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広異世界の小さな話  作者: 元田 幸介
68/100

モウヤメタ

 ゲーム、特に対戦型ネットゲームにおいて、勝てない時が続くほど、いらつくことはない。


 勝てるまで……勝たないと何もできない。俺はひたすら勝ちに価値を求めようと、寝る間も惜しんでプレイした。


 だがそういう時に限って、勝負というものは絶対に勝てないようになっている。何の策も考えず、ただ猪突猛進にやる俺は、何回も連続で「世界のどこかの誰かたち」に負け続けた。 


 決して卑怯な手を使われて負けたわけじゃない。ルールに則った上での正々堂々、真剣勝負。それでも負け続ければ腹が立つ。このゲームを考えた製作者をぶん殴りたい気持ちになる。


 冷静にならないと勝てない。俺はコーヒーを飲んでみたり、深呼吸したり、体を動かしてみたりして、気持ちを落ち着かせようとした。

 

 だが、どんなことをしても、勝たないことには、悔しさは消えなかった。




 ムキになった俺は決して使わないと決めていた、「攻略情報」に頼ることにした。俺は最も使い勝手の良い、悪い言い方をすれば「チートキャラ」を使うことにした。


 けれど運の悪いことに、そういうのを使う時に限って、相手はそれを見透かしたかのような動きをしてきて、けっきょく俺はそれでも勝てなかった。


 ならば正攻法、俺はCPUを練習相手に、自キャラでとにかく練習した。だがやはりコンピューター。本物の動きとは違うこともあり、CPUに慣れてしまった頃には、俺は人間相手にまったく勝てなくなっていた。


 神が「負けろ」と願っているかのように、俺はその後もそのゲームにおいて、人間相手に勝てることはなかった。


 ストレスだけが異常なほどに蓄積される。俺の頭の中は真っ白になった。



 気づけばコントローラーは粉々に砕け、パソコン画面には亀裂が走り、壁に穴が空いていた。

 

 負けにより、たまりにたまった怒りが、ついに爆発したのだ。


 ……体のもやもやが消える。だがスッキリしたかどうかは別の話だった。


 ――もうやめたっ!


 ぐちゃぐちゃになった部屋を見回し、俺はこのゲームから足を洗うことにした。


 俺はそのソフトをアンインストールし、攻略サイトもブックマークから外した。


 やらないことが真の勝利。俺は依存症に陥る前に、ゲームをやめることに成功した。



「――おっしゃああああ!」



 だが、それは幻想だった。


 俺は()()()()()()()()部屋で、パソコン画面に向かって、「勝利の雄叫び」を上げていた。


 

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