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広異世界の小さな話  作者: 元田 幸介
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時限爆弾手紙

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 このメッセージをお前が見ているってことは、当然「生きている」ってことだろう。おめでとう。

 で、お前には今からあることをしてもらう。

 ……なーに、そんなに難しいことじゃない。生き延びた今のお前なら簡単にできることだ。

 と言っても、覚えていない可能性もあるので、一応説明させてもらうぜ。

 まず、お前がそれをしなければならない理由ってのは、小学六年の夏休みの夏祭りがきっかけだ。

 あの日、お前は祭りの会場で、アイという女の子に出会ったはずだ。

 お前は友達をそっちのけで、アイと一緒に屋台を回った。

 たった一時間程度のこと。だがお前はアイに惚れた。

 だがアイはこの町の住人じゃなく、たまたま親戚の家に遊びに来ただけだった。

 けっきょくお前がアイに再会するのは、冬休みになってからだ。

 お前はアイに自分の気持ちを伝えた。

 ――と、ここまで書けば、さすがに思い出すはずだ。

 その答えは「この時点」じゃ当然分かっていない。もしかしたら、「明日」になったら分かるかもしれない。だが、今ここでお前がこの手紙を開いている時点で、それはないだろう。

 とにかく、お前は今からあの日の告白の「返事」を知らなければならない。

 死ぬほどきついかもしれない。ビビるな、逃げるな、立ち向かえ。

 そうすることで、お前は過去を乗り越え、未来に進むことができる。 


 俺が言えるのはここまでだ。頑張れ、未来の俺。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ――手紙はそこで終わっていた。


「未来に進むための箱(ただし〇〇年までは開けちゃダメ)」


押入れの中から見つけたお菓子の缶にはでかでかとそう書いてあった。約束通り、十年経って開くと、そこには二通の手紙が入っていた。一通は俺から俺に。そしてもう一通はアイから俺あてだった。


「……」


 けっきょく、俺はあの告白の返事を聞けないでいた。そしてその答えがここに書かれているということを、手紙を読んでいる内に、ようやく思い出した。


「……」


 今さら読んでもそこまでダメージは受けないと思う。


 だけど、やはり気にはなった。俺は手紙を読み始めた。

 

 


 ――訂正。この手紙は、時限爆弾だった。


 俺は大いにダメージを受けた。



「だいだいだーいすき!」



 俺は妻のことが、さらに好きになっていた。    


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