地球侵略
地球のはるかかなたにある星、エミルド星。
エミルド星人は高度な文明を持っていたが、人口増加により、衰退の危機にあった。
これをなんとかしようと、エミルド星人リーダーは他の星の「侵略」を決意した。
あらゆる星を探し、ついに自分たちに適した星を見つけた。それが地球だった。
リーダーは地球に向かってメッセージを送った。
なぜわざわざメッセージを送るのか? それはエミルド星人が地球の知能を図るためであった。
地球はたしかに自分たちに適した星。だが、未開の惑星であることには変わりない。リーダーは、どうせならある程度発展した後に侵略すればいいと考えた。
だからメッセージは暗号化され、生半可な知能では決して解読できないようにした。
つまり、送られたメッセージを解読できるようになっていれば、地球の文明はそれだけ発達しているということだ。
エミルド星人は何度も地球にメッセージを送った。メッセージは解読された瞬間、すぐにエミルド星人の触覚から伝わるようになっている。
だが、何十年、何百年、何千年経っても、地球からメッセージが届くことはなかった。
「侵略しに行こう」
革新派のエミルド星人が、そう言った。エミルド星人は長命だったが、星の方が限界に近づいていた。
「一から発展させればいい。なんなら、地球人を奴隷にすればいい」
革新派の数が一気に増え始めた。そしてついに、穏健派の数を上回った。
「行くぞ!」
それからあっという間に、革新派を筆頭に、エミルド星人は地球に向かって飛び立った。エンジンは行きの分だけ。もう二度と、エミルド星には帰ってこないだろう。
残された元リーダーを含めた穏健派は、ふうと息をはいた。
「――無事、成功しましたね」
「若いやつは短気でいかんな。たかが数千年程度で音を上げおって」
「でもそのおかげで、『間引く』ことができましたよ」
「ああ、これでしばらくはこの星で生きることができる」
「……どうなりますかね」
「そんなもん、決まっておろう。すぐに死ぬ」
「ははは、そうですよね。『一から発展』どころじゃ、ありませんものね」
老人たちはニタリと笑い合う。リーダーは一つだけ、自分の側近以外には黙っていた情報があった。
「あと、最低でも百万年か……」
地球には、まだ人類そのものが誕生していなかった――。
そして一万年の月日が経った。
メッセージがようやく解読されたことを、エミルド星人は触覚を伝い、受信した。
長い、長い道のりだった。エミルド星人




