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広異世界の小さな話  作者: 元田 幸介
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視えないゲーム

 フリーゲーム大好きな俺は、ある日おかしなゲームを見つけた。



 その名も「ブラックアウト」。評価は五つ星中二つ。レビューも批判的なものばかりだ。だがタイトルに惹かれた俺は、そのゲームをやってみることにした。



 容量は5ギガ近くあった。俺はソフトを解凍し、さっそくゲームを始めることにした。


 真っ黒の画面。その真ん中に【スタート】ボタンが表れる。俺はそれを押した。だが不思議なことに、画面は真っ暗なままだった。


 俺はコントローラーを上下左右に動かしてみたり、決定ボタンやキャンセルボタンを押してみたりする。だがガタゴトと、無駄にいい物音がするだけで、一向に明るくはならなかった。


「ブラックアウトってそういう意味かよ……」


 何をやっているのかまったく分からず、まったく楽しめない。こりゃ間違いなくクソゲーだ。俺はゲームをやめようとした。


『ダメ』


 だが、ゲームをやめようとしたとたん、そんな声が聞こえた。俺は何度も画面を消そうとした。だが、終わらせることができない。


 これ以上下手なことをするのはコンピューターウィルスの危険性がある。渋々ながら、俺はちゃんとゲームをプレイすることにした。


 と、言ってもこんな真っ暗な画面で何をどうすればいいのか分からない。禁断の奥の手、「ネット」を用いてみたものの、全員この時点で投げ出しているようだ。


 だがわざわざ作った以上は攻略法があるはずだ。俺はとにかく可能性を一つずつ試していくことにした。


 まずはボタンの押す順番、ボタン連打、コマンド入力…………「ボタンを押す」行為は一通り試してみた。が、やはり画面は暗いままだ。

「……うーん」


 もう一度レビュー欄を見てみる。するとたった一人だけ、星5つを付けている者がいるのを発見した。そこにはこう書かれていた。


『最も予算をかけないで作られた、体感型ゲームだ』


 そのレビューした人は、俺の好きなフリーゲーム作家で、人のゲームを褒めるということがまずない。にもかかわらず、このわけの分からないゲームをべた褒めした。俺はそこに、ヒントがあると考えた。



 発想を変え、俺はなぜ画面が暗いままなのか考え始める。



 画面になにが映っているのかは見えない。だがそれはすなわち――。


「……ああ」


 俺はようやくこのゲームの攻略法が分かった。


 このゲームの画面が真っ暗に視えるのは、正確には俺じゃない。


「……よし」


 主人公と「同じ」になることで、ゲームをすればいい。好きな作家が言った「体感型」とはそういうことだろう。






 


だから俺は目を閉じ、「盲目の主人公」を体感することにした。

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