたしは……えっと、セタニアさんだっけ?」


「そうだヨ」


「セタニアさんと組むわ。彼女しか女は残っていないみたいだしね」


 となると、残されたのは俺とゴーサルとアムルだ。

 どちらか一人を選ぶとなると……う~む、悩む。

 アムルはウザそうだが、ゴーサルは暑苦しそう。


「おい、フーンとゴーサルだっけ? じゃんけんで決めようぜ」


 と軽いノリで提案を持ちかけるアムル。


「うむ、それが公平だ」


 ゴーサルは納得したらしく、こくりと頷いた。


「じゃあ、勝ったやつが一人部屋な」


 じゃんけんぽん。

 言うまでもなく、俺が勝った。


 というわけで、俺はアムルとゴーサルにお休みと告げて俺も自室へと向かう。


 8は偶数なんで、2で割ると一人余っちゃうのか……いや、待てよ。

 ちょっとおかしくないか?

 8割る2の解ってなんだっけ?

 おかしい。転移前ならこの程度の数式は簡単に解けたのに、答えがまったく浮かび上がってこない。

 マインドに1しか振っていない弊害だろうか。


 ――まあ、いっか。

 俺は解答を求めるのを諦め、部屋が広くなるのは嬉しいなと開き直ることにした。


 だが、ちょっと寂しくもなりそうだ。

 ちょっと前まではメルリンとカリアが寝るときに隣にいたし。


 俺はこの新しい環境でうまくやっていけるのだろうか。

 ちゃんと他の勇士と良好な関係を築けるのだろうか。


(……だめだ、だめだ。弱気になったらだめだ)


 俺はパシッパシと頬を叩いて自分に喝を入れた。


 うじうじとどうしようもないことで悩むより、まずはマイスイートルームの住み心地を思う存分体感してみようではないか。

 八勇士という御大層な身分なのだから、よっぽど豪華な部屋が用意されているんだろうな~。

 ベッドかな、布団かな?

 超楽しみだ!


 ドアよ、平けーい!


「……」


 俺の部屋は窓すらない殺伐とした空洞だった。

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