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広異世界の小さな話  作者: 元田 幸介
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宅配ボックス

 配達物というものは、どうにも俺の望むべき時にやってきてはくれない。


 時間指定していてその時間ギリギリに届いたり……というのはまだいい。問題は、俺が便所に行っている間に届いたりすることが多いことだ。


 なのでいつも、玄関先に不在票が置かれている。そしてこれをまた電話して取ってきてもらうというのが、俺も相手も非常に面倒くさい。


 この煩わしい問題をどうするべきかと悩んでいると、俺は宅配ボックスなるものがあることを知った。


 本人が留守でも箱の中に入れてもらえばいいという、画期的なアイディアだ。


 さっそく俺は宅配ボックスを使うことにした。だが問題があった。一つはけっこう値が張るということ。もう一つは、宅配ボックスそのものをまた「宅配で頼まなければならない」ということだ。


 またトイレに行っている間に不在票が置かれたら、元も子もない。


 なので俺は宅配ボックスを自作することにした。


 自作と言っても、俺にDIYのような器用な真似ができるわけではなく、100円ショップに売っていた折りたたみ式の収納ラックを宅配ボックスにすることにした。


 だが、これだけでは味気ない。俺は緩衝材として、使わなくなった毛布を箱のサイズに切って入れた。さらに外装を目立つようにシールを貼りまくり、「宅配ボックス」とデカデカと書いた。


 これで問題ないはずだ。さっそく俺は自作宅配ボックスを使い、宅配を頼むことにした。


 記念すべき第一号の買い物は漫画十冊。俺は時間指定もなにもせず、配達予定日、外に出て、友達と遊びに行った。


 そしてその日の夜、俺が家に帰ると宅配ボックスのフタが開いていることに気づいた。


 俺はドキドキしながら中を覗き込んだ。


「…………」


 箱の中に、漫画は入っていなかった。よーく見ると、漫画は箱の横に、ぽつんと置かれていた。


「まったくいい加減だな!」


 怒ったような声を出すが、実際は違った。俺は漫画を放っておき、漫画の代わりに入っていたものを見る。


 怪我の功名、不幸中の幸いというのだろうか?


 とにかく、宅配ボックスを作ったことは正解だった。



 俺はすやすやと寝息を立てる可愛らしい「親子」を見て、心の底からそう思った。

 

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