相合い傘に入れられて
受験に向けて毎朝教室で勉強しよう。そう思い、俺は三日前から毎朝六時に学校に到着している。
初日はとにかく眠くて仕方なかったが、人間慣れるもので、四日目からは身体に問題はなかった。
その代わりに別の問題が発生した。黒板にでかでかと、下手くそな相合い傘が書かれていた。右側には俺の名前。もう片方にも名前がある。
「……やべえな」
どこの誰のイタズラかは分からないが、相手の女子に悪い。俺は証拠隠滅をばかりに、急いで消そうとした。
「それなに?」
だが少し遅かった。当事者の女子が入ってきた。
「…………へえ」
女子はすぐに黒板に書かれたものを見た。
「それ、君が書いたの?」
「まさか。誰かのイタズラだろ」
正直に俺は言った。だが女子は信じていないようだった。
「本当~?」
「本当だよ」
そもそもこんな露骨な真似を本人がするわけがない。強制的に話を切って、俺は黒板を完全に綺麗にした。
だが翌日、再び黒板に同じものが書かれていた。
「……」
苛立ちをおさえながら、俺は無心となって書かれたものを消した。
だがイタズラは終わることはない。週明けても相合い傘は書かれ続けた。
いい加減にしてほしい。俺はイタズラを繰り返す何者かに腹が立った。
俺は絶対に正体を暴いてやろうと決意した。
俺は親に友達の家に泊まると嘘をつき、その日の放課後ずっと、掃除ロッカーに潜り込むことにした。俺が一番最初に学校に登校しているのだから、犯行時間は放課後しかないと推理したからだ。
「……」
が、先客がいた。
「うふふ……やっとアレの意味、分かってくれたんだね……!」
予想外、もしくは予想内。冷静に考えれば分かる者が犯人だった。
「明日からもう必要ないかな……!」
彼女は、相笠愛はにやりと笑う。
そして俺は、彼女の描いた相合い傘に無理やり入れられた――。




