君は宝
実家の押入れから、宝の地図を見つけてきた。
……といっても、本物ではない。子供の描いたチンケなものだった。
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「……行くか」
先日押入れの中から見つけた地図を手に取り、俺はお宝を探しに行くことにした
宝の在り処であろう×印は「おれのいえ」と書かれた場所から、北に進んだある空間を指していた。俺は地図に従い、それらしき場所へと向かう。
だが、そんな場所はなかった。そこは住宅街、宝を埋められるような空間はなかった。
適当に描いた「地図もどき」だったんだろう。俺は残念な気持ちを抱いて、家に帰ろうとした。
「……ん?」
その途中、ある表札が目に入ってきた。そこには「宝」と書かれていた。
宝……宝……。何かを思い出せそうだった。俺がうんうん頭を悩ませていると、その家から誰かが出てきた。
「あ、久しぶり」
女子は俺を見てそう言う。俺はここですべてを思い出した。そうだ、俺は昔この家でこの女子と遊んだことがある。
「あの……」
つまり宝は宝さんちにある可能性は高い。俺は女子に宝の地図のことを伝えた。
「へー、そうなんだ。じゃあ一緒に探してみよ」
こうして俺と宝さんの宝探しが始まった。が、それから一週間、家のどこを探しても、庭を探しても見つからなかった。
「やっぱ、無いのかな……」
「もう一度一から考えてみよ?」
「うん、そうしてみようか」
それから俺たちは宝の地図をにらめっこしつつ、ガキの頃の思い出話に花を咲かせる。いつしか俺は、目的を忘れ、宝さんに会うことを楽しみにしていた。
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「ねえねえ、それで宝は見つかったの?」
興味津々に、娘は見つけてきた宝の地図のことを尋ねる。
「――ああ、見つかったよ」
「どこにあるの? どこどこ?」
「鏡の前に立ってごらん」
娘の頭をなでながら、父は優しい声でそう言った。




