願いの代償
背が低いことがコンプレックスだった少年は、大きくなるために様々な努力をした。
だが、普通のやり方では決して少年の背が大きくなることはなかった。
もう、並ぶ時に一番前に、組体操で一番上になりたくなかった。
少年はついに、悪魔の力を借りることにした。
「頼みがあるんだ」
少年の家に代々伝わる悪魔召喚の儀式。少年はそれを成功させ、悪魔を呼び出した。
「俺を呼び出したってことは、分かっているんだろうな?」
「ああ、寿命だろ」
それで背が高くなるなら安いものだ。少年は覚悟を決めた。
「分かった。じゃあまずは寿命の方をもらうとしよう」
悪魔は少年の心臓に手を当てる。そこから少年の「未来」が奪われた。
「…………」
「なんだ?」
「あ、いや……」
本当に寿命が奪われたことを実感した少年は、ただただ困惑した。
「言っとくがこれくらいで済んで良かったと思えよ? タチの悪い悪魔は、一気に半分は持っていくんだからな」
「……」
「それで、肝心のお前の願いはなんだ?」
「…………」
悪魔が少年に尋ねるも、少年は無言のまま立ち尽くす。
少年は今になって、本当に願いを叶えるべきなのかと迷い始めていた。
「おい、いいかげんにしろよ。こっちも――」
「いくつか、確認したいんだけど」
ようやく口を開き、少年は悪魔に質問した。
「なんだ?」
「寿命、どれくらい奪ったの?」
「俺の場合は最低でも十年は奪うことにしている。それから願いを聞いて、奪う年数を増やすかどうか、決めている」
「なるほど……」
「もういいか? 願いはなんだ?」
「……僕を元に戻してくれ」
悩んだ末、少年は最も堅実的な願いを口にした。
「もとに戻せって……寿命は戻さねえぞ?」
意外すぎる願いに、悪魔は耳を疑うも、寿命を返すことはないとはっきり言った。
「うん、それは分かっているよ。だから奪った寿命はそのままでいいから……してくれないか?」
寿命は十年失くすことには変わりない。だけど少年はまだ、「友だちと遊びたい」や、「学校に通いたい」という気持ちがあった。
「……変わった奴だな。いいぜ」
悪魔は少年の願いを受け入れた。そして、少年の体はみるみる「元通り」になった。
「じゃあな」
願いを叶えたことで、悪魔は姿を消した。
「……頑張ろう」
今はただ、この小さな体を受け入れよう。少年は改めて覚悟を決めた。
そして、身長百八十センチ以上になるのを「十年」待つことにした。




