なまくら
そんなに僕という人間はひどい奴なんだろうか?
「自覚が無いところ、本当たちが悪いわね」
六条さんは再び僕に冷たい言葉を投げかける。
「……あの、具体的にはどういうところがひどいのかな? 悪いけど、本当にわからないんだ」
一体彼女は何にそこまで怒っているのだろう?
「本当、腹が立つわ。殺意を抱く……いいわ、教えてあげる。まず第一に鈍感なところよ」
「鈍感……?」
すぐには何を言われたのか分からなかった。
「そう、とにかく鈍感なのよあなたは。どうしてそこまで、人の気持ちに対して鈍くいられるの?」
「そ、そんなに鈍いかな? 自分で言うのもなんだけど、結構女の子の気持ちには敏感だよ」
「それはひょっとして冗談で言っているのかしら?」
「いや本気だけど?」
「……よくも抜け抜けと! 今朝だって伊月のこと無視して、二木と学校に来たくせに!」
「ああなんだ。それは単に、一宮さんの具合が急に悪くなって、ちょうど居合わせた二木さんと一緒に病院へ向かったからだよ」
「え? じゃ、じゃあ昼間のアレは何よ! 三原さんがあなたのために作ったお弁当、食べようとしなかったじゃない!」
「それはすでにお腹いっぱいだったからだよ。だから夕食に食べようと思っているんだ。三原さんは止めたけどね」
「……そ、そもそも四方に告白されたんでしょ! なのにどうしてそう平然としていられるのよ!」
「平然じゃないよ」
告白されてすごく驚いた。だから今、僕はここにいる。
「はっ、嘘よ。だったらそもそも、こんなところにいるわけないわ! しょせん、その程度ってことでしょ!」
「その程度って……かなり悩んでいるんだけど……」
「じゃあさっさと――」
「うん、ちゃんと伝えるよ。僕は――」
それまでの自信に満ち溢れた姿はどこにいったのか。
「……………………………………………………へ?」
僕の告白に、六条さんは、かなり時間が経ってから反応した。
……言っちゃ悪いが、鈍いのは彼女の方だった。




