彼らを仲間にした理由
昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいた。
おばあさんが川から流れてきた桃を持ち帰ると、そこから男の子が生まれた。
その男の子を桃太郎と名付け、桃太郎は鬼ヶ島へ鬼退治に行った。
最後は桃太郎は仲間を引き連れて、無事鬼を退治し、金銀財宝を持って帰ってきていた。
――と、超有名なお話がある。俺はそのお話を、ガキの頃から何度も聞かされてきた。
その中で、俺はあることを考えてきた。
それはなぜ桃から人が生まれるのだろうとか、そんな理屈ではない。そんなことは考えたところでどうしようもない。
ただ俺は、果物はただの「容れ物」ではなく、果物が持つ「あるもの」によって、生まれてくる人物に大きな影響を与えるのではないかと考えた。
それは、種類によって違うが、果物と呼ばれるものならば、すべてが持つもの。そして果物が果物と言わしめるものでもあった。
そしてその予想は当たっていた。
犬・猿・雉を連れて鬼退治に向かった桃太郎……。話の中じゃ、なんとか無事に鬼を退治はできた。
だが、俺はこう思った。これは奇跡に過ぎないと。
おそらく鬼は油断した。じゃなければやられるはずがない。桃太郎は運良く勝ったに過ぎない。もしも鬼が復讐に来たら、ひとたまりもないだろう。
糖度の高い桃から生まれたことにより、桃太郎は「甘い」男になっていた。
それは本人もよく分かっていた。だから桃太郎は自らの「甘さ」捨てきれないが、来るべき時のために、そこから「甘さ」を捨てることにした。
だから俺の名前は「檸檬太郎」、父とは違う「甘くない」男にならなければならなかった――。




